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第十八話 結界術師、歓迎される

                            第一章 エルフの里

                        第十八話 結界術師、歓迎される



「…と言う訳で、精霊剣は渡せないんだよ」


 エルフの里の入り口、小屋の中にて俺達と長老が集まっている。机の上に立ち、精霊の魔力で作られた魔法人形ゴーレムが長老への説明を終えた。


「よかろう。お主達が里に滞在することを認める」

「ちょっと待ってください!」


 小屋の中に煩い二人組の男の方が入ってくる。


「試験の条件は精霊剣を持って帰ることだったはずです…。認められません!」


 精霊に証までもらって帰ってきたのだ。流石にそれは無理がある。


「何を言っておる。精霊様に証をもらって帰ってきたのだ。十分資格はあるだろう」

「それだって言っているだけではないですか! 本当に精霊様にあったのかだって怪しいものです!」

「お主にはこの精霊様の魔力がわからないのか!!」


 精霊のことを疑ったのが許せなかったのだろう。長老が圧を込めて怒鳴り声を上げた。


「ひゅ!?」


 サーシャがそれに驚き身を竦める。尻尾も下がり、太腿の間に挟まっていた。


「…すまない」


 彼女の様子を見た長老が、大丈夫だと宥めるように笑顔を向ける。


「ううぅ…」


 だが、サーシャは怯えた様子で俺の背後へと隠れた。それを見た彼は肩を落とす。そこまで子供が好きなのだろうか…。


「往生際が悪いぞ」


 二人組の女性の方が小屋へ入ってきて男の方へ言う。それを聞いた男はついに諦めたのか、その場で項垂れた。


「今から皆に報告へ行く。あなたも来ていただけますかな」

「うん!」


 長老が手のひらを出し、そこへ人形が飛び乗る。


「行くぞ」

「かしこまりました!」


 長老が小屋を出ると、二人組もそれに続く。俺達は長老達が帰って来るのを待つこととなった。


「怖かったのです…」

「長老様は優しいから大丈夫」


 三人が出て行くとサーシャが俺の後ろから現れる。カリアが優しい表情を浮かべ、サーシャの頭を撫でて宥めていた。彼女がカリアの胸に飛び込む。

 二人の仲はかなりよくなっていた。


「それにしても、精霊様にいただいた証にまでケチをつけるとは。パウは何故あそこまでして突っかかってくるのだろう」

「単純に人間が嫌いなだけではないのか?」

「何を言っている。人間とはいえ、試験を突破したのだ。精霊様に認められるということは、私達エルフにとっては人間でいうところの勇者と同じような存在なのだぞ」


 カリアが苦笑しながら言う。どうやら煩い男はパウと言うらしい。全くいらない情報だな…。俺達はいつの間にかエルフの中で勇者に近い位置になっていたようだ。


「勇者は嫌いです」


 サーシャが呟く。彼女にはチナを出た後に勇者との出来事を話してある。そのため、勇者のことが嫌いなようだ。無論王都での出来事であって、神殿跡地でのことは言っていないが。

 俺が受けた仕打ちを聞いた際、彼女は自分のことのように怒ってくれた。その日、彼女は勝手に俺の眠る寝袋に潜り込んできた。俺のことを心配しての行動だったようだが、朝目が覚めると彼女が一緒に寝ているという状況は慣れない…。


「まさか精霊様に直に会えるとは…」


 カリアが感慨深げに言う。エルフが精霊に会うというのは、人間で言えば神に会えたようなものだ。


「よかったな」

「クロウ達のおかげだ。感謝する」

「いや、カリアの力だよ」


 実際、俺一人では辿り着けなかっただろう。彼女の力があってのものだ。


「いやクロウの…」

「いやカリアの…」

「二人とも凄いのです!」


 俺達が言い合ってると、サーシャが俺とカリアの手をそれぞれ握って言う。そして、彼女は俺達の手を重ねた。不安そうな瞳を浮かべてこちらを見ている。

 どうやら俺達が喧嘩をしていると勘違いをして、不安になったようだ。頑張って仲直りをさせようとしているのが何だか微笑ましい。

 彼女を見て俺達は同時に笑みを浮かべる。


「「サーシャ(ちゃん)も凄いぞ」」


 二人で交互に頭を撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振りながら満面の笑顔を浮かべた。


 長老が皆に話をすると里中で大騒ぎになり、すぐに俺達は里の中へと招き入れられた。俺の種族は変わらず人間だが、やはり彼等の中では精霊に認められた者は特別なようだ。今までとは百八十度違う態度に少し困惑する。

 夜には歓迎会が開かれるそうだ。里の皆が準備のために動き回っている。


「ここが私の家だ。そこに見えている家が空き家なのでそこを使ってくれ」


 カリアの案内で家まで辿り着く。


「わぁ~。広いです!」


 サーシャが家の中を走り回ってる。安宿や小屋ばかりに泊まっていたので、広い家が珍しいのだろう。荷物を置いて家を出る。


「では頼むぞ」

「ああ」


 彼女に軽く答えておく。サーシャには悪いが、今回も留守を頼んだ。

 カリアの案内で里の中を歩き回る。だからと言ってただ歩いている訳ではない。里の中にサイレントアントがいる可能性があるため、空間認識で探し回っているのだ。

 食べ物等は皆で分け合っているため、人の町のように食事の屋台などは存在いない。そのため、ここは誰の家等といった案内となる。興味が一切なかったため、家に帰って来た頃には何一つ覚えていなかった。

 サイレントアントも二匹見つけた。俺が場所を指示し、そこをカリアが斬ることで一瞬で片付く。隠密能力以外は弱いため、居場所さえ判明すれば問題ない。


「そろそろ行くか」

「うん!」


 俺の言葉に元気に頷き、サーシャは走って家を出て行く。歓迎会の主役ということもあり、少し早めに向かった。

 歓迎会は長老の家の前で行われる。長老の家が里の中心にあり、周囲も開けているからだ。

 エルフは元々何かの記念でしか酒は飲まないらしい。なので久しぶりに飲むのだろう。

 歓迎会はすぐにただの飲み会へと変わった。先ほどまで沢山のエルフが挨拶に来ていたが、皆好き勝手に食べて飲んで騒いでいる。

 精霊に認められた者がいるということもあるが、里の脅威であったサイレントアントが排除されたのが大きいのだろう。


「すまない。皆久しぶりの酒で気分が舞い上がっているのだ」


 カリアが料理の入った皿を両手に持ち、隣に腰を下ろした。片方の料理を俺に手渡してくる。少し顔が赤いので、すでに酒を飲んでいるのだろう。


「ありがとう」

「サーシャちゃんは寝てしまったか」

「ああ。もう遅い時間だからな…」


 サーシャは俺の足の上に頭を置いて寝ていた。歓迎会が始まってからずっと騒いでいたので、疲れてしまったのだろう。

 二人で話しながら食事を食べていると、長老がやってきた。


「サイレントアントの討伐感謝する」


 俺の前にきて座るらずに頭を下げる。俺達が座るように促すと、ようやく頭を上げて腰を下ろした。


「明日、里の年長者で魔王軍の幹部のことを話し合う。作戦によってはお主にも力を貸してもらうことになるが、その時はよろしく頼む」

「任せておけ」


 そう言って長老と盃をぶつけあった。

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