【悲報】神スキル『ゴミ製造』を持ちクラス転移で追放www【悪役決定】
魔王がいます、まあわかる。自分達では倒せません、わかる。異世界から勇者を召喚します、馬鹿かよ。俺たちに何があるってんだよ……、俺は強く姫を恨んだ。そして、幸せそうなクラスメイトを。
俺は何処にでもいるようなオタクだ、幾人かの友人を持ち休み時間に教室の端で馬鹿騒ぎしながらアニメへの愛を語り、同じく馬鹿騒ぎをするクラスの陽キャのゴミどもを見下している塵芥だ。運動はできないし対人スキルはないし碌な頭もない、まさしく物質的に豊かになった現代の社会のカスだ。
俺達オタクにはおなじみ異世界転移っつーのに、俺は感動したよ。クラス転移とかあんまりメディア化された作品ないからな、だからこそオタクが輝けると思った。普段Kポップしゅごいだのハッピーメリークリスマシュだのなんだの騒いでやがる女どもを見返す時が来たと思った。腐った女子からも惚れられるんじゃあねえかと期待した。テンプレ通り、ステータスオープンと言えばステータスが窓で表示されるもんだから、当然御誂え通りの物だと思っていた。
所がどうよ、ステ開いてみれば基礎ステは全部G表記でギフトスキルはゴミ製造でジョブは社会ゴミだ。そんでもって詳細を開いてみればよ、ゴミ製造はゴミを無から生み出せるスキル、社会ゴミは発達した文明の生み出したゴミときた。ついでに基礎ステのGはGOMIのGだってよ、カスが。ちょっと使ってみたが小学生の使わなくなった漢字ドリルとか汚れた服とか食後の納豆パックだの賞味期限の切れた牛乳だのなんだの、マジでゴミしか生み出せねえし。しかもヤバいことに、王国のヤツに自己申告で能力を伝えさせられるし……秘匿すればなんとか寄生もできたのになぁクソ。ましてゴミを生み出す能力なんぞ誤魔化しようがないし。
俺は城関係者の満場一致で追放処分となった。いや、最初はクラスのバケモンどもが自分たちに刃向かったらどうしようかと怯えていた召喚した国の人達に人質に取られかけたんだが、俺にそんな価値なんてないっすよって自己申告したら『このゴミが』なんて罵りとともに退場だ。城関係者によるとクラスの皆には適当言ってくれるらしいが……おお、神は我を見放したもうか。
無性に腹が立ったので今は街中の井戸に化学廃棄物をスキルで生み出して垂れ流してる最中だ。生み出せるゴミの欄に工業廃水の項目があったからそれを捨てるだけだ、楽で良いね。馬鹿め、俺を侮るからだ。ゴミってのは役に立たない物の事を言うんじゃあない、そこにあるだけで迷惑になる物を言うんだ。
俺はパン屋の裏に粗大ゴミを次々と生み出して騒ぎを起こした後、火事場泥棒をして食料を盗んでいった。そんで適当な森の奥にゴミで家、つーかスクラップの山を作った。動物は寄り付かないので家とみなしても良いだろう。錆びた棘付き鉄線とかゴミとしてカウントして良いのか微妙なものもあるからな、まあ豊かな社会では確かにゴミに分類されるんだろうが……壊れた鉄筋コンクリートとか使用済み避妊具とかそう言うものがある、もしかしなくともこれってチート能力じゃね?
物資チートだ。コンクリートを割るって言う努力は必要だが、大量に鉄が用意できるっつーのは戦時にはもう至高の能力だろ……つうか、残飯もゴミに含まれて……おいおい? 俺……一瞬で自分が如何にしてゴミであるのかを理解した。工業廃水に水銀とかの重金属が入ってみろアレは致死毒だ、シャレにならないレベルの後遺症もでる。ああ……クソ、俺は取り返しのつかない罪を自覚なしで犯しちまった、もうクラスに戻れやしねえ、残飯を幾らでも生み出せんならガチで物資支援ができるわ……ああ……クソ……俺は涙を流して泣いた。俺はこれから一人で生きていくしかないのか、嘘だろ……。
俺が暫く泣いていると、すぐ近くに弓が飛んできた。急いで盾となるガレキを生み出す。畜生、誰だ、俺を誰だと思ってやがる! 俺はゴミを司る王だ、ゴミ山の王だぞ! 敬いやがれ! 俺が叫ぶと俺が完全に囲まれているから投降しろっつー野郎の野太い声が聞こえた。面倒だから省くが、俺は紆余曲折あって賊長のロビンと愉快な仲間達に加わることになった。賊が僭称してたなんちゃら団とか言う名前は忘れた、覚える気もないし。
賊はなんだ、義賊っつーわけのわからない事をやってる集団だった。悪を挫き貧しきを救うだか何だか。俺とは絶対にソリが合わない……楽に生きれるなら楽に生きようぜっつー話だ。
俺は義賊の一員として働くことになった。俺自身は実際に盗みはやらない、何たってステータスはGOMIだからな。スキルは神スキルだったが。汚ねえってことに目を瞑れば食っちゃ寝できるんだ、あと偶に食あたりすることにも目を瞑れば。俺はいくつかのメンバーと拠点開発に専念よ、後は傷ついたメンバーの治療とかな。飲みかけのビタミン配合ジュースのペットボトルを生み出して飲ませてやったり、捨てられたエロ本を渡してやったりしている。捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもんだな。
加入してから暫くするとわかってくることが色々とある。まず、世界はもうボロボロだとか何だとか。人間の国はほとんど残っていなくて、王国は勇者召喚とか言う眉唾モンに頼り始めただとかなんだとか。つい最近成功したらしいが、成功に2年の月日がかかっていてその間にも魔物が侵攻しつづけてどの国ももはや孤立状態、人類滅亡も目前っつー辺りらしい。しかも勇者中隊、まあ俺のクラスの事だ、そいつらが召喚されたその日に王都では魔族側の破壊工作がされたらしく、多数の死者が出たんだとか。
それを受けて勇者達は魔王討伐に乗り気らしい、バカだねぇ……本当に馬鹿だ、魔王討伐云々なんぞ、まったくの下手を打つもんだぜ。まあ百歩譲って魔王討伐は良しとしても、召喚された王国のバックアップを受けるのはダメだろ。初日に俺がなんらかの理由で消えたんだから、何か裏があると察しろよ。勇者様に隠し事をするような図太い国なんだ、魔王なんて明確の脅威が消えたら、今度はテメーらを化け物扱いして毒殺だの何だので暗殺するなりなんなり、どうにか平和を保とうとするぜ。そりゃあ最初のうちは持て囃して美男美女を当てがってご機嫌を取ろうとするだろうが、クラス全員を遊ばせるような金が崩壊寸前の国々にあるわけないだろうし、暗殺は避けられんだろ。よしんば金があったとしても貧困のカスどもが暴動起こしかねんし、豪遊はさせまい。魔族側に行くかフリーで遊び呆けたほうがいいに決まってる。国がガタついてるんだから強いヤツこそ正義の悪魔が微笑む時代だろ。
俺がある程度信頼され始めると、今度は町や集落へ駆り出されるようになった。炊き出しつーか、食糧支援だ。ゴミとしてカウントされるような残飯なんで全部食いかけか傷んでたり汚れてたりしてるが、まあ地球の闇だな、可食部が残っている奴が大半だ。そんな慈善活動、いや偽善活動をしまくってたら、ロビンの愉快な仲間達は勢力拡大しまくって当然のように俺の発言力が増えた。俺が算数なりなんなりを教えた後輩もいるし、そもそも俺のスキルお陰で発展したようなモンだからな。
俺はロビンに糞ダセエ団名を改めさせ『ヘルズエンジェルズ』、地獄の天使って名乗らさせた。まあ早い話が暴力も働くし慈善活動もする団体にさせた、傭兵派遣から村落開発に色々させたかったからな。魚を与えるだけじゃなく魚を取れる環境を作る方が人にとっちゃあいいし、何より俺の権力を高めるのにいい。
まあ村落開発つっても溜め池とか浄水器、ウネとかのある効率のいい畑の作り方を適当にばら撒いただけだが。貴族とかとの既得権益争いは避けたいので上納金だのなんだのは取らず定期連絡だけをさせて売名を優先した。千の戦士を率いる英雄にして万の村を餓えから救いし聖者のロビンなんつってな、ついでにヘルズエンジェルズに傭兵派遣できる戦力として加入している人は俺が報告を受けている限りでも2000は行ってるから誇大広告ではないぞ。まあ急激に組織が大きくなったせいで中間管理職の教育が碌に出来ず、どこまで信じていい報告なのかわからないが。ゴミとして出される電子機器に使えるものがないから取り敢えず作らせたリストも膨大で中々管理できているとは言えない状態だしな。とは言えリストによれば団員の9割が非戦闘員、1割が戦闘員だ、多分信用してもいいだろう。
さて、こうなると問題となるのが勇者中隊だ。40名弱の勇者達、まあ俺みたいに拠点開発向きの奴が四分の一で実際に勇者として魔王討伐に向けて活動しているのは30名らしいが、そいつらが俺達にコンタクトを取りたがってやがる。いや、もっと言えば俺なんだが。人の口に戸は立てられないとかじゃなく、そもそもヘルズエンジェルズなんて固有名詞は地球産だから俺の関与は明白だった。面倒だから関わるなっつー意味でワントップ体制を敷いていたんだがな……俺は初日にやらかしたから、ステがゴミなので勇者とか言うバケモノが怖いから、王国が怖いから、諸々の理由で面会を断った。断ったつーか逃げた。確かに大きな痛手にはなるだろうがもはや組織は俺無しでも回るだろうし、手塩にかけ育てた俺の影武者に本拠地を任せ、俺は秘密裏に作った少数精鋭部隊と共に副拠点を転々と移動した。
影武者との連絡によると勇者中隊は俺が逃げ出してから一週間も経たずに4人の戦闘員を送りつけ、俺と話をしたいと迫ってきたらしい。影武者は部下を通じて断ったが、影武者の部屋にNINJAみたいな奴が入ってきたんだとか。その場で影武者を殺したりはしないで、無事なのかとか今何をしているんだとか色々と話したい事があるだけだと伝えて帰ったそうだ。影武者は俺への手紙に会ってやったらどうだと書いた。
俺は怖くなった。俺はどこまで行ってもゴミだ、それは変わらない。だからロビンを英雄に仕立て上げ周りを小国として数えられるほどに育てたんだ。印象を少しでも良くするために医療を伝え、動物図鑑や植物図鑑や地図を作らせ、インフラの整備や傭兵業で経済を回した。ゴミにしては働き過ぎた程だろう、もう年も20に近い、数年で賊どもを世界に名を残す大部隊にしたんだんだぞ。もう十分に部下から慕われていると思っていたのに、部下を急に信じられなくなった。俺は勇者達に無事だと伝えろと影武者に連絡し、部隊を率いて魔族の跋扈する地へ向かう事にした。元は人間の住む土地だから今でも細々と暮らしている人間がいるかもしれない、いなかったとしても前線付近に住む人を救ってやらなければ、大義名分はだいぶ苦しいが、俺が部隊と逃げる分には十分だ。
俺は影武者とロビンにしばらくの間は魔王軍にいると手紙を残し、ヘルズエンジェルのスペシャルフォースと共に魔族領深部に潜入した。そして無事に捕虜として魔王城に連行された。死者は0、狙い通りだ。俺はわざと包囲が容易な地形に部隊を移動させ、包囲された所を無抵抗で降伏することによってなんとか生き長らえた。いつまでも人間領にいたら死んでいた、部下が魔族に痛手を負わせることのできる力量でなければ死んでいた、部下からの反感があれば死んでいた、運が少しでも悪ければ死んでいた……本当にそう思う。
捕虜となった俺は魔王と交渉し、人間として初めて魔王軍に入隊した。魔王は俺の強みをちゃんと理解してくれ、俺を魔王軍人間部隊の隊長に任命した。人間部隊の役割は3つ、殆どヘルズエンジェルズの頃と変わらないが、拠点開発、部隊育成に加え捕虜となった人間の管理育成がある。管理育成とは、人間との交渉で人質交換したり人間の村を作ったり、あるいは人間でもある程度以上に戦える兵士の育成だ。魔族と比べて個人としてにの弱さが目立つ人間部隊でも装備を整え、連携訓練を積ませ、忠誠を誓わせれば普通の魔族の部隊と同じくらいには使えるのだ。
俺は瞬く間に出世した。出世したと言っても、魔王様はすぐには待遇を変えずに名ばかりの出世だった。人間の中でも特に弱い俺が出世するにはあまりにも魔王軍は大きかったのだ。大きい組織はそれだけで柔軟性を失う、魔王様からの最大の配慮だろう。俺は出世の褒美として魔族の娘をあてがわれた。人間とドラゴンのハーフで、殆ど奴隷のような扱いを受けていた娘だ、人間部隊から魔王様へのヘイトは稼ぐが、魔王様は俺に向く反感を出来るだけ抑えてくれたので、後は俺が好感度を稼ぐだけだ。偉くなった俺は人間部隊に幾人かの魔族を特別コーチとして招き、魔族と人間の擦り合わせをした。一部の魔族は人間に柔らかくなったし、人間部隊の戦闘員も純粋に強い魔族へ尊敬の念を抱くようになった。
その頃になると、人類と魔族の戦いは混沌とし始めた。人間部隊の登場、これが引き金を引いたんだ。人類を虐げる魔王というプロパガンダの元に戦っていた人類は目的を見失いかけた。突如として現れた勇者中隊などと言う首輪の付いているのか怪しいバケモノの誕生、それと同時期に生まれたヘルズエンジェルと言う小規模国家並の傭兵集団の発足、深まる国家間の不信が魔王へ降伏するか思案する国家を生み出し、一度は俺がロビンとヘルズエンジェルズで達成しかけた人類の救済は俺と言うゴミが台無しにしたのだ。
俺は人間部隊の部下には魔王軍に敗れる勇者人類の受け皿を作っていると認識されている。勇者中隊の召喚から数年経った今でも魔王討伐は達成されていない、人類の希望の火はもはや風前の灯火に等しく、俺は新たなる人類の在り方を用意しているのだと認識されているのだ。人類と魔族の融和、俺にそれが達成できるのだろうか……?
俺は魔王様に戦の後を聞いた。今、魔王軍は戦争経済によって成り立っている。だからこそ平和な世である為には鍛冶屋が多すぎる、鎚か剣しか持ったことのない手に急に鍬を持たせたって碌な畑を作れずに飢えて反発を受けるだけだ。飢えによるありふれた反乱を収めても同じような境遇の者から反感を買い、反乱が反乱を呼ぶ事態になってしまうかもしれない。それを抑えられるのは絶対的な魔王という恐怖による政治くらいだが、恐怖政治を始めるには些か遅すぎる。暫くは人間を虐げる事によって食いつなげるかもしれないが、人類には勇者中隊という恐ろしき力がある。それらを完封しなければ、戦乱が……。
俺は幾ら他人が死のうが構いやしないが、余りにも人が死ぬと俺の命が脅かされる。人を下に置き魔王を上にするという事はそういう事なのだ。ああ、お腹が痛い……。
魔王様は俺の言葉を真剣に受け止めてくださり、魔王軍会議に俺が一時参加する事になった。現在、俺はドラゴンと人間のハーフを嫁に迎えた事でゴブリンやオークなどの比較的弱い魔族種の指示は受けているが、ドラゴン種などの強い種からは複雑な、どちらかと言えば反感寄りの感情を受けている。だからこそプレゼンは確かな物にしなければ、まともに取り合ってもらえるかがわからない。
俺は色々なデータを取り集めた。人間部隊には発足当初の初期メンバー、つまり俺がヘルズエンジェルズ時代に作った秘蔵部隊がいる。俺はそいつらを通じてロビンと影武者にコンタクトを取り、今現在の人類側の経済状況を教えてもらった。驚いたのは、俺みたいな奴をロビン達はずっと信じていてくれた事だ。信じろとは手紙に書いていたが、ロビンは快く魔王軍人間部隊とヘルズエンジェルズの裏での合体を承諾した。完全な融合には暫くかかるが、いつか必ずとも言ってくれた。しかしまあ分かっちゃいたが 、勇者さえいなければ地理情報なども加味すると後一年と待たずに戦争が終結してもおかしくはない状況だ。勇者……勇者……彼らとの宥和を、俺がやるしかないのか?
俺は魔王軍会議に万全の準備を持って参加した。俺は人類の英雄ロビンを創った男で、いつでも人類の戦争を操ることができること。人類はこのままでは一年で国が死に勇者というバケモノが野放しになる事、そして俺が元勇者であることを明かした。バケモノについてドラゴンは確かに奴らの事を知っている、同胞が数体ほど打たれたからだ。個体数が少ない彼らにとっては、由々しき事態である。だからこそ彼らは俺に複雑な思いを抱くのだ。人の血によって穢れた娘を嫁にした人間、それが急に勇者の仲間だった。穏健派は俺の嫁を血族の一員として認め、その夫の俺を歓迎すべきだと思っていた。過激派は俺諸共に嫁を殺すべきだと思ってた。ドラゴンのトップは過激派寄りのオスだった、魔王軍においてドラゴンの力は無視できない、だからこそ尚更俺は彼に正直にならなければ成らなかったんだ……。俺はドラゴンの長を真正面から見つめ、そして俺の案を認めさせた。
俺は、元勇者候補魔王軍人間部隊隊長として、人間の国と勇者中隊相手に交渉する立場になった。元々、戦意がない国もあったので魔王軍を率いて嫁と一緒に首都へ訪問するだけで降伏する国もあった。だから、後はオセロのような物だ。勇者中隊最後の足掻きをさせずに、出来るだけ勇者召喚させた王国の周りの国を降伏させ、ドラゴンを率いて俺は始まりの地、王城に訪れた。勇者中隊にはヘルズエンジェルズのディスインフォメーション、情報操作により戦力分散させたのでいとも容易く無血開城、そして王族の拘束を成し得た。勇者には拠点開発能力しかない人もいるので、勇者の人質も取れた……。
……俺は、勇者達、俺が散々バケモノと呼び捨て、恐れていた存在と面会した。かつては同じ学び舎で過ごした存在だが、今ではやけに恐ろしく見える。俺は勇者達を個別の独房に入れ、一人一人に話をしていった。今や人類に勝ち目はない、後一年と経たずに人類の国は滅び勇者だけが残る。俺は人類の存続のための土台を用意した、どうか俺と一緒に人類と魔族の橋渡しをしてくれないかと。俺が喋るのは耳障りのいい言葉ばかりだ、人類のこれからの内容なんて話やしない、ただ、有無の話だけをする。魔王に刃向かい死ぬか、魔王に下って生きながらえるか。個人の感情ではなく、大勢の事を考えて欲しいと頭を下げて回る。罵りの言葉を頭から浴びた、俺さえいなければ戦争はすぐ終わったかもしれないだの、人類の裏切り者だの、お前のせいで死んだクラスメイトがいるだの、色々とだ。俺はひたすら頭を下げ、ついには妻にも頭を下げてもらった。2人しての頼み込みは流石に聞いたのか、王城にいた勇者の半分は俺の意見に賛同した。
俺はその時点で王族との交渉に移った。本当ならば全員を味方につけてから説得するつもりだったのだが、情報伝達系のスキルが居たのだろうか、ヘルズエンジェルズから勇者が帰ってくるとの伝令が来たからだ。ヒスの入った姫は無視し、王に現状を伝えた。王国の周りの国は降伏し、王城にいる勇者は魔王軍に下る事を支援し始めている。これから惨めったらしく魔王に殺されるか、それとも鉾を収める事を知っていた賢君として後世に名を残すのか。説得にそう難しいことはなかった。
そして翌日、すっかり魔王軍統治下に置かれた城下町を目前にした王の終戦宣言により、人類と魔族の戦争は終わった。遅れてやってきた戦える勇者には魔族の世界、いや、これからの人類と魔族の世界における貴族位を与える事で同意して、俺の生涯で大きな仕事は終わった。
俺は魔王軍人間部隊隊長から農林水産大臣へ栄転し、しばらくの間は農奴のような扱いを受ける人類の指揮をとった。魔王軍人間部隊と融合しかけていたヘルズエンジェルズの隊員には頼らせてもらった。アイツらはロビンと言う伝説に憧れて志願した奴もいる、そいつらや俺が育てた事のある古参は特によく働いてくれた。
だが、世界がかつての豊かさを取り戻すには長く、その時には俺は年になっていた。老眼、ヘルニア、痛風、色々と体に鞭打って生きてきた。嫁との間には子供が6人を設け、アイツらに苦労させないように人間との混血の地位向上を目指した。俺は……ステータスをもう一度開き、目を凝らして読んだ。相変わらず全てGだ。スキルはゴミ製造、ジョブは社会ゴミだった。最初の頃はコレを気にしないように意識をしていたが、今ではコレもいいかと思えるようになって来た。
結局の所、俺はゴミである事は変わらないのだ。俺は人を意味もなく殺した事があるし、腹いせに殺したこともある。俺はそれを後悔しているし反省もしている。だが、今もなおのうのうと生きて罰は受けていない。罰を受けろと言うのなら受けてやってもいいと思っているが、それだけだ。罰の方から寄って来なければ俺は罰を受けずにいる、それが悪いことだとも思わない。
俺は初日の出を眺めながらいつか報いを受ける日が来るのだろうかと思った。今のところは人類には登る朝日よりも眩しく輝かしい未来が待っている、しかし、いつそれが崩れるのかはわからない。もしかしたら、俺の報いは生涯をかけて救おうとした人類の滅亡なのかもしれない。文明が遥かに発達した地球においても争いは終わらなかった、いつの日か俺達は俺達を殺す事を再開するのだろう、それに息子達が巻き込まれない事を祈るばかりだ……。




