表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/70

海神龍を討伐し、帰還する

 ステータス数値で一番気にすることがないのはHPだと俺は思っている。

 所詮俺達生物は生命体だ。モンスターなら核だが、人間ならHPに関係なく、脳か心臓を破壊されたら死ぬ。

 実際はHPを減らして臓器の回復やら痛みを受けて血を流しても生命力で即座に止血して血液を増やそうとするが、致命傷を受ければ別になる。

 HPかMPを消費して瞬時に回復するリカバリー系のスキルがあるのなら別だが、そんな激レアスキル滅多にない。

 一気にHP0に減っていくというのか、つまりは、HPという数値は、過信できない数値だった。

 

 リヴァイアサンのHP的に、これでもまだダメージ量としては半分も削れていないだろう。

 しかし、肉体を両断され、かなり短くなった頭部の部分から、肉体を再生させようとしている。

 その肉体を、俺は剣を振るうことでバラバラにしていく。

 すると、その海龍の頭部から膨大な光が発生し、その衝撃で俺は後方へと吹き飛ばされた。

 思わず、水上へ泳ぎ、状況を確認しようとする。


 俺の背中を、なにか柔らかいものが当たった。

 いつのまにか潜って俺に迫っていたロマネが俺を抱きしめて、水上にあげてくれたみたいだ。

 防具ごしとはいえ、かなりの弾力のあるおっぱいに意識が行くが、ロマネはそれどころでないほどに高揚している。

「よかった! さっき一瞬君の魔力が消えたからな!! やられたのかと心配してしまったよ!!」

「魔力が消えた?」

「ああ、私の魔法剣士(ジョブ)は周囲の魔力を把握できるのだが、水中に入った瞬間いきなり消えたからな!」

 俺は瞬間移動を水中では使っていない、使ったのは透明化だけだ。

 すると、透明化は気配や魔力などといったものも全部、消せるということなのか?

 意外な利便性に驚きながらも、先ほど海龍が居たところに目をやる。


「そして……ようやく、私にも……美しい……」

 ロマネが感極まった声をあげた。

 青色の光り輝いている大きな結晶体。これが海龍の龍核という物なのだろう。

 ……これ喰ったらどんな味がするんだろうな。

 いや待て、刹那的な考えで全てを台無しにするな。

 俺を抱擁から解放し、龍核をマジッグバッグである結晶体よりも小さなポーチに入れたロマネは、俺に笑みを浮かべてくる。

「ありがとう、これでこの都市は更に発展するだろう!」 


「それににしても、ソウマは強いなー!!」

 船をポーチから出して、それに乗れば、隣まで来ていたロマネに肩をバンバンと叩かれた。

 赤くて長い髪を束ねていたのを外し、ファサッと風になびいて俺の頬をかすめる。いい匂いがしてドキリとするしかない。

「ぶ、武器がよかったからな」

 俺は正直に感想を漏らした。

 絶刀による威力強化もあったとはいえ、あまりにも軽々と両断できたのは、この銀の刀によるものだと思うしかない。

 一体なんなんだ、これをくれるのか? と銀の刃を眺めていると。

「ああ、それは一族の家宝でね。あらゆる加護を断ち切れる効果があるんだ」

「……いや、そんなん渡さないで下さいよ」

「私が持っているのは速度重視、君のは威力重視だ。二刀流で戦う祖先が居たらしい」

 とんでもねーな、ドラゴンキラーの一族ってのは。

 そんなことを聞いたら、これを貰うことはできない。

「これは貰えません」

「そうか? いや、君は命を救ってくれたんだから……いや、そうだな……」

 最初は本気で渡す気だったのか。俺が驚いていると、何か納得した風な反応を見せてくる。

 ……なんだ?

「どうせこの後ああなるか、なら、それが使われなくなるかもしれないし、うん、やっぱり剣は返してもらおう!」

「はぁ……」

 あの後? 

 俺は何もするつもりはないのだが、何かをさせようというのだろうか。


 一応聞いておくべきか。

「あの、これで俺達は館を入手して、のんびり生活ができるんですよね? もう何もする気はないですよ?」

「あっ、ああ!! それはそうだ! もう私達(・・)からは君達には関与しない。君達が困っていたら、命の恩人だし、助けることは約束するけどね!! 武器ならあの館にもあるはずだ。もしかしたら、この剣よりもいいのがあるかもしれないという意味さ!!」

 よし。それならこれで一件落着だ。

 というか、館の中に武器があるのか? 前の主の物だったりするのだろうか?

 そういうことは、戻ってから館の話になった時、ミーアと一緒に聞いた方がいいな。


「それじゃ、帰りましょう」

 この魔力船を動かすのは操作機を持っているロマネだ。

 装備を外してその機械を持てば俺にも使えるのかと聞きたかったが、もし壊したら俺達はかなりの距離をこれなしで移動しなければならない。

 最悪、瞬間移動のことをロマネに話す気でいるが、そんなリスクを負うぐらいならば、動かしたい魔法具のことを諦めるぐらいはできる。


「ああ。だけど、その前に」

 ロマネがいきなり上下共に赤色の少し透けている下着姿に変わる。

 装備状態を解除したのだろう、先程までの装備は右手で握られていて、それをポーチに入れていた。

「はあッッ!?」

 さっきも見たけどさっきは距離があったが、今回はほとんど隣り合わせの距離だ。

 ロマネは俺よりも少し背が高いので、目の前には壮大なおっぱいが見える。

 胸に意識を向けていることに気付いているはずだが、全く動じずに笑ってみせた。

「はっはは! 装備が血で汚れたからな。変えようと思っただけだ! だが、ソウマのような強者なら、今この場で子作りを行なってもいいぞ!」

「本気で行ってるんですか!?」

 最初、ローファはご主人様にして欲しい、ミーアは嫁にしてほしいだったが、ロマネはそれすらすっ飛ばしてきたぞ。

 冗談だろと思っていたが、なんかそんな気はしない。これはマジで言っている。そんな気がする。

 動揺しまくりな俺に対して、ロマネは下着姿のままで首を傾げた。

「不満か? いきなり過ぎたが、私はまだ処女だ。龍王を私は初めて倒せた、ソウマと二人きりでだ。これは運命なんじゃないかと思っているのだが、どうだろうか?」

「いや、どうだろうかって……」

「場所も場所だぞ! こんな誰も見ていない大海原で野外で行為できるだなんて、物凄い開放感があるとは思わないか!!」

 それは思う。

 しかし、俺には待っている嫁予定の子が二人も居るのだ。

「俺には待ってる人が居るので、そういうことをする気にはなれません。服を着て下さい」

「その割には残念そうな顔を浮かべているな……まっ、それもそうか!」


 服を着替え、魔法舟で帰ってきた俺達は、応接室の扉を開けた。

 広い大部屋で心配そうに待っていた三人だが、真っ先に声を出したのはミーアだった。

「なんでロマネの服が変わってるの!?」

 そうだよな。普通そこを言うよな。

 ミーアの叫びに気付いたのか、ヒメナラは俺をゴミでも見るかの如き眼差しを送り、ローファはしょんぼりとしている。

「や、やっぱり、ソウマ様は胸が大きい方が好きなんですね」

「そうだな! 下着になった私の胸をじっと見てたよ!!」

 ローファに追い撃ちをかけたロマネに、俺は叫ばずにはいられない。

「ち、違うから! 海龍の返り血を受けてたから、着替えただけだって、俺とかかなり濡れてるだろ!?」

 俺はロマネの前で下着姿になることに抵抗を感じたし、別にいいかと思っていたのでそのままだったことが生きたな。

 ローファは納得して落ち着きを取り戻したが、胸を凝視したことについて否定をしない、ミーアとヒメナラはジト眼で俺を眺めてきていた。


「そんな些細なことはどうでもいい! これを見てくれ!!」

 自分の下着を俺に晒していたことを些細と言い放って、ロマネはテーブルの上に龍核を置いた。

 その神々しい輝きを、ミーア、ローファ、ヒメナラが驚愕の表情で眺めている。

「倒したのね!」

「流石はソウマ様です!!」

「ええぇっ……ホ、ホントに倒したの? ひえぇぇ……」

 ミーアとローファは喜んでいるが、ヒメナラはドン引き、というような表情を浮かべていた。


 そして、龍核を戻し、ロマネとヒメナラは応接室から出て行く。

「これで、館が手に入るな」

「どんな館なのか、楽しみですね!!」

「ロマネは約束を破らないだろうけど、なんかここまで順当に進んでいると、怖い気もするわ……」

「心配性だな、大丈夫だって」

 待たされること一時間ぐらい。

 景色は夕暮れになっていた。

 メインのリヴァイアサン退治は十分もかかっていないはずだが、色々と待たされたり説明受けたり準備やら移動でかなり時間がかかっているな。


 満面の笑みをしながらロマネが、その後ろでヒメナラがゆっくりと、部屋に入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ