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今日から学校と仕事、始まります。②莞

厄日を笑え

作者: 孤独

大中小、色々あれどと。ミスは付き物である。


『機械ならちゃんとできるだろう』


そー答える者も確かにいるし。事実であるが、機械も機械で度重なる業務の繰り返しにより、劣化と不具合を訴えるものだ。最近の事であるが、仕事の都合で病院に行ったら、停電していて驚いたものである。普段なら、踏み込めば素早く開いてくれる自動ドアが、開かずにドカンとぶつかった。不便も感じた。いちお、設備点検のための停電だと受付さんが言っていたが、やっぱり機械だって検診は必要だった。

ご利用されているお客様達にご理解する人もいれば、怒る人もいたという。しょうがないよね、設備がちゃんとなければ、医療技術だけじゃなく様々な仕事で支障を来たす。自分の仕事も、趣味もそうで。前向きにそこを考えて、停電中のあの暗さの中で、診察なり注射なりしましょうか?って自分が言われたら、自分は即拒否しますわ。

人身事故で止まった電車に対しても、そりゃ内心怒るけれど。線路の下に死体が転がってるし、信号トラブルでデタラメに動いて、脱線と衝突する可能性あるけど、それでも乗車する?とか、言われたくないですね。駅員さんにはやっぱり怒れません。自分、配達関係で車も使うので、信号の不具合や道路工事の人達には気を遣うタイプで。思いやりとは違いますが、同情の気持ちがあります。




機械の不具合は、その機械にとってはどーしようもなく。責めたところで、誰かの手を借りる他ならない。それは人も同じで。



結局のところ、人も人で、どーしようもなく1人という個人的な能力の乏しさには、泣きたくなるほど弱すぎるので。



◇         ◇



ゴキュゴキュ



「ぷはぁー、いいですね。缶コーヒーは」


カフェインというのは、中毒性があるとかないとか。

好きになる味なのは事実です。


「時に冷たく、時に温かく。このちっこい一杯が疲れた体を元気にさせてくれる。社蓄には贅沢で質素な飲料ですよ」

「電車なんか使うからこーなってるんだろ」

「贅沢とは無縁………」


伊賀吉峰と王來星ワンライセイ陳九千チンキュウセンの3人は、電車で移動中。人身事故に巻き込まれ、足止めを喰らっていた。幸いにも乗り換えの時で、電車内ではない。


「4,50分の辛抱ですよ。駅周辺や駅地下でお店巡りでもしませんか?」

「なんでだよ」

「車出しますか?」

「よしなさい、陳くん。タクシーやバスもごった返して、道路も込んでいる。渋滞も嫌いじゃないですけど、駅の方が色々あって楽しめるじゃーないですか。なにより、歩けます。人は歩いてナンボです」



嫌なことあって、嫌になる気持ちは事実である。

取り急ぎであれば、かなり焦ってはいるんだろうが、



「私は仕事、早いんで」

「暇持て余しているわけな」

「余裕持ってる~」


そーすればいい。そーできればいい。

そーしてないなら、そーやって人や何かに言う事をしなければいい。



『この度は人身事故、信号トラブルの影響で列車が遅れてしまい、大変申し訳ございません』


五月蝿いけれど、それだけ謝ると伝える気持ち。


「下っ端はよく頭下げれて良いですね。まぁ、小事ですけど」

「その言い方はなんだ?」


気持ちがなんだ?って済んでしまうが、事実なんでしょーがない。

自分が悪い時もあれば、避けられないことや他人の時もある。自分だとすれば、とてつもない罪悪感もある。



ピリリリリリ


「もしもし、伊賀ですよ。どなたですか?」

『あ、伊賀さんですか。私、警察の者でして』

「ほうほう。警察がなんのようで?」

『お伝えし辛いんですけど、……あなたの会社に勤めておられる方が、○×電車で飛び込み自殺でお亡くなりになって、遺書もその場に置いてありまして……』

「……………」



やっばいですね……。

自殺しろって、命令を下しましたが、列車の飛び込みをやりやがったんですか。しかも私達が乗ろうとしている電車でやるとは……。

なるほど、だから私に足跡が着ましたか。ここは仕方ありません。


「えーーっ!?あいつが、そんなことを!?冗談ですよね!冗談ですよね!?そー言ってください!!私とあいつは、上司と部下という完璧な主従関係だったんですよ!!そんな馬鹿な!!」

「すげー切り替え。演技力だな……」

「電話だと分からないけれど、こーして見ると白々(しらじら)しさしか出て来ないけど」



ピッ



「さて、急いで国外逃亡をしましょう。予定変更です!!」

「早っ!!」

「私と王を信頼してください。あなたのボディガードですし。地元警察くらいからなら、護れますよ」

「じゃあ、そうしましょうか。この近くにあるカフェテリアに行きましょう。調べました」

「早っ!!」


人とは弱いものだ。いや、ホント。社蓄の素晴らしさを1週間は語りたい男が、命令1つで社蓄に混乱を来たす真似をしでかしてしまい、駅の構内放送使って謝罪したいくらいだった。

そんな恥をホントにやるわけなく、その感謝を2人にお伝えする。


「ありがとう、陳くん」

「…………どーいたしまして」


意外な一面。

かもしれない。人を頼り、御礼を言われる事に。


「珍しいな、伊賀」

「そーですかね?王くん。あなたには感謝してませんけど?」

「うざっ。嘘くせぇし」


3人は歩いていく。目的地はゆっくりできそうな、カフェ。当然。伊賀の奢りだ。


「1人でなんでもするとか思ったわ」

「いやいや、そんなわけないでしょ。私も困った時、誰かを頼るものですよ?」

「感謝。珍しい」

「またまた。……落ち込んだ時。しょーがないんですよ。塞ぎこむのも仕方ない。私も例外じゃない」



この遅延の真相を分かっている人は極数名しかいないが、どうあれ伊賀もまた人と変わりはしない。


「感謝っていうか……。”ありがとう”と言って、言われて。こーいう事を乗り越える土台を作るんです。すぐに死ぬわけじゃないですし、ね!さぁ、落ち込みはここらにして、飲みましょう。食べましょう!」

「人はそう簡単にはなれないけれど」

「感謝されて、感謝するのは。大事な事だよね」



危ない連中でも、普段の人達とそう変わらない。人間心であった。





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