表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/70

満身創痍の戦闘

 攻撃と速度は俺の方が僅かに勝っている以上、戦特化で身体能力を強化すれば、捻じ伏せることができるはずだ。

 だが、リアッケは体内に纏っていた白銀の光の密度を増し、俺の刀による斬撃を、刀で全て軽々と捌いてくる。


 身体能力で勝っていても、魔力値の差がデカ過ぎる!


 リアッケの奴、クラジの聖上体より光は弱いが、聖上体のようなスキルを発動しているのかもしれないな。

 俺の動きに対応してきて、リアッケの刀の刃による斬撃が肉を軽くかすり、血が噴き出てしまう。


 これは……長期戦になれば俺が不利だぞ。

 

 セレスがミーアとローファの元へと向かったのを確認し、戦特化が切れる前に、俺は三人の盾となるよう全身でリアッケを押し飛ばし、距離を取らせた。

 ミーアがマジックバックから素材を出して調合を行い回復薬を作っている。これで三人は大丈夫だろう。

 咄嗟に発動したこともあり、あまり魔力を籠めていない戦特化がすぐに切れる。

 解除された瞬間、俺は刀を鞘に戻し、上下させることで閃光型の切撃ちを連射した。

 それに対し、リアッケは刀を高速で振り回すことによって全てを容易く弾き飛ばしてくる。


 この戦い、勝機があるとすれば、リアッケのHPが低いことか。

 MPと魔力値だけかなりの差があるが、他は何とかなりそうな気もする。


 問題があるとすれば……俺のMPと、精神力だな。

 俺がミーアの元に向かって回復薬を飲もうとすれば、ミーアが狙われる可能性が高くなる。

 今、奴の意識は俺に向いているし、俺もリアッケから目を離したくない。

 

 その瞬間、全身に強い高揚感を感じる。

 セレスの結界魔法による強化か。

「結界魔法を纏わせ、で身体を強化したのじゃ……すぐに切り裂かれたから、防御面で頼りにはならぬが……」

 セレスが呟くも、いつもの堂々とした風格が嘘のように弱々しい。

 ミーアがセレスを回復しているようだが、セレスは不安げな表情を浮かべて、まるで心が折れそうになっていた。

「ありがとう!」

 お礼を言いつつ、俺はリアッケに迫ろうとしていた。

 

「その大切な存在が、貴様の敗因と化す」

 俺を待ち構えるかのように、その場に停止して力を籠めていたリアッケが、刀の刃に膨大な聖魔力を纏わせる。

 さっきから今までの間、力と魔力を溜めていたのか。

 これは、クラジの奴が切札と言っていた聖上斬撃……いや――


 発光する光が、聖魔力が比べ物にならない!?


 これは――聖魔力+天使。

 

「――天命終閃(エンド・レイ)

 リアッケが、前方に向かって、無感情ながら凛々しい声で呟く。

 刀を前方に振り抜き、膨大な光の閃光が、俺達に迫る。


 瞬間移動で回避すれば背後の三人が食らうこととなる。

 セレスとミーアは距離が近いが、回復し終えたローファは距離を取り、隙を突いて戦闘に参加しようとしていた。

 トランスポイントで逃げる事もできないだろう。


 ――剣盾で受け止めしかない!

  

 刀を前に突きだし、剣を盾にしてスキルで強化するも、尋常ではない衝撃を全身から受けて、意識が飛びかける。

「ぐぉぉぉぉっッッ!!」

 満身創痍だったということもあり……これは、持たない。


 ――終わる。

 そう諦めそうになっていた時、俺の肉体に活力が戻っていた。

「私の聖魔力よ!!」

 ミーアが俺に向かって聖光弾による閃光を放ったからか。

 そして更に、天命終閃の威力が弱まり、身体が軽くなる。

「わらわがこんな微力な補助しかできぬとはの……じゃが! ソウマは殺させぬ!!」

 セレスは結界魔法による結界で、リアッケの閃光を防ごうとしているのか。

「同じです!」

 そう叫ぶローファが前方に風と雷魔法による竜巻を大剣の刃から放ち、閃光に抵抗する。

 

 ――これなら、ギリギリ防ぎきれる。

 そして、結界が何度も砕け散りつつも、閃光が消失した瞬間。


 リアッケが一瞬で俺の元に詰寄ってきた。

 あまりにも速く、魔力と気配が一瞬で膨れ上がり、リアッケが現れたことから、瞬間移動によるものだと理解が出来た。

 それによってリアッケがほんの一瞬だけ無防備になっているも、俺は天命終閃の衝撃によって、動くことができていない。

 いや、こんな行動、瞬間移動の弱点を知っていたら、普通できないぞ。


 この野郎、リスクを覚悟でやってきたのか!?

 しかし、俺が明らかに疲弊し、満身創痍なことを考えると、リアッケが瞬間移動を態々使う意味は――

「ソウマ!?」

 背後で、皆が俺の名を悲痛そうに叫んだ。

 天命終閃の衝撃もあって、俺はリアッケの攻撃が対処できない。

 疲弊によって意識が途切れ途切れで、瞬間移動をする位置を意識することもできていない。

 リアッケが刀を振り下ろし、刃が俺に迫ろうとした瞬間。


「この時の為にッッ!」

 加速線のスキルで加速したローファが、全身を使った魔纏雷撃による振り下ろしを放ち、それがリアッケの肉体を破壊し、吹き飛ばす。

「――私は強くなりました!」

 その声を聞いて、意識が朦朧としながら、俺は目頭が熱くなっていた。

 追放される前、辛い時に優しくしてくれたミーアに対しても、こんな風になっていたことを思い返す。

 意識を失っている場合ではないと、俺は強く決意した。

「ああ、一緒に戦おう!!」

「はい!」

 俺の切撃ち、ローファの魔閃が放たれ、吹き飛んで起き上がろうとしたリアッケの肉体を抉る。

 

 天命終閃をもう一度撃たれたらマズい。

 撃たせないようにするには、力を溜める動作を行なわせないことだ。

 なら、とにかく攻撃するしかない。


 切撃ちと魔閃を連射していると、リアッケは肉体を回復させながら、がむしゃらに俺達の斬撃を弾き飛ばしてくる。

 その表情には、焦りが見えた。

「……テニフィス様の姿で、ここまで無様な姿を……ここまでぇッ!!」

 今まで無機質だったリアッケが、感情を昂ぶらせた叫びをあげる。

 

 俺とローファは距離が近い、ローファが狙われるのは危険だ。

「……ぜぇ、意味不明な眼鏡をかけやがって、何の冗談だよ」

 だからこそ、俺は、軽く挑発することにした。

 この言葉でキレるか微妙なとこだが、ローファよりも俺を狙ってくれればいいし、冷静さを欠けばカウンターを決めやすくなる。


 老化ならともかく、視力は大聖魔法のスキルを刻み、かなりの魔力を使う回復魔法で治すことができる。 

 それを使えるのが一部ということもあり、全員を治すことは出来ず、眼鏡をかける者も居ることは知っている。

 だというのに、天使の癖に眼鏡をかけているのが全く解せず、俺はリアッケに向かって言ってやった。


 それを聞いたリアッケは、わなわなと全身を震わせて。

「テニフィス様を……テニフィス様を侮辱するなぁぁ―――ッッ!!」

「ローファは離れてろ!」

「はい!」

 俺とリアッケの声はほぼ同時で、ローファが俺から距離を取る。


 リアッケが感情を昂らせ、俺に斬りかかってきた。

 これでカウンターの絶刀が決めやすくなって――


 リアッケの動きが想定していたよりも速い!?

 俺は反射的に戦特化を発動し、攻撃を対処しようとしていた。

「天界で最も偉大なのはトクシーラ様でもアルダ様でもない! テニフィス様だ! それを貴様に思い知らせてやる!!」

 刃を交わしつつ白銀に輝くリアッケが叫び、僅かに速度で勝った追撃が対応できない俺の肉をかすめる。

 今までは防御に意識を割いた攻撃だったが、今回は完全に攻撃することしか、俺の肉を抉り飛ばすことしか考えていない動きだ。

 意識が朦朧としていることもあり、振り下ろし、横薙ぎの刃を俺は捌き切れていない。

 斬られた瞬間に肉体は聖魔力で回復しつつあるが、結界魔法も切り裂かれ、補助をしてくれているセレスとミーアもかなり疲弊している。


 俺は、この斬り合いで理解することができた。


 攻撃に意識を集中しているとはいえ、リアッケは最初の斬り合いの時より少し早い程度だ。

 俺の攻撃を回避する為に、少し余力を持って攻撃し、今は余裕を持たず全力で攻撃に当たっているが、それでも戦特化を発動し、ミーアとセレスの補助を受けている俺なら対処できる。


 それは、俺が万全の状態なら、だ。 

 俺がもう、限界だった。


 結界と聖光弾によって身体を強化され、ステータス以上の力を引き出していることもあるのだろう、精神力が途切れそうになり、回復と攻撃に魔力を費やしているから、MPも1割を切っているだろう。

 ローファも攻撃に俺を巻き込む可能性があるからか、少し距離を取って、じりじりと様子を見る事しかできていない。


 もうそろそろ、戦特化が切れる――。


 そのタイミングに合わせて、俺は更にリアッケを挑発する。

 これ以上の戦いになれば負ける、勝機があるとすればここだろう。

「大したことねぇな、テニフィスって奴もよ!」

「貴様ぁぁッッ!?」

「な、なにを……」

 息を切れ切れにしながら、俺に身体強化の結界魔法を何度も張り続けているセレスが、解せない声で呟いていたが、俺は言葉を続ける。

「スコア序列五位だったか、セイラーンの方が強く見せるぜ!!」

「殺す!! 貴様は、容赦なく……」

 俺はリアッケの背後を取ろうとするが、すぐにリアッケは踵を返して対処する。


 ――この位置でいい。

 戦特化が切れた瞬間、俺は二重加速で後方へと二度加速をして、リアッケと距離を取った。

「逃がすか――!?」

 そして、リアッケが瞬間移動を使い、背後から俺を攻撃しようとした。


 そうだよな。

 冷静さを欠いたら、一番手っ取り早い方法を取るよな。

 俺がそうだったから、瞬間移動を使えるリアッケの思考が、何となく理解できていた。

 さっきもそうだが、意識を集中させれば、勘で何となく解るってセイラーンの発言は本当だった。

 奴が天命終閃を放った時、瞬間移動で俺に接近してきた時から、もしかしたら、リアッケは瞬間移動の弱点を知らないのではないかと考え、俺はこの機を狙っていた。


 推測通り、この天使は今まで誰かと殺し合いをしたことがないのか、戦闘時における瞬間移動の弱点を知らなかった。


 瞬間移動を行なったリアッケがほんの一瞬だけ無防備になり、動作を行なうより速く、直感スキルによって位置を完全に把握していた俺が先に動く。

 戦特化で強化して踵を返し、刀の横薙ぎ、振り下ろし、突きによる連続攻撃を与えるも、吹き飛ばされたリアッケは起き上がりつつ肉体を修復していく。


 そしてリアッケは、迫る俺に反撃として白銀に輝かせた刀を振り下ろそうとした。

 俺は直感スキルによってカウンターとしての絶刀を使い、物凄い衝撃を響かせながら刃を交える。


 再生に聖魔力を使っていることもあり、刃の聖魔力がさっきより遙かに弱い。

 

 俺は絶刀(これ)を撃ったら、もう動けないぞ……。


 絶刀は攻撃を弾き飛ばし、リアッケがその衝撃を受けて肉体を砕け散らせながら倒れ、聖魔力で全身を再生させようとしていた。

 そしてローファが、リアッケに迫る。 

「――魔纏雷撃!!」

 全身を使っての豪快な稲妻を纏った大剣によるローファの大振りの一撃を、リアッケが受け止めようとするも、防御が間に合わずに直撃し、リアッケの全身が粉々に砕け散っていく。


 まだリアッケのMPが残っていれば、回復し、俺の様に瞬間移動を使った戦い方を学んでいただろう。


 俺も相当満身創痍だが、どうやらリアッケも、ローファ達との戦いでかなりHPを、その回復にMPを消費していた様だな。

 焦っていたのはこのせいか、挑発せずとも勝てたか、いや、どうだろうか、もう解らないな。

 

 ――この戦闘は、皆の勝利だ。


 こうして、エルフの里での戦闘が、終わりを迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ