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心配される

 ギルドに戻るのは、トウ達が乗ってきた魔法船を使っていた。


 どうやらトウのものらしく、セレスよりやや小さいが、スラッとした形で中々にカッコいい。

 俺の瞬間移動スキルを隠すためでもあったが、トウには色々と上剣士について聞いておきたかったというのもある。

 そしてその会話に混ざりたいのか、色々と龍の伝承を話し合い、船の速度はのんびりしたものになっていた。

 エルドはかなり会話をしたがる性格であり、それが基本会話できないトウに合っているのだろう。

「さっきの戦いだけど、共鳴によるものなのかどうかは解らないが、戦特化は最高に悪手だったな。魂に刻んでいるスキルと所持しているスキルが使えなくなる……つまり、水魔法を魂に刻んでいたら、戦特化を使った瞬間に海面にドボンと落ちていたと言うことだ」

「それは最高にダサいな!」

「がっはは! だが、それはそれで隙を作れるのではないのか? あまりにもマヌケが過ぎる!」

「ああ、俺も手元が来るかも知れない、惜しかったかもな」

 この中で一番楽しそうなのはトウだ。

 冗談混じりに色々と話してくれる。

 なにが寡黙剣士だよ。

 俺も魂喰らいは気にならない程度であり、談笑することができていた。


 特に上剣士についてのことは、かなり参考になっている。

 剣技スキルについて話す。極識斬撃は間違えて使ったら溜まったものではないから使う気はないと言うと、あのスキルは全ての力を解き放つ感覚で放つようで、暴発したりはしないらしい。

 そんなのをエルドに放とうとしていたのかと驚けば、エルドはエルドで世界を震撼させる力を放っておったと告げてきやがる。

 マジで世界が震撼するだろうと、色々とヒヤヒヤするしかなかった。


 エルドが話したがっていたので、龍についての話にもなった。

「つまり……今まで倒された地神龍と海神龍は災害を起こしているから気にしてないけど、他の五大龍は関わらない限り被害が出ないから、倒したら龍に喧嘩を売ったということで問答無用で戦えるってことか」

「一応、そういう決まりになっておるから、倒されるのを楽しみにしていたりもしている」

 龍を統べる者がそれでいいのかと思ってしまうが、エルドは続けた。

「残すは火神龍・木神龍・天神龍・雷神龍・邪神龍だな」

「俺は天神龍ぐらいしか知らないな、ガサリデ山に居るんだろ?」

 セレスから聞いただけだが、うむとエルドは大きく頷いた。

「そうだ。奴は神龍の中で最も美しいからな! ガサリデ山は命を賭ける価値のある観光名所扱いもされておる!」

 セレスの仲間がペットにしたい程だったか。

 そこまで言われると一度見てみたい気もするが、色々と危険過ぎるか。

 危険には近づかない方がいい、もしでエルドと戦うことになったら大惨事だ。


 五大龍の話を聞いていると、トウが入ってきた。

「俺は雷と邪以外は見たことあるけど、残り二体はどこにいるんだ?」

「雷神龍は天神龍よりも高い所だ。世界中を行動範囲としているから、会いたいと飛行する魔道具を使わない限りは一生かかっても拝むことはないだろう……邪神龍は魔界に生息している。五大龍最強の存在で我の次に強い龍だ。ステータス値にすれば地神龍や海神龍の3,4倍ぐらいだったか、確かそれぐらいなはずだ!」

 軽々しくとんでもないことを言ってくるな。

 確かリヴァイアサンは5000ぐらいだったから、15000~20000ぐらいということか。

「魔界でも上位に位置する強さらしいし、人にもなれるようだが、我はあんまり関わろうとしないからな! 我が龍帝というのも、龍で一番強いからということだ! 人間に被害をあまり出すなというルードヴァンの命令を守っている。ある程度は我慢してもらってはいるがな!」

 今までの発言も大概だったが、とんでもない人名が平然と出てきたことに、俺は驚くしかない。

 スコア序列一位、大魔王ルードヴァン。

 実在すら怪しい存在を、エルドは知人でもあるかのように話してきた。

「ルードヴァンに会ったことがあるのか!?」

「俺も初耳だ……というか、実在していたんだな、大魔王ルードヴァン」

 俺が驚愕していると、トウも驚いているようだ。


 エルドが自慢気に、俺とトウに話す。

「ははは! 凄いか! 羨ましいか!」

「いや……」

「会いたくは、ないかな」

 俺とトウは同じ意見だったようだが、エルドは高らかに笑う。

「ははっ! それもそうか。奴は我でも敵う気がしなかった。我と同じぐらいの背丈で、黒いフードを纏っているが気配が尋常ではなく、何故か簡素な木の仮面をつけたよく解らぬ大男だが……生まれて初めて、戦いたくないと実感した存在だったな」

 そこまでか。

 簡素な木の仮面というのは、伝承にも描かれている通りのものなのか。

 あんなただの顔かどうかも怪しい簡素な面はふざけているのかと思ったものだが、真実なのならその通りに描く以外なかったのだろう。

「会ったのは二度か……数百年ほど前に一度、龍帝として我を世界の龍に知らしめ、役割を与えたのと、数十年前に一度、被害を出すなと忠告されたこと、我も人間の強さを認めている。だからギルドへと向かったのだ」

 エルドがギルドに入っていたのがよく解らなかったのだが、ルードヴァンの忠告を受けたからなのか。 

 色々と話を終えて、地上まで到着した俺達はキリテアのギルドへと向かう。

 ギルドに入り、案内を無視して応接室に向かうはエルド。

 受付を無視するのかと聞いてみたら、Sランクは何でもありだからと告げてくる。

「そういうものなのか」

「ああ、Sランクはなんでも許される!」

 なんでもではないだろうに。

「…………」

 街に着いてから、トウは先程までの饒舌っぷりが嘘のような寡黙っぷりで、どこか寂しそうだ。

 ノックして扉を開けると、緊迫した表情を浮かべたロマネとヒメナラが居て、俺を見て物凄く安堵する。

「よ、よかったぁ……コホン、まずソウマよ、さっさと帰るべきだ。皆がかなり心配しているはずだからな」

 真面目な表情を浮かべるロマネに、俺は頷く。

「ああ、じゃあなエルド、トウ」

「うむ、楽しかったぞ、また会おう」

「……また」

 頷くエルドと、どこか寂しげに、軽く手を振うトウ。

「なんでそんなに仲良く……い、いや、驚くまい……冷静になれ……」

 なんか俺達の関係性が全く理解できていないロマネを放置して、俺は応接室から出る。

 そのまま人気のない所まで急いで、辺りを確認してから瞬間移動で館へと向かった。


 瞬間移動で大部屋に到着すると、明らかに不安げな二人を確認でき、二人は表情がパアッと明るくなっていた。

「ソウマ様!」

「無事に帰ってきてよかったわ……セレスはどうしたの?」

「えっ?」

 そういえば、セレスは何処に行った?

 トランスポイントの移動からロマネの元に瞬間移動をしている。

 となれば、推測になるのだが。

「別の所で待機してる……ちょっと探してっ!?」

 ミーアとローファが見えない位置で、何かが俺の背中をぐりぐりと蠢いた。

 振り向くと目玉が一つあり、縦にシュッと動いたかと思えば、どこかへと向かっていく。

 天眼で俺を確認したから、心配しなくてもいいというサインなのだろう。


 この大部屋のどこかに潜んでいたのは、心配した二人がどこかに向かう可能性を考慮したからなのかもしれない。

「……どうしたの?」

 唐突に驚きだした俺に、ミーアが聞いてくる。

「い、いや……セレスはトランスポイントでロマネの所に行っててな、暫くしたら戻ってくると思うぞ」

 その発言に、ローファとミーアはホッと安堵していた。

「そうですか、二人共無事で何よりです。トウさんとエルドさんの戦いはどうでしたか?」

 ローファはワクワクした風に聞いてくる。

 スコアのことは教えていないが、世界最高峰の二人が戦うと言われれば、気になるしかないだろう。

 

 最初のエルドとトウの戦闘について話していると、セレスが館の扉を開けた。

「帰って来たぞ! ソウマ、あれからどうしたのじゃ?」

「おかえり……結構大変だったみたいね」

 ミーアとセレスが安堵している中、俺は話を続ける。

「ああ。そこまでの話をいましてたんだ。瞬間移動で帰ろうとしたんだが……気付いた時、俺はトウに攻撃をしていた」

 その発言に、三人が驚愕している。

「な、なんでそんなことをしたのじゃ……?」

「エルドはスキルの共鳴って言ってたな。トウのスキルにあてられたって最初は言ってたけど」

「共鳴……」

 深く考えだすセレスに、ミーアが聞いた。

「セレスも知らないの?」

「うむ……知っておったら多分、ソウマに切撃ちを使うよう言わなかったか……いや、あれが一番早い手だったとは思うが……共鳴か、エルドは長寿じゃからの、わらわより詳しくて当然か」

 美幼女モードのまま、ソファーで胡坐をかき、全身を預けている様子はとても可愛らしい。


 色々と思案し始めたセレスを見ながら、ローファはおずおずと聞いてきた。

「あの、それで、トウさんとの戦いは……」

 ローファはそっちの方が気になっているようだ。

 負けたのだからあまり言いたくないのだが、ここで見栄を張る必要もないだろう。

 一通り話していると、三人が深刻そうな顔をする。

「完敗だったな……エルドが止めてくれなかったらヤバかったかもしれない。でも、次やったら」

「バカ! 次やったらって何よ! ソウマはもう戦う気はないんでしょ!?」

 不安げな顔から、激高したミーアに、ローファは僅かに頷いている。

「私も……ソウマ様の気分を害してしまうかもしれませんが、戦うのは、止めて欲しいと思っています」

「ローファよ、気分を害してしまうなどという言葉は使わなくてよい。それで不快になるのならわらわがソウマを殴るからの」

「あたしもね……アンタが危険な目に合ったら、どうしようもなくなっちゃうのが三人居るってのは、覚えておきなさいよ……」

 不安げなローファ、少し怒気を持つセレス、泣きそうなミーア。

 また軽口が過ぎたようだ。

 いや、負けたという報告を、三人にしたくなくて、次は勝てると言いたかっただけか。


 どちらにせよ、今回、悪いのは間違いなく俺だ。

「悪かった……そうだな、俺はもう戦う気はないんだ……だけど、今回みたいなことになるかもしれないし、対処できるだけの力は持っておきたいって思っただけなんだよ」

 俺が頭を下げると、三人はようやく落ち着いて、俺達はソファーに座る。

 膝の上にローファ、隣に美少女姿のセレス、正面にミーアだ。

 この生活を無くすということを、俺はしたくはない。

「トウから色々と聞いたからな、色々と試したいこともあるし、ゆっくり強くなっていくつもりでいる……ここを離れる気ないけどな」

 俺がそう言えば、セレスは軽く頷き、ミーアは驚いている。

「ふむ……あの寡黙剣士からか。まあ、エルドとは色々と喋っておったの」

「へぇ……寡黙剣士って呼ばれてるのに喋るのは意外ね」

 本当にあそこまで喋るというのは意外だったな。

 戦特化の使いこなし方からステータスの上げ方まで、そんなことペラペラ初対面に喋っていいのかよと思ってしまう。

 エルドは笑っていたし、トウは「友だからな」と言っていた。


 どうやら、親友同士でやり合うというシチュエーションをやってみたいとか言っていて、エルドも同意見だったのがかなり気がかりだ。

 流石にやり合うのに理由を作るとは思えないが、もう二度と、六大龍、いや、今は五大龍に関わらないようにしなければならない。


 ここまで激動の一日は久々だったなと、俺は今日の事を思い返しながら、一日は過ぎていく。

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