夢の外へ
私は、何か夢のような空間にいるようです。目の前には、何かよくわからない光が見えます。
「次の人生は、どんな形がいいですか?」
光が語りかけてきます。まるでおとぎ話。私は、「大切な人と一緒に生活をしたい」
と願いました。もう私の人生は終わっているのです。最後くらい、あっけない夢を、あの時から、何年、何十年と願ってきた、片時も忘れることの無かったあの少年と一緒になれたらどれだけいいか。そんな思いを巡らせながら、光に伝えます。これが走馬灯の一種なのでしょう。
「あなたは、頑張った。」
光が語りかけてきます。よく考えた、その音源が光からなのかは判別が難しいです。それでも、もうそう言った不思議に対する思考は廻りません。めぐる必要がないのだから。
「あなたを、次の人生にご招待いたします。誰もに同じことはできません。これは、あなたが生を受けてからここまでの道のりで確かな信念と、それを実行し続けてきた結果なのです。信じられないかもしれませんが、これも一つの走馬灯、夢だとでも思っていただければ幸いです。でも、それは真実かもしれない。それが現実かもしれない。それを体験して、どう感じるかはあなた次第ですよ。どうか、ずっと持ち続けていた素直な気持ちをなくさないで。私はここで今しばらくそれを見させていただきます。」
そういうと、光はおかしな挙動で飛んでいきました。死の世界は「無」とはよく言ったものです。ですが、死人に口なし。こんなことがあるなんて、生きている人の誰にもわからないことですね。
私は、もう一度そっと目を閉じました。