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トリプル・キャット

 トウ達と共にダンジョンに潜ってから三日が経つ。

「な、なんだ……これは」

 俺は、目の前の光景が、幻なのではないかと疑う他なかった。



side・ミーア

 

 三日前、ソウマがトウ達の元に向かった時、ローファのこの一言から全てが始まった。

「ソウマ様は大変疲れて帰ってくると思います!!」

 ロマネは帰って、館にはミーア、ローファ、セレスの三人だ。

 少し遅めの昼食を取っていると、唐突にそんなことをローファが言い出したのだ。


 それに賛同するのは、セレス。

「ふむ……確かにの、世界最強クラスの二人とダンジョン攻略は、精神的な疲労をしそうじゃの」

 修行も、ここ最近は数時間程度であり、後は技術的なことを学んだりしている。

 ローファはもう様々なモンスターを狩ったりしたいので、ソウマの瞬間移動で色々な所に行く方がいいかもしれないとまで言われていた。

 ミーアに関しては同じ魔法タイプの職だからか、じっくりと鍛えられている。

 調合による薬を試したりもしていて、ローファと比べたら遅く感じるだけで、ステータスの伸びはかなり良いらしい。

 セレスも同じくミーアのステータス強化薬を試しているので、僅かだがステータスが伸びているようだ。

 

 ステータス強化薬は同じ調合の薬だと一回目だと効果があるが、二回目の使用からは一気に効果が落ちち、一切上がらない時もある。

 素材もレアなので、まだ試していないのは集める必要があるとセレスは言っていた。これもソウマの瞬間移動が必要となるだろう。

 本人はのんびりしたいと言っているが、こう何度も頼っているのだから、何か力になりたいと、ミーアも思ってしまう。


 といっても、疲労回復の薬は欲しいときはすぐに作っているし、ソウマはいつも幸せそうでもあった。

 ミーアは少し悩みながら、正直な感想を述べる。

「ソウマは私たちと居るだけで、結構楽しそうだけど……」

 それ以上のこととなると……あの事になるだろう。

 しかし、ソウマがローファの里に挨拶してからだと言っているし、ミーアも結婚後にすると決めている。

 

 セレスも同じ気持ちなのか、僅かに悩んでいた。

 ……いや、違う。

 色々とやりたいことはあるが、それをソウマが受け入れてくれるか悩んでいるのだろう。

 あの時、セレスのベッドの下にあった本を見ていると、ミーアはそんな気しかしてこない。

 そして、何かを思いついたのか、ローファがどこかにタタッと向かったかと思えば、すぐに大部屋に戻ってきた。

 

 ――奇妙な、衣装のようなそれを持って、ローファが笑顔で告げる。

「ソウマ様は、これを着た時、大変喜んでおられました!!」

 それを見て、セレスとミーアは唖然としてしまう。

「な、なに……それ……」

 その衣装を着たローファと、それを楽しむソウマの光景を想像し、ミーアは顔を赤くする。

 隣を見ると、自分が着た姿を想像しているのか、光悦の表情をセレスが浮かべていた。


 ミーアの反応を見て、衣装が理解できないと察したのか、ローファが説明する。

「はい! これはソウマ様が依頼して作ってもらった、猫の服です!!」

「それは、見たら解るけど……」

 ローファには着せてミーアとセレスには黙っていた辺り、二人は着ないだろうと思っていたのだろうか。

 胸と腰と太腿ぐらいまでを隠した、毛皮がついている衣服だ。腰の部分には尻尾まであり、猫耳のカチューシャもついている。

 毛皮は黒だというのに、その猫耳カチューシャだけは髪に合わせた青な辺り、こだわりを感じるしかない。


 ミーアはこの姿になった自分を想像し、首を左右に振るう。

 セレスはかなり悩んでいるかのような表情を浮かべていた。

 流石にセレスでも許容範囲外だったのだろうか?

 ぶつぶつと何か呟き、隣に居たミーアには聞こえる。

「この衣服なら……美幼女の方がいいか……?」

 違う、着る気満々だ、どの形態がベストなのかを想像しているぞ。

 

 そして、ローファの発言で気になったことがあったミーアは、聞いた。

「……ローファ、大変喜んでたって、ど、どれぐらい?」

 そして、それが言いたかったのか、ローファは勢いよく力説する。

「はい! それはもう甘々でした!!」

「あまあま」

 ただでさえローファを毎日撫でたり一緒に寝たりしているソウマ。

 それが更に甘々になるのか、どれ程のものだろうか。


「ぐ、具体的には?」

 妄想しているミーアより先に、そわそわしながらセレスが聞く。

「書庫にあった「シチュエーション、甘え編」の本の、23、24、26」とかです!」

「うわぁぁぁぁっ! いいなぁぁぁ~~!!」

「そんな本がここにはあったわね!」

 羨みの声を全力で漏らしたセレスを見て、その本はタイトルだけ確認したことがあるが、見て見ぬふりをしていたミーアが、本の内容が気になったので書庫へと駆け出す。

「持ってきて欲しいのじゃ!」

 いきなり大部屋から出ていこうとしたら、セレスの叫びが聞こえたので、ミーアが手を上げながら書庫へと向かっていた。


 その本は、参考書の棚にあった。セレスは自作で妄想の本を書いていたし、参考というのはそういう意味なのだろう。

 女性が猫のコスチュームを着て、語尾に「にゃん」とつけながら、イチャイチャするという内容が20番台だ。

 27以降は言わゆる行為に入る為のものだから、行わなかったということか。

 しかし、全身を撫でまわすとか、一緒に抱き着いてゴロゴロとか、それはもうイチャイチャとしていた。

「――ミーア、わらわは決めたぞ」

「えっ?」

 少し頬を赤らめて、セレスが決意する。

「わらわもこの服を着る! 今日頼んでくる! ミーアはどうする!?」

 ローファがニコニコと二人を見ていて、セレスはやる気満々だ。

「えっと、えっと……」

 どうするべきか、ミーアは悩んでいた。



 ダンジョンに行って、身体能力に特化されていた謎の鬼人に殺されかけて三日後。

 俺はずっとそのことを気にしながら、三日間を送っていた。

 朝食を終えて、適当に遊んで、昼食を食べようと館に戻った時、大部屋にそれはあった。

「な、なんだ……これは……」

 俺はそれを目の当たりにして、唖然とした声を漏らすことしかできなかった。


「お帰りなさい! ソウマ様!」

 ローファはいつも通りの発言だが、姿は前のような黒猫の姿だ。

 青髪短髪の小柄でエメラルドグリーンな大きい瞳をした可憐な少女が、黒猫になっている。

 白い肌が眩しい、昼食もこの姿で作っていたのだろうか、ちょっと危ない気がする。


 ローファは一度見たことがあるから普通に受け入れていたが、気になるのはセレスとミーアだ。

 まずセレス。白髪のロングヘアー、金と赤のオッドアイが煌めく、抜群のプロポーションを持つ美少女。

 スキルで身体の時間を操作でき、このコスチュームなら美幼女姿でくるのかと思っていたのだが、美少女姿だった。

 たわわな胸が全く隠れていない、どういう猫だよと思うしかないぞ。

 毛皮で少し隠れているが、隠しきれていない谷間が非常に暴力的だ。

 赤毛皮の猫、猫耳は白と俺のツボをちゃんと心得ている。完璧だ。

「ど、どうじゃにゃん♡」

 セレスの口調+語尾ににゃんはもう無茶苦茶だな。

 でも、それがいい!


 俺は破壊力マシマシの猫セレスを眺めながら、ミーアに目をやった。

「セレスは素晴らしいな……で、ミーアはっと」

 ミーアは、ビクリと、身体を大きく震わせる。

「な、なによ! ガッカリしたの!? 肌を見せるのは結婚してからでいいでしょ!!」

 素肌が眩しすぎて俺の神眼が砕け散ってもおかしくないローファとセレスだったが、ミーアは健全だった。

 …………健全か?

 白いぴっちりとした服を全身に来ている、色んな飾りがなくなった法衣のようだ。

 色んな所に白い毛がついている。猫耳カチューシャは髪と同じ黒、オーケー。

 美少女姿のセレスと同じ背丈で、胸はセレスの方が大きいが、ミーアはミーアで素晴らしい魅力がある。

 白猫ミーアだ。

 これはこれで胸の形がくっきりとよく解るし、中々にエロい。

  

 なんだこれは、一体何が起こった?

 立ち尽くし、全身の震えが止まらない、感極まると俺はこうなってしまうのか。

「教えてくれ……俺はなんて言えばいい……」

 感極まって泣きそうになっていた俺を、三人は満面の笑みで見ている。


 猫の服はローファならいけるも、セレスとミーアは断られるかもしれないと恐怖していた。

 諦めていた。

 本当は着せたいって願望を、必死の想いで堪えていた。


「効果はあったようじゃだにゃん♡」

「三日前にダンジョンに行って疲れているかもって、ローファが言ったのよ……に、にゃ、にゃん……」

「ソウマ様! どうですかにゃん♡」

 頬を赤らめながら、セレスはとりあえずつけておこうという感じでにゃんがつき、ミーアは語尾ににゃんをつけるのが恥ずかしいのか、羞恥で顔が真っ赤になっている。

 ローファは完璧だ。

 凄いな、三人にそれぞれの魅力がある、素晴らしい。


 真っ先に言うべきことは、これしかないだろ。

「ありがとう!!」

 癒されていく、もうダンジョンのこととかどうでもいい。


 この日、俺は三人と楽しく過ごすことにした。

前回で第二章が終わり、この話から第三章です。


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