ローファと服を買いに行く
前回のあらすじ。
会議の話題となった中級天使ロニキュスは即座に自決したので大天使長トクシーラは理由を一切理解できていなく、上級天使アルダに調査を頼むが詳細は一切解っていない。
ロニキュスに関与した人間を調査し、保護という名の洗脳をアルダが目論むが、大魔王ルードヴァンが生物界における一切の関与を禁止させ、トクシーラがそれを受け入れて会議が終了する。
龍帝エルドは海神龍を倒した者に挑もうとするが、倒した者がロマネだと推測した寡黙剣士トウが変わりに戦うといい、戦闘場所はリヴァイアサン跡地を提案、ついでにロマネ達に挨拶をしようとトウは考えていた。
そんな前回は全部置いておいて、今回はデート回です。
地下倉庫を確認してから三日後。
俺が石喰らいを入手して一週間経ち、ようやく本来の目的が達成できていた。
ミーアとローファはセレスによる特訓を行い、俺はそれを眺めたり、一人街に出かけたりしている。
俺には何か教えないのかと聞けば、セレスは今のステータスで目的がないのなら鍛える必要はないと言われ、上剣士のスキルの書物を渡されただけであり、それを眺めたりもしていた。
それ以外に鍛えたいのなら、色々な所に出かけて、様々なモンスターを倒して来いとも言われている。
移動場所が増えれば瞬間移動可能な場所も増える。
モンスターを倒せばステータスが上がるが、同じ種類では効果が薄く、様々なモンスターを倒すことでステータスは上がると言われている。
今までが戦闘の日々だったこともあり、俺は馬車を使って遠出して、初めて見たモンスターを倒し、瞬間移動で戻ったりもした。
ミーアとローファは特訓に集中し、夕食後は疲れ果てて眠るので、結局イチャイチャする事ができていない。
俺とのステータス差を見たこともあるのだろうけれど、俺は少し寂しくもあった。
そんなことを考えたりもしていた朝、セレスが告げた。
「今日はミーアを集中的に教える。じゃからローファ、今日は一日オフじゃ」
「えっ?」
朝食を終えてすぐ、いつもなら二人を魔方陣の上に乗せたり、どこかに連れて行ったりしていたセレスだったが、今回は俺に向かってそう言ってきた。
「まー職の違いでしょうね。ごめんねローファ、先にセレスから教えてもらって」
「い、いえ……でも、いいのでしょうか?」
軽く謝ったミーアに対し、ローファは申し訳なさそうだ。
「ああ、一日である程度は教える。明日はローファを集中的に教えるからミーアがオフじゃの」
「そういうこと」
職の違いもあるのだろう。
後衛で大聖者となったミーアと、前衛で魔法剣士となったローファ。
ステータスがかなり上昇し、上級職を得たことで、覚えるスキルも大きく違ってくる。
これでもまだ伸びると言っているのだから、師匠もいいし、素質もあるのだろう。
なので、俺はローファに聞いてみる。
「それじゃ、今日は俺と出かけるか? それとも休むか?」
「一緒に出かけましょう!!」
ローファは即答だったのが、ちょっと気になったのでセレスに眼をやると、コクリと軽く頷いている。
「睡眠時に疲労を全て取り払っておるからの。何の問題もない」
それを聞いて安心し、俺はローファと共にキリテアの街へと向かうことにしていた。
俺の隣をピッタリと着いてくるローファ。
キリテアの街は遠くに五大迷宮があることもあり、非常に発展していて賑やかだ。
人ごみも多いので手を繋ぎながら、俺達は辺りをとりあえずぶらついている。
「どこに向かってるんですか?」
青く、肩まで伸びた短髪を眺めながら、俺は応える。
「ちょっとな……ところで、セレスの特訓はどうなんだ?」
ローファの質問を誤魔化しながら、俺は気になったので聞いてみる。
「はい! 痛かったりしますけど、すぐにミーアさんが治してくれます」
「痛いのか……大丈夫なのか?」
「はい。あの頃に比べれば、何ともありません」
あの頃といえば、奴隷だったという頃か。
そういえば結局このことについては俺の解除スキルが巧く働いたから完全放置していたし、セレスも問題ないじゃろと言っていたので気にしていなかったのだが、本当に大丈夫なのだろうか。
いや、何かあったらその時はその時か。
今ならセレスも居るし、並大抵のことなら対処できるという確信が俺にはある。
俺がバツが悪そうな顔をしたせいか、見上げたローファが微笑んだ。
「気になさらないで下さい。私は今、とてつもない程に幸せです……こうして、ソウマ様と一緒にいられるのですから」
「そうか、俺もだよ」
そう言って青く、サラサラとした髪を優しく撫でていると、ローファはえへへと笑う。
とても可愛く、もうずっと撫でていたいと感じながら、俺達は目的地に到着していた。
「いらっしゃいませ」
これは三日前に来ていた服屋だ。
もう装備品はセレスの地下の方が性能は遙かにいい、今の俺は装備なんて求めちゃいないのだ。
「頼んでいたものはできていますか?」
「はい……こちらになります。試着なされますか?」
「ちょっと待ってくれ。ローファ、俺が用意した私服なんだけど、着てくれるかな?」
三日前にオーダーメイドで前に着せていたドレスと同じ寸法でヒラヒラなメイド服を頼んでいたのだが、ローファにはよく考えたら何も言っていなかった。
「はい! ソウマ様が着て欲しいものなら、私はなんでも着ます!」
もし断わられたらどうしようと内心バクバクだったのだが、即答してくれて安堵する。
なんでもって本当になんでもいいのかなと期待してしまうが、流石に色々と我慢すべきだろう。
ミーアはあの法衣が素晴らしすぎて他に衣装が思いつかず、セレスは地下倉庫に様々な衣服があり、俺のファッションセンスを遙かに上回る。
だけど、ローファのメイド服だけは譲れない。
これだけは譲れないのだよ。
「いかがでしょうか?」
店員の問いを、俺は即座に応える。
「最高だ」
提示された値段の5倍ぐらいの金を出したくなるぜ。
白と黒をベースにしたメイド服が、青髪のローファに合うのか杞憂だったのが、そんなんどうでもよくなるほどだ。
小柄な見た目に非常にマッチしていて、俺は感極まるしかなかった。
「とても綺麗な服ですけれど、私なんかが着ても」
「いいに決まってるだろ。まあ、これは館の私服なんだけどな」
他にも色々と服を用意している。
館用はメイド服ととっておきのが1着。そして外出用の衣服を2着。
ミーアは聖なる法衣だからいいとしても、セレスがドレスなので、ミーアは別の方が似合うかと俺が考えたからだ。
先程着せていたメイド服のヒラヒラを取っ払ったような見た目だが、それもとても合っている。
学院服のようにも見えるそれにミーアが遠慮していたが、俺が何度も可愛いと連呼することで着せることに成功することができていた。
「次はローファが行きたい所に行こうか、どこがいい?」
昼食を終えて、俺が聞いてみると、ローファが俺の発言に驚く。
衣服は全てセレスから借りたショルダーバッグ型のマジッグバッグに入っていて、それをローファに持たせていた。
今までバッグの中に入っていた道具は全部地下倉庫に保管しているので、今中に入っているのは衣服だけだ。
「ソウマ様と一緒ならどこでもいいのですが」
「俺は昼間に服屋に行ったからな、なら昼からはローファが行きたい所に行こうと思ってさ」
「そ、そうですか……えっと、えっと」
そう言うと、ローファは首を左右にぐらぐらとし始める。
悩んでいるのだろう、青髪短髪が揺れ動き、その仕草がとても可愛らしい。
「それなら行ってみたい場所があります……つまらないかもしれませんけれど、よろしいでしょうか?」
「ローファと一緒なら、どこでも問題ないさ」
ローファから聞いた場所は瞬間移動可能な場所だったが、手を引いて案内するローファを見て、俺は言わないし、使わないことにした。
数時間ほど一緒に歩いたそこは、街から出た草原、モンスターがあまり生息していない、花畑だ。
モンスターが生息していない空間は多々あり、そこにはこうして花畑ができていたりもしている。
木を背もたれに俺達は座り、その景色を眺める。
「私のお膝をどうぞ」
「ああ、そうしよう」
膝枕を借りて、俺はローファを、ローファは俺を眺めている。
そうしていると、ローファがポツリと、呟いた。
「……ソウマ様と会う前の一年間、こんなことができるだなんて、考えてもいませんでした」
頬を赤らめ、俺の頭を優しく撫でながら、ローファは続ける。
「私はソウマ様のそばに居たいです。海龍と戦いに行った時と、セレスさんを助けに行った時……私の心がきゅっと締めつけられるような思いでした……」
「それは」
ローファの言葉が、俺の言葉を遮った。
「わかっています……あの時の私が行っても邪魔になるだけです。ソウマ様はお強いです。だけど、私は常に、傍に居たいと思っています」
俺の発言を遮り、ローファは切なげに告げる。
「……こんなことを言うのは差し出がましいと解っています……ソウマ様は、私の傍に居てくれますか?」
「当たり前だろ。俺はローファのことが、好きだからな」
一番途方に暮れていた頃に、一緒に居てくれたのがローファだ。
俺は感謝をしているし、離れたくもない。
よくよく考えたら、こうしてハッキリと好意を口に出したのは、初めてだったか。
ローファは涙目で、満面の笑みを浮かべて。
「私も、愛しています」
俺と唇を重ね、自らの衣服に手をかけ。
俺はその手を右手で止めた。
「……えっ?」
ローファは物凄く驚いたような表情をしている。
この人気の無い平和な場所に連れてきたのは、好意を口にしたかったり、俺ののんびりしたいという想いに応えてくれたのだろう。
流れ的に、このまま最後までいってしまいたかったのかもしれない。
だが、俺もいってしまいたかったが、何とか理性が止める。
ギリギリの所で、止まった。
「そ、そういうのは、両親に挨拶してから、にしようか」
ポカンとした表情を少しだけションボりとさせながら。
「そ、そうですよね……」
そんな表情を見て、反射的に口にする。
「結婚しますって、挨拶してからな」
驚いたローファに、今度は俺から口を重ね、彼女は更に驚愕し、そして幸せを噛み締めた表情を浮かべた。
「はい!!」
エルフの里に一緒に行けるぐらい強くなってからにしましょうとローファが提案し、夕日を眺めて俺達は館へと戻ってきている。
帰りは瞬間移動を使い、夕食を四人で取っていた。
特訓に手応えがあったのか、満足げな表情を浮かべるミーアが、ローファに聞いた。
「その服可愛いね。デート、楽しかった?」
「はい!!」
そして、ローファをくるりと一周して全身を確認したセレスが続く。
「ふむ……少々汚れておるのじゃが、野外で好意に及んだのか?」
「そ、それはその……」
その反応を見て、ミーアと美少女モードのセレスが、ピシャッと固まり、俺を眺めた。
……なんだその反応?
「初っ端に野外って、結構ぶっ飛んでるわね」
「ソウマは幼い方がいいのか!? いやしかしわらわの胸を常に凝視してるし、うーむ」
ああ、最後までいったと思ってるのか。
俺だってなんとか我慢したんだぞ。
「キ、キスだけだから……それ以上ははローファの両親に挨拶してからだから」
セレスの発言はスルーすることにして、キスだけという発言に顔を赤くしたローファと、それを眺めて少し頬を赤らめているミーア。
「まっ、明日はあたしとデートだからね、デート、してくれるわよね?」
「えっ、ああ。それはいいけど……」
「セレスさん! 明日の修行、よろしくお願いします!!」
「うむ、任せておけ!」
今日の出来事があって、ローファのやる気は更に高まっている。
ミーアはどこに連れていってくれるのだろうかと、俺は眠りながら明日を待っていた。




