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様々な話を聞く

 セレスが天使ロニキュスによって結晶化してから十年。

 十年間は、俺にとっては平和だったと思うしかない。

 しかし、それは最高Bランクパーティだった俺の視点であり、Aランクパーティのロマネからすれば違うのかも知れない。

 

 そう考えていたのだが、ロマネからも、ここ十年間では特に問題は起きていないと語っていた。

 ロマネがここ十年であった小競り合いみたいなことを話している。

 色々と十年でSランクパーティの変化やら、トウの伝説追加やら説明はしていたが、俺は特に問題はなさそうだと思うしかない。

 ここ十年で一番のニュースは、海神龍が倒されたことぐらいだからな。

「ふむ……」

 しかし、何か気になるのか、セレスは顎に手を当てて思案している。

「私がAランク止まりなので、何かしらの情報規制を受けている可能性は高いのですが、公になっていることで重要視されることは特にないですね」

「そうか……ミキレースはSランクを抜けていないのか?」

 ミキレース?

 俺が首を傾げていると、ヒメナラも首を傾げていたが、ロマネは少し驚く。

「抜けたとの知らせはありません。恐らくは王都でしょう……なにかあったんですか?」

「ちょっとな……スキル半天使を持っている者に、聞きたいことがあったのじゃよ……あのスキルはわらわも詳しくは知らぬからの」

 これは俺に対しての説明も兼ねているのだろう。

 半天使についてさほど驚いていなかったのは、Sランクにも存在していたからなのか。

「ロマネ、お前が連絡をつけることはできるか?」

「どうせ王都には報告はしましたが海龍討伐の龍核提出がありますし、その際に聞いてみましょう」

「頼むが、わらわ達はもうのんびりする気じゃし、そこまで必要じゃとは思わぬ、気になっただけじゃからの」

「解りました。師匠達の名前は出さず、私の知人と会えるか聞いてみることにします」

 今のところ体に支障はないし、そのミキレースとやらに会う必要はない気もする。


「他は……まあ確実に関係ないのですけれど、スコアにちょっと変化があったことぐらいですかね」

「スコア?」

 よく解らない単語が出て、俺は首を傾げた。

 それに気付き、ロマネの発言に関心を向けながら、セレスは俺に全身をなだれかけてくる。

「ほう……館に戻ったら確認しようかの……ソウマ、その際に説明しよう」

「のんびり暮らしていくのなら、ソウマには関係のない代物だ。師匠、他に何か聞きたいことはありますか?」

「世間的には大事件はなし。ミキレースも居る……いや、本来ここに来る気もなかったからの、これだけ解れば十分じゃ」

 恐らく、セレスが色々と調べたりすれば、公になっていない中で何かが起こったのかはすぐに解るのだろう。

 しかし、それをしないのは、本当にもう、俺達とのんびり暮らしていきたいと思っているからなのだろう。

「しかし、のんびり生きるのなら、鍛える必要はないのでは?」

「趣味じゃよ。それに、若いうちに鍛えなければ成長は鈍る。全く、ドラゴン狩りをやるのが速すぎるわ」

 ジト目で見つめるセレスに対し、苦しげにロマネが語る。

「うっ……正直、師匠が居なくて自暴自棄になっていたというのもあって……」

「……すまなかったな。お主に言えば間違いなくダンジョンに向かっていたからの」

 天使ということはロマネに隠し、ロニキュスは謎の存在ということにしている。

 それが最善だとセレスが言っているのだから、俺はそれに従っていた。


 それからはセレスの昔話や、ロマネの弟子時代の話をして、四人で盛り上がっていた。

 ドラゴンキラーの一族なのに全くドラゴンと戦えてないと不満を漏らしたので、Aクラスモンスターの邪龍に向かって子供のロマネを投げ飛ばしたりと、中々に容赦がない。

 それでも生きている辺り、本人には知らせず安全策でいっているのだということは、ミーアとローファのことから解っている。


「ヒメナラと会ったのは六年ほど前ですね。当時は龍と相手にしていられないとよくメンバーが抜けていたので、私が鍛えるので誰でもいいとパーティメンバーの募集をしていたら、ヒーラーの安っぽい法衣を着ながら「すみません、仲間になるので養って下さい」と頼み込んできまして、師匠の特訓と同じようなことをして鍛え上げました」

「うわわわわっ」

「つまりヒメナラはセレスのの孫弟子になるのか」

「なんか呼び方が嫌じゃのそれ……わらわがこれから教えるんだし、孫じゃない弟子みたいなもんじゃろ」

 ロマネとヒメナラが六年程前に出会った頃の会話をしてヒメナラが真っ赤になったりもしていた。

 一番驚いたのはセレスのSランクリーダーだった頃であり、色々と伝説が垣間見えている。


「当時のわらわ達はそれはもうぶっ飛んでおった。魔法の実験はできる限り人気のない所で行なっておったのだが、騒音やら余波によって被害でてしまったりしての、幸い死者は出なかったのでお咎めはないのじゃが、関わった4割以上の街が出禁になっておったよ。まっ、今は無所属じゃし、出禁は解除されておるがの!」

 4割以上の街って、ほぼ半分じゃねぇか。

 流石にキリテアの街を追い出されたらシャレにならないので、自重して欲しいものだぜ。

 まあ、俺とのんびりすると断言しているのだから、問題はないだろう。


「この街の周辺でそういうことは止めて下さいよ……天神龍に会ったって本当なんですか!?」

「ああ、ガサリデ山を登りを昇ったに出会った。十数年前にお前の両親が狩った地神龍や、昨日狩られた海神龍とは違い、人的被害はこちらが関わらぬ限り出さないドラゴンじゃの。あやつは中々に美しかった。カミィがペットにするとかほざいたので、殴り飛ばして関わらずに帰ったがの、やったら流石に龍帝キレるじゃろ」

「そりゃそうでしょ……とんでもないこと言いますね」

 世界で一番高いってことで有名なガサリデ山を登ったことがあるのか。

 ロマネも初めて聞いたらしく、かなり真剣な様子で聞いていたりもしていた。


「龍帝と言えば、結果的に私が海神龍倒したことになってるんですけど、大丈夫ですかね? 海神龍倒してから考えるのもあれなんですけど、Sランク冒険者で、世界で八番目の強さってことぐらいしか龍帝のこと知らないんですよね」

 ……えっ?

 唐突に結構ヤバいことを軽く言うロマネに、俺は冷や汗を浮かべてしまう。

 いや、でも海龍神討伐してなかったら館が手に入らなかったし、セレスも助けられなかった。

 これでよかったんだと思っていたが、セレスは少し呆れている。

「ん? そんなふざけた覚悟で六大龍を倒したのか? まー大丈夫じゃろ。龍帝は七大龍を倒した者に関して、殺さない範囲での戦闘行為が許可されておるのじゃが、土龍を討伐したお主の両親も半殺し程度で済んだぞ」

 そう軽々とSランク冒険者のことを話すセレスに、ロマネはビビリだす。

「あの……それで私の両親、冒険者辞めて幼い私にドラゴンスレイヤーを継がせてきたんですけど……重傷だった理由聞いても教えてくれなかったのって、多分私が他の六大龍を相手にしなくなるのを恐れたからですよね?」

 いきなり判明した衝撃の真実に、ロマネは狼狽えるしかない。

 そういや、ロマネは俺とリヴァイアサン討伐に行った時に「同胞潰されたからと襲いかかってきたら龍帝に私の一族は滅ぼされてる」みたいなこと言ってたな。

 半殺しにされてるじゃねぇか。

「まーそれがないとわらわはこうして今動けておらぬからの! もしやって来たらわらわを呼ぶといい……い、いや、ソウマ的には、どうじゃ?」

 胸をポンと叩いて自信満々だったセレスだが、すぐさまその発言が平凡からかけ離れていることに気付き、俺に不安げに聞いてくる。

 非常に可愛いので思わず頭を撫でてしまい、セレスは蕩けたような表情を浮かべている。

「殺しはしないんだろ? 話し合って戦いが避けられないのなら、俺が相手をするさ」

「わらわの夫カッコいい! 龍帝はSランク冒険者じゃ、ギルドとして戦闘許可が下りていたとしても、戦う時に同意を求めてくる。ロマネ、お主の両親は土龍倒してちょっとテンションがおかしかったからの、半殺しにされたのは同意してやり合った結果なのじゃよ」

「それなら、大丈夫そうか。感謝する」

 ロマネはホッとしているが、本当に大丈夫なんだろうか。

 これでロマネが半殺しにされるのは俺が嫌なので、この件に関しては龍帝とやらと殺されない程度にやり合う気でいた。


 まあ、セレスの言うとおりなら、龍帝と戦うということはないだろう。 

 

 話していると時間は夕方になってきたので、俺達はギルドから出ることにした。

「ソウマ、師匠を連れてきてくれて、本当にありがとう……私は師匠やソウマと比べれば未熟だが、できる限り力になろう!」

「でも、愛人にはならないから……じゃあね」

 頭を下げるロマネと、なんだかんだ言いながら名残惜しそうに手を振ってきたヒメナラと別れ、食材を買って俺とセレスは館に帰っていく。


 くたくたになりながら、ステータスは半日で結構上昇していたローファとミーアを休ませ、夕食を取った後。

 倒れるようにして眠った二人を寝室に運び、俺はセレスに書庫まで案内されている。

「ここをこうして、こうするとな」

「おおっ!!」

 セレスが本棚を規則的に移動させたりすると、ゴゴゴゴと音が鳴り、隠し階段が現れる。

 その階段を降りると、短い通路があり、俺は先行したセレスに着いていく。

「ここから先が地下室の倉庫でな。鍵もさっきの書庫に置いておる」

 そう言ってセレスはどこからか鍵を取り出し、俺達は整備されている短い地下道を通り、鍵を開けることで倉庫とやらに入った。

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