やりなおし
しばらくして目を覚ますと、私は懐かしい部屋にいました。実家の私の部屋です。起こしてくれた美人は、私のお母さんです。若いなあ。
洗面所に行くと、鏡には幼い私が映っています。これは夢でしょうか。私は昔の夢を見ているようです。
リビングに行くと、これまた若いお父さんが神妙な面持ちでいます。「引っ越すことになった。」
ここからは、私の記憶にはない、夢の中オリジナルの設定のようです。私は幼少に引っ越しをしたことはないはずです。それに、私はこのころにはすでに病状に伏せていた覚えがあります。
引っ越し先は、ずいぶんな田舎でした。「支店があたらしくできて、そこの支店長として赴任することになった。」お父さんが言います。
そうなの。田舎でも私は楽しみだよ、と伝えます。何か忘れているような気がします。そう、私は一度おばあちゃんまで生きて、人生を閉じたのです。あれ、そんな気もするけれど、長い夢を見ていただけのような気もします。それに、もっと大事な何かを忘れているような…
次の春、私は引っ越しをします。高校2年生の春、私は引っ越し先の公立高校へ転校することが決まりました。いったいどんな生活が待っているのでしょう。長い長い夢を見ていたような気がしますが、朝ごはんも食べ終わって目がさえ始めたころには、どんな夢を見ていたのかはほとんど忘れていました。なぜお母さんを若いと思ったんだろう。