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第二章・第三話 天を斬り裂く者





 そして、それを待っていたかのように全ての巨人のバックパックから小型ミサイルが一斉に打ち出された。

 巨人たちは、いつの間にか敵の外側に包囲網を描くように点在していたのだ。

 放たれた無数のミサイルが次々に爆発しネットが広がる。

 そのネット同士が結合しながら更に広がって、あっという間に敵も味方も閉じ込める超巨大な鳥籠を空中に形作っていた。

 次の瞬間。

 ババババババババババババババババっ。

 遥か上空から降り下ろされた光の柱が鳥籠を飲み込んでいた。

 鳥籠の中で無数の爆発が起こり、それは光の柱が消滅するまで続いた。

 光が通り過ぎた鳥籠の中に残っていたのは、かろうじて光の直撃をかわしたオルトロスと、バリアを展開していた巨人だけだった。

 ギルとミカヅキの機体も互いに密着したまま光の直撃をかわしていた。

 剣の切っ先とドリルを装備した尻尾の先端、それぞれが互いのコックピットに突き付けられていた。

 離れようとすれば、その一瞬を狙われるため、離れることが出来ずにいたのだ。

「散開しろ。狙い撃ちされるぞ」

 叫ぶギル。

 だが、巨人たちが再び発射したミサイルが鳥籠の中で爆発し、爆散した鉄鋼弾とワイヤーネットが取り残されたオルトロスに襲い掛かり、その動きを封じていく。

「やらせるか」

 そこに巨大な影が駆け付けた。

 他の巨人の倍はあろうかという巨体であるにもかかわらず、目にも止まらぬ速さでネットを切断していく。

 それは、ヌアザだった。

 しかし、先程の光の柱の威力をまざまざと見せつけられ、半ばパニックになったオルトロスが逃げ惑い、蜘蛛の巣にかかった獲物のようにネットに絡めとられていくのが見える。

 そこを、ヌアザを追って来たサンダーボルトが狙い撃ちし、更に追い撃ちをかけるように天空から降り下ろされる光の柱が飲み込んでいく。

「ちぃ、衛星軌道からか」

 ギルの言葉通り、それは攻撃衛星による軌道上からの砲撃だった。

 作戦が漏れるのを防ぐため、ミカヅキにさえ事前通告なしで行われたそれは、オルトロスはおろか巨人たちにも容赦はなかった。

「ミカヅキ、ここで死ぬ気か」

 その時、ギルの無線に誰かが割り込んで来た。

「ギル、星占い見てきたか?」

その声はミカヅキだった。

「なに?」

「今日のお前の運勢は最悪だ」

「ほざけっ」

 その時だった。

 鳥籠から少し離れた何もない空間から、突然幾筋もの青白い光が鳥籠目掛けて飛び出して来た。

「なに?」

 空の中から滲み出るように姿を現したのは大型の輸送艦と、それを護衛する人型兵器の編隊だった。

「来てくれたか」

 それは、ミカヅキがカエデに約束した救護部隊だった。

「ミカヅキ隊長、こちらナイチンゲール。これより救助活動を行います。バリアを解除して下さい」

「了解、ハンナ。バリア解除」

「こちらハンナ。了解しました。バリアを解除します」

 その時だった。突如、上空に丸く穴が開き、その奥から何かが出て来た。

 それは超巨大な腕だった。

 いや、腕ではない。

 よく見ると、上腕のように伸びる1つの胴体から9つの蛇首が生えた怪獣だった。

 9つの首は、縦横無尽に動いて輸送艦を呆気なく沈めると、神の宝石をバリアごと掴んだ。

 バリバリバリバリバリバリバリっ。

 その指はバリアを砕き、飛行客船を鷲掴みにした。

 そして穴の奥へと戻って行った。

 それと同時に空に開いた穴も塞がり跡形もなく消えていた。

 残ったのはハンナが操るマインゴーシュのみだった。

「くそっ、後を追うぞ。追跡出来るか?」

 ミカヅキが叫ぶ。だが、

「あまいな、ミカヅキ」

 ギルがそう呟きながら見上げた視線の先でそれは起こった。

 空一面が、押し出されるかのように歪みながら下がって来たかと思うと、それは、そのまま空間を割るように空を突き破って姿を現した。

 それは街1つをまるごと覆えるほどの直径を持つ、超巨大な円筒形の物体だった。

「隊長、レヴィアタンです」

 仲間たちからの絶望にも似た声がインカム越しに次々に届く。

 レヴィアタンと呼ばれる超々巨大な円筒形の物体は、底の部分が抜けており、そこが太陽のように光り輝いていて、金色の雪もそこから降りそそいでいた。

 だが、雪はただ降っているのではなく、嵐のように渦巻いて吹き荒れていた。

 円筒の底の内側には内周に沿って無数の巨大な刃が並び、チェーンソーのように轟音をあげて回っていた。

 しかも、その刃の内側にも筒の中心に向けて刃が螺旋(らせん)状に並び、円を描くように超高速で回転している様子が見えた。

 金色の雪は、その轟音をあげて回転する刃によって攪拌(かくはん)されていたのだ。

 そのままゆっくりと降下し続ける巨大過ぎる円筒。

 まるで、ゾウがアリを踏み潰すかのように、視界の全てを覆うそれがミカヅキたちに迫って来る。

「衛星砲はまだか?」

 そう。これは衛星によるレヴィアタン攻撃の絶好のチャンスだった。

 だが、作戦は未だ実行されていなかった。

「なぜ攻撃しない」

 〔システムエラーです〕

「なに?」

 シュバルツからの答えにミカヅキは愕然(がくぜん)とした。

 〔システムエラーが発生しました。衛星がこちらからのアクセスを受け付けません〕

「くそっ、コンパクトノヴァが使えたら」

 〔あれはまだ試作段階です。この機体には搭載されていません〕

「そんなことは分かってる」

 ボンっ。

 その時だった。

 小さな爆発音と共にオルトロスの幾重にも重なった装甲がはじけ、剥き出しになったコックピットからギルが飛び出した。

 多重構造のフェイスプロテクターを装着しているため、その顔を伺い知ることは出来ない。

 が、プロテクターの後ろからこぼれる銀色の髪や、その隙間から覗き見える深紅の瞳が、彼がギルであると教えてくれていた。

「ミカヅキ〜っ」

 直上に迫るレヴィアタンを前に死を覚悟した彼は、ミカヅキとの決着を付けるべく、ムラマサのコックピットへと伸びる尻尾の上を、両手に構えた2丁の大型拳銃を連射しながら疾走し始めた。

「ギル~っ」

 対するミカヅキも胸部装甲を強制排除すると、長刀を構えジャンプし、ギル目掛けて斬りかかる。

 相まみえる弾丸と刃。

 ミカヅキもまた、刺し違えてでもギルを仕留めるつもりでいた。



                                    〈第二章、終わり。第三章へつづく〉


                                         

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