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第十五話 結界術師、エルフの試験を受ける

                           第一章 エルフの里

                     第十五話 結界術師、エルフの試験を受ける



 小屋に俺とサーシャ、カリアと長老で向かい合って座っていた。煩かったエルフも後ろから付いて来ていたが、話が進まないということで長老が外で待たせている。


「まずは感謝を述べよう。ありがとう」


 突然長老が頭を下げる。それと同時にカリアも頭を下げた。


「全く意味が分からないが…」

「わかっている。今から説明しよう」

「いや、儂が説明する」


 カリアを止め、長老が話し始める。


「まずは名前だな。儂はアルマ・フビだ。エルフの里は現在、魔王軍による攻撃を受けている」


 魔王軍幹部であるスラウのことだろう。この里の近くにある洞窟にいたので、そこを拠点にして襲ってきているようだ。


「少し前からエルフの子供がいなくなるということが発生していてな。同時期にあの洞窟にやってきた魔王軍が怪しいということで動いていたのだが、あの鎧に返り討ちにされてしまった。それからは防御を徹底していたが、やはり子供はいなくなっていった。原因がわからず対策もできていなかったのだが、犯人はどうやらサイレントアントのようだ。お主のおかげで原因がわかった」


 なるほど…。確かにサイレントアントは隠密能力が高いので、里に侵入されていても気付けないだろう。エルフに見つからず子供を攫うことも容易なはずだ。


「エルフは魔法に適性があるが、回復魔法が特に秀でている。逆にサポートのような魔法は不得意なのだ。儂等ではサイレントアントを見つけることができない」


 エルフでも全ての魔法が得意な訳ではないのか…。回復魔法が得意ということだが、上級の攻撃魔法を使える者もいる時点で才能があるというのは事実だろう。


「他にサイレントアントがいるかどうかを、お主に確認してもらいたいのだ。虫のいいお願いをしているのはわかっているが、よろしく頼む」

「それくらいなら構わないが…」


 俺が話している途中で扉が開かれる。


「長老様! 人間を里に入れるのは反対です!」

「これは里の者全員が思っていることです。いくら長老が許可を出そうとも駄目です!」


 煩い二人組が現れた。それを聞き、長老が難しい顔をして考え始める。彼は里のためを思って俺に助けを求めようとしているが、かと言って皆の意見を無視する訳にもいかないのだろう。


「申し訳ない」


 カリアが長老の苦悩を汲み取って代わりに俺へと謝った。同じエルフとして責任を感じたのだろうが、彼女が謝る必要は一切ない。


「アルマさん…大丈夫?」


 サーシャも彼の顔を覗き込み、心配をしていた。彼女を見て笑顔を浮かべる。


「皆に会議を行うと伝えてくれ。今夜集まってもらう」

「かしこまりました!」


 二人組の一人が里の中へ駆けていく。


「すまないが、この話は会議が終わってからもう一度させてもらう」

「皆は間違いなく反対しますよ」


 長老の言葉に残った一人が反論した。


「何とかできるのか?」

「里のためだ。何とかしよう」


 俺が尋ねると、彼は不敵な笑みを浮かべて言い切った。


 翌日、長老が悲し気な表情をして小屋へと入ってくる。分かり易い表情をしている。


「失敗だったのか?」

「…すまない。だが、条件付きで了承してもらえることとなった」

「その条件とは?」

「試験を受けることだ」


 試験という言葉でカリアが曖昧な表情を浮かべ、サーシャが首を傾げる。


「長老様、それは了承しないと言われているのと同義なのでは?」

「いや、お主等なら試験も突破できると信じているぞ」

「…」


 彼女が呆れた表情になった。試験は突破できないほど難しいものなのだろうか?


「試験の内容は?」

「精霊樹のダンジョンから精霊剣を取ってくることだ」

「因みに、今までエルフで突破できたものはいないと言われている」


 長老の言葉にカリアが付け足す。エルフが誰も突破できないとなるとそれだけ難しいか、魔法耐性が極端に高いのだろう。

 後者だと嬉しいのだが…。エルフは弓の扱いにも秀でているので前者である可能性が高い。


「まあ、やるだけやってみるか」

「カリア、お主にも付いていってもらう。頼んだぞ」

「かしこまりました」


 精霊樹のダンジョンには俺とカリアの二人で行くこととなった。サーシャは今回、里で預かってもらうこととなっている。犬獣人である彼女だけならば歓迎されるようだ。彼女の明るい性格が要因の一つでもあるのだろうが。


「魔物があまりいないな」

「精霊様の力が強いからな。魔物は近付いてこない」


 精霊樹に近付けば近付くほど、魔物の数は減っていく。すでに一体も出会わなくなっていた。


「ここか…」


 ダンジョン内の魔物は精霊が作った特別な魔物らしい。ダンジョンの守護をしているという。知っている情報を聞いていると、精霊樹に着いたようだ。

 周囲の木と同じような見た目をしているのに、雰囲気が明らかに違った。神々しいというか、仰々しいというか…。近寄り難い雰囲気がある。


「早速入りますよ」


 地下一階までは魔物がいないという情報だったので、カリアが足を進める。ダンジョン内に入ると、早速怪しい石板が置いてあった。これは情報にあったものだ。

 この階層は問題を解きながら進んでいく必要がある。魔物はいないが、左右に道が分かれていて石板を読んで問題を解き、どちらかの道を選んで進んでいくのだ。

 問題の内容はエルフに伝えられている伝承や歴史から構成される問題なので、彼等に協力をしてもらえるならば問題ない。


「ふむ…。右だな」


 今回はカリアがいるため、問題を次々と解いて進んでいけた。彼女もエルフの里の生まれという訳ではないので、全て正解できた訳ではなく何回か間違えてしまったが…。

 間違えるとダンジョンの入り口に戻される。それだけで、何回でも挑戦できる仕様となっている。だが再び挑戦すると問題も変わっているため、問題の答えを暗記して進んでいくのは至難の業となっていた。

 カリアの場合は九割くらいは知っていたため、全問知っている問題になるまでそう時間がかからなかったのだ。


「すまない。思っていたよりも時間がかかってしまった」


 そう言って、恥ずかしそうに少し顔を赤らめる。俺は全く問題がわからなかったので、謝罪する必要などないのだが…。


「次の階からが本当の戦いだな」

「ああ。慎重に行くぞ」


 二人で頷き合う。地下一階から魔物が出てくる。出てくる魔物は全て精霊が作ったと言われている魔法人形ゴーレムだ。

 魔法人形は形によって動きは変わるが、強さは素材によって変わる。土等でできた魔導人形は弱いが、鉄等でできたものは普通の剣で斬ろうと思うと、かなりの技術が必要とされる。

 魔導人形は魔法で強化されているため、元の素材よりも強度が上なのだ。


「来たぞ!」


 狼型の土人形が三匹奥から走って来る。俺の声にカリアがすぐに動き、三匹をあっという間に倒してしまった。土人形程度では相手にならないようだ。

 基本的に魔法人形の倒し方は首を刎ねるか頭や核を壊すとよい。

 核は素材を魔法人形として固定する役割を担っている。素魔法人形によって位置が異なるが、殆どのものは胸の位置にある。心臓の位置に作る方が、作成者が作り易いからだ。

 頭は魔法人形を動かす働きをする魔法を込めてある。そのため、頭が潰されたり切り離されると核が機能しなくなるのだ。

 彼女は一匹の胸を斬ると、すぐに首を刎ねていた。


「ここ魔法人形は核の位置が分かり難いな…」


 そう言って苦い表情を浮かべる。狼型は胸を切り裂かれても動いていたのだ。人間が作る場合と異なり、精霊が作ったものは核を胸に作る必要がないのだろう。そのため、核がどこに存在するのかがわからない。


「一度休憩にするか」

「この程度の雑魚なら問題ないが…」

「里から歩き続けていただろう。突然強い魔法人形が現れる可能性もある。休憩できる時にしていた方がいい」


 彼女はそれを聞き、納得して壁を背に腰を下ろした。二人を囲むように結界を張って俺も腰を下ろす。


「それにしても、旅に慣れているのだな。私も冒険者見習いとして何度も旅をしていたのだがな…」


 苦笑を浮かべて自傷気味に言う。


「慣れている訳ではない。俺もサーシャも体力があまりないからな。必要だっただけだ」


 笑いながらそう言うと彼女も笑みを浮かべた。


「子供の頃にクロウと出会えていたら…」

「何か言ったか?」


 長い金髪の先端を弄りながら何かを呟いていたが、声があまりにも小さかったために聞き取れなかった。


「何でもない!!」


 カリアが顔を赤くしながら声を荒げる。

 聞いてもらえなかったから怒ったのだろうか…? そのようなことで怒る人物ではないと思うのだが…。

 俺が疑問に思っていると、彼女がそろそろ行くぞと立ち上がったので後を追う。


「ここは…」


 広い空間に出た。奥には二階に降りる階段があるが、その手前に大量の魔法人形がいる。


「数は百近くか…。私が突っ込むからフォローを頼む」


 いくら彼女でも、この数相手に一人で突っ込んで無傷では済まない。こういう時に遠距離攻撃ができる者がいないと辛いな…。

 カリアは一応魔法を使えるが、魔法戦士は戦士系の職業である。剣に魔法を付与して戦うため、攻撃魔法等はあまり得意ではない。


「ここは俺に任せてくれないか?」


 俺が言うと、彼女は大丈夫か? と視線を返してきた。大丈夫だと頷くと、彼女は後ろへ下がる。

 俺は全魔法人形の注意を引くために前へ出た。

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