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夢と未来の歩き方  作者: みやもり
4/12

転換

 それからしばらく、転校生がいなくなることも、カレー→カレーうどん→カレーになることもなく、普通の高校生活を送っていた。友人もけん玉をすることはなかった。転校生の子も、結構なついていた。まさか俺が…主人公!?


 2学期が始まってすぐ、俺は学校を欠席した。体調が芳しくなかったのだ。夏風邪だな。

「悠ー、今日は寝てなさいよー。」

 部活を引退し、ゆっくりと朝食を摂った姉はそう言いながら学校へ向かっていった。

「夏風邪はしんどい奴だなー。ちくしょー。」

 とりあえず寝よ。

 とりあえず寝てみるが、体調ですぐに起きてしまう。熱もある。しんどい。こんなにしんどい風邪は初めてだな。メールが来る。

『けん玉部の大会に出るぞ!』

 何言ってんだこいつ。けん玉?そういえばけん玉を推し進めていた時が一瞬あったよな。あれ?あれは夢だっけ?次の日にはパタッと何も言わなかったからあれは夢かと錯覚したんだったな。

 そう思うとふと、アホのメールを閉じて、新しくメールを送ることにした。

「倉橋さん、怜の奴のけん玉に付き合わされるなよ。」

 どんな内容でもよかったので、とにかく適当に文章を作って送信してみる。

 間髪入れずにメールは帰ってきた。

『MAILER-DAEMON』

 びくっとしたが、エラーメールだ。送り先に届かなった時のやつ。相手の連絡先がありません。

「あれ?アドレス変えたのかな?」

 電話を、とも思ったが、わざわざ電話をしてもする話はないし…とりあえず体調が芳しくない。寝よう。


 体調は思うようによくならなかった。1週間たっても、体のだるさはひかない。

 両親もかかりつけの病院と相談をして、総合病院で細かな検査をしたらよいという話になった。何事も長引くのはよろしくない。その日、怜が姉とともに見舞いに来た。

「悠ちゃん大丈夫かよ!?」

「夏風邪だろ~。明日大きい病院でもっかい診てくるよ。」

 そっか~、怜は『余命』、とふざけたことを言いかけて、黙った。

「別にふざけてもいいだろ。死ぬわけじゃないんだし。」

「そうはいってもな~不謹慎なのは好きじゃないからな~。」

「はいるよー。怜君今日はうちでご飯食べてく?」

 姉がそういうと怜は快諾した。部屋には大量のスポーツドリンクが差し入れられた。

 メールを送ろうと思った。が、誰にメールをしようと思ったかピンとこない。熱で頭がやられているな。えーと

 だめだ、体がだるい。メールはまた今度だな。


 翌日、県内屈指の総合病院に向かい、何やらいろいろと検査をした。病院の人たちは、嫌にやさしかった。家族も自分も日帰りなものだと思っていたが、検査入院という形で病院に留まることが決まった。まじかよ。怜にとりあえずメールをして、すぐに返信が来たので、病院の名前を伝えた。

 親はいったん戻って、姉もついてきて着替えやらを持ってきてもらった。

「検査なんだから!気を落とすなよ!勉強は教えてあげるから!1時間1000円ね。」

 姉は変わらずにふるまっていた。さす姉。

 ひとまず3日間の入院と相成った。体調も悪いし、寝だめをするかな。


 この日の夜は、ずいぶんと長い夢を見た。


 それが今の自分が見ている夢だとすぐに分かった。すでに学校にいたからだ。怜と知らない子がいる。あとクラスの何人かと話している。そして俯瞰でその光景を見ている。

「そろそろ文化祭やねえ。」

 怜が言うと

「文化祭って、クラスごとに出し物とかしたりするんですよね。お化け屋敷とか。」

 知らない子が言う。そういえば、それこそ去年はお化け屋敷をやったんだよ。あれって、ちゃんとお祓いの人呼んでお祓いしてもらうんだよね。むしろ怖い。とそこの周囲で思い出話になる。

「今年は何するかね。喫茶店とかがよくない?」

 いいねー喫茶店!メイドだ執事だ猫だフクロウだと、奇抜な喫茶店を各々羅列する。猫とフクロウは無理だろう。

「喫茶店、いいですね!文化祭かあ。楽しみです。」

 知らない子がそういうと

「~~さんは文化祭に出たことはないの?」

 誰かが聞いた。

「私、この学校に転校するまで―――」


 目が覚めた。もうあまり覚えてない。体が重い。怜とクラスメイトのほかに、誰かいたような気がする。誰だ。転校生だったかな。はて、転校生なんてうちのクラスにいたかしら。まあ、夢だし転校生の一人や二人増えても問題あるまい。また寝よう。夜中の病室、こわ。


 翌日から様々な検査を受けた。午後にはぐったりして寝てしまい、起きたら夜だ。食事も制限され、昼間寝てしまっていて夜は目がパッチリである。数少ない救いといえば、周りの友人も若いので、夜中までメールなりで付き合ってくれる連中がいるということだ。

 3日目までそんな検査が続き、夕方、両親が来た。手にはより多くの着替えやらの荷物。はて、迎えではないのか?

「ゆっ悠~!」

 姉が目を腫らしながら入ってきた。失恋?

 後から両親と主治医?ずっと検査を担当してくれているお医者の先生が入ってきた。

「東悠さん。3日間、検査ご苦労様でした。検査の結果なんですが、君はどうやら脳に病気を抱えている可能性があります。まだお若いので、少しずつ良くして行けるよう、私どもも最善を尽くしますので、一緒に頑張りましょう。」

 家族と一緒に話を聞き、母は泣き崩れた。姉も、ダムが決壊する感じで泣いてしまった。父親はそれを慰めながらうつむいていた。え?何それは。

「え、自分がですか?」

 自分のほうを指さし、先生に尋ねる。先生は神妙に頷いた。

 病名の宣告ってこんな簡単に告げられるのか~。飲み込むのに時間かかっちゃうなー、はは。

「しっかりと、治療をしていきましょう。」

 先生はそう言って、家族が元の様子に戻るまでそちらの椅子に掛けてくれていた。ドラマとかだと、すぐにどっか行っちゃって冷たいね的な感じだが、この先生はおそらく心底お優しいのだろう。

 詳しく聞いたが、よくわからない。遺伝的なものではないので、後天的な何か要因で発症したらしい。病名とかは難しくてよく覚えられなかった。とにかく自分は、直すことに専念するようにとのことで、この日はお開きになった。

 帰りに姉が

「私の去年までのノート持ってきてあげるから、勉強しなさいよ。」

 泣きながらそう言うのでさすがに勉強をしないとなと思った。


 その週末、怜が遊びに、もとい見舞いに来た。

「悠ちゃん大丈夫なの!?まさか入院になるとは思わなかったよ!」

 そりゃそうだ。俺だってそんなこと考えてたなかったんだから。

「で、いったいどういう状況なんだ?」

 怜には言ってもいいのかもしれない。そう思って現状を伝えた。

「そっか。ちゃんと治して戻ってこれるんだよな?」

「もちろん。まあ確証はないけどね。ちゃんと復活してみせらあ!」

「よしっ!悠ちゃんかっこいい~。安心した!そういえば今週学校でな~」

 いつもの怜に戻った。助かる。こいつの呑み込みの早さは。勉強に生かそうな。

 帰り際に

「そうだ、どうせ暇だろうからこいつをやるよ。」

 けん玉を置いて帰っていった。だからなんでけん玉?ルービックキューブとかの方がよくない?


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