表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/109

第二十二話 結界術師、修行する

                           第一章 エルフの里

                        第二十二話 結界術師、修行する


 スラウを討伐した日の翌日、エルフの里では宴会が開かれた。宴会では全てのエルフが騒ぎ、料理に酒にと振る舞われる。そして、長老までもが顔を赤らめて輪に加わっていた。

 精霊のダンジョンから帰って来た時にも宴会が行われたので、これで俺がエルフの里で宴会に参加するのは二度目だ。あれからまだ一週間も経っていない。ここに来てから宴会ばかりしている気がするな…。

 パウは依然として俺を認めることはなかったが、その瞳から敵意は抜けているような気がした。

 ササリアからはこの里に永住する気はないかと尋ねられた。その誘いは断っておく。彼女は自分の家に住んでもいいとまで言っていたが流石に断る。俺にはサーシャもいるし、エルフは俺達と生活の文化が違うために住み難い。


 カリアは約束通り森の外まで連れていくと言ってくれたが、俺はエルフの里に今現在も滞在している。最初はすぐにでも旅立とうと思っていたのだが、スラウとの戦闘を経て考え直した。

 俺にはサーシャもいるし、守っていくならばもっと力が必要となる。今のままではいけないと思ったのだ。


「やあっ!」

「ここまで強くなるとは…」


 カリアがサーシャを見て呟く。宴会が終わってから三日が既に経っている。その間彼女は暇だということで、つきっきりでサーシャに剣を教えていた。といっても、現在サーシャが持っているのは剣ではない。

 剣の練習をしていたが、やはり彼女の体格には合わなかったのだ。短槍と呼ばれる、剣と同じ長さしかない槍である。槍は棒の先端に刃が付いているだけのものであり、普通の剣と比べてもかなり軽い。

 刃で突くことも斬ることもできる代物。他の冒険者は手持ち武器としては使わない。剣と同じ長さなら取り回しが利きやすい剣の方がいいからだ。リーチが短いなら槍である必要はない。基本的には投げ槍として、遠距離攻撃や牽制をするためのものである。

 子供である彼女にはこの短槍の長さが丁度よかったのだ。短槍を使うようになってからは、剣の他に槍の修行も行っていた。

 槍を教えてくれたのはササリアだ。弓を得意とする彼女は、槍の扱いもある程度心得ていた。短槍を槍のように使ったことは流石にないようだが、それでもサーシャはすぐに上達していった。

 彼女の教え方が上手だったことも要因の一つである。自分でも上手く教えられて驚いているようであった。


「終わりました!!」


 彼女がコボルトに止めを刺して戻ってきた。褒めて欲しそうにこちらを見ている。練習の成果を見るために一人でコボルトと戦ったのだ。

 勿論一対一で。他にいたコボルトはカリアが相手をした。俺は何かがあった時、すぐ対処できるように待機である。


「よくやったな」


 そう言って頭を撫でてやると彼女は嬉しそうに尻尾を振り、こちらへと抱き着いてきた。


「本当にサーシャちゃんは腕がいい…」


 カリアの言葉に、俺の体に包まれた彼女の耳がピクピクと動く。俺から自分の体を離した彼女は、カリアの方を見て笑顔を見せる。

 槍の扱いを教えていたのはササリアだが、彼女の師匠はカリアとササリアの二人と言っても過言ではない。

 そのため、師匠に褒められたのが特に嬉しいのだろう。師匠であるカリアの方も得意満面な表情を浮かべていた。

 ササリアも来たがっていたが、彼女には里を守る役目がある。長老を除けばパウとササリアの二人が里の中で最も強いため、里を警備する必要があるのだ。

 今まではそんなことなかったのだが、サイレントアントの一件があったために行われるようになった。二人は警備隊の隊長、副隊長として一日交代で警備している。もう一人が他の警備隊の者の鍛錬を行うのだ。

 俺としても彼女の成長は嬉しい。特に俺達がいない間も、一人でサーシャが特訓を頑張っていたのは知っているのだ。


「そろそろ俺も行くか…」


 彼女が嬉しそうにしている姿をひとしきり見た後、俺は自分の特訓のためにその場を後にした。


「なかなかやりますね」


 精霊の言葉が響く。俺の周囲には二体の魔法人形ゴーレムがいた。それも全てがミスリル人形だ。以前カリアがいても苦戦していた相手に、俺は一人で戦っていた。

 前からやってきた人形の拳を回避し、横からの蹴りを左腕で受け止める。俺の腕が壊れることはない。結界が俺の腕を守っていた。

 結界を纏った俺の蹴りが前方の人形の胸を打つ。次の瞬間には返すように蹴りを放ってきた。俺は咄嗟に後ろへ跳んで躱す。

 人形の胸は大きく凹んでいる。これがミスリル製の人形でなければ、耐えきれずに風穴が空いていただろう。

 神秘の森の魔物は、スラウが連れてきた魔物がいなくなって弱い者しかいない。結界を纏った俺の一撃に耐えきれないため、一切特訓にならないのだ。

 その反面、精霊が作った人形は頑丈で一撃では倒れない。と言っても、この様子ではもう一撃与えれば壊れるだろうが…。


「おっと…」


 人形の動きが急に変わった。一方の人形が俺に足払いをしかけ、もう一方が俺の顔目掛けて拳を振るう。結界で足を守ればダメージはないだろうが、それでも体勢は崩されてしまうだろう。

 飛んで蹴りを躱し、拳は結界を体に纏ってダメージを防ぐ。衝撃は殺せないため、空中にある体は後ろへ吹き飛んだ。

 受け身を取ってすぐに立ち上がる。人形が追い打ちを掛けようとすでに近くまで来ていた。結界を張って一体の行動を阻害する。

 もう一体は襲って来ない。俺に一対一で勝てないとわかっているため、連携を取ろうと距離を取っている。俺が近付くと人形が腕を振るった。

 人形の拳を結界を張った手で受け止める。もう一体の人形が振るう拳に合わせて、掴んだ手を引っ張った。

 人形の拳がもう一方の人形の凹んだ胸に突き刺さる。すでに薄くなった胸は、同じ素材でできた者の攻撃を受け止めきれなかった。腕が胸を貫通する。人形が動かなくなった。


「あらら。やられてしまいましたか」


 一体が倒れたことにより、もう一体もすぐに倒れる。


「やっと自分の体に慣れてきたな…」


 魔王軍の幹部だけあって、スラウを倒した俺はさらにレベルアップをしたようだ。そのため上昇した身体能力と特訓していた時の俺の身体能力が噛み合わず、人形と戦い始めた当初は苦戦を強いられた。魔物の場合は弱すぎて、この事態に気づけなかったのだ。

 以前一気にレベルアップした時も、力の加減が難しくて生活するのに苦労した。戦闘はまだ初めてだったため、慣れるまでは早かったが…。今回は剣の特訓をしていたため、以前のイメージが残っていて慣れるまでに苦労させられた。

 いくら結界が硬いとはいえ、力がなければ殴ってもミスリル人形にあまりダメージを与えられなかっただろう。今の身体能力なら、空間認識さえあれば二体のミスリル人形相手でも対処可能だ。かなり強くなたといってもいい。

 スラウとの戦いで無意識に使った結界を纏う技も、今では問題なく扱えている。まだまだこの技は応用できると思うが、それは追々修行をしていけばいいだろう。

 カリアも一緒に戦っていたためかなりレベルアップしたはずなのだが、彼女はすぐに戦闘の感覚を取り戻していた。戦士系職業の恩恵によるものだ。自身の身体能力を把握し、今では完璧に動けている。


「それだけ動ければ十分でしょう」


 彼女の言葉に頷く。特訓に付き合ってくれた彼女には感謝している。


「ありがとう。助かった」

「いえいえ。精霊剣の時のお礼ですよ」


 それを言われては、これ以上言えないな…。

 今の感覚を忘れない内にもう一度動きの確認をする。俺が脳内でイメージして確認していると、何も言ってないのにミスリル人形が現れた。

 流石は精霊…それは失礼だな。彼女だから気が利くのだろう。彼女の好意に心の中で感謝して、意識を人形達に向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ