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目覚めたら目の前にはおっさんの顔が有った

「ひろポン様?我が君?我が君?いつまで寝てるのですか。

 早く起きてください」


 俺は気がつくと、見知らぬ天井で寝ていた。

そして俺を揺すっているのは筋骨たくましいむさいおっさん。


「ん……お前さん一体誰だ」


 むさいおっさんはニコリと笑う。


「我が君、やっと目覚められましたか。

 それにしても酷いですぞ、このチャンフェイをお忘れになるとは」


 俺を覗き込んで我が君を連呼する髭面のごついおっさんの顔に何か見覚えがあるような気がするのはなぜだろう。

そして男がむさいおっさんに起こされるとか一体誰得だ?

そして俺の名前はひろポン様?


「さあ、早く黄巾賊を討伐に参りましょうぞ」


 黄巾賊というと三国志の始まり頃か。

おかしいな、俺は21世紀のアラサーサラリーマンだったはずなんだが。


 そしてチャンフェイ、張飛は三国志の超有名な脳筋武将だな。

もっとも彼は蜀攻め以降の大きな戦いで普通に戦術的勝利をしてるので意外と戦術に優れた人物であるはずで、彼のイメージを悪くしたのは三国志演義によって神として祭り上げられた関羽を持ち上げないといけなかったからのはずだが……思い出した!これ”三国超英雄戦記じゃねえか。”

ひろポンは俺の本名をもじってその時付けたプレイヤー君主の名前だな。

くそ、もうちょっとまともな名前にしておくべきだった。

まあ、どこかで見たように主人公の名前が”うんこしたい”よりはいいけど。

”ねえ、”うんこしたい”あなたはこの大陸を統一するために呼び出された勇者なのよ”

などとでも呼ばれたら一周回ってむしろ笑えるけどな。


 三国超英雄戦記はよくあるソーシャルゲームの一つで後漢が崩壊する三国志時代の中国大陸を舞台に武将や軍師などのキャラクターを集めて、大陸の城などを攻略していきキャラクターを強くしていくのが目的のゲームだ。

いや、ソシャゲって基本そんなもんだろ、君主になって中国を大陸を統一するとかはまともなシミュレーションゲームでやることだ。


 いや、俺は結構好きだったよ、武将や軍師などのキャラクターには最初のレア度の星の数に星が一つから星が3つまでの差は有っても最終的には全部のキャラが星5まで育てることはできるから基本的には捨てキャラはいないし、最初はやれることが少ないんだけど、だんだんとやれることが増えてきて育成がすごい楽しいゲームだった。


 ここでだったがつくのは運営がともかく糞運営だったからなんだが。

バグはたくさんあるわ、それも指摘されてもなかなか直さないわ、イベントは予告がなかったり、唐突に中止になるわ、間違って配布されたアイテムは取り上げられるわ、最悪だったのは経験値ブーストがかえって育成の邪魔になることだった。


 これはレベルが低いうちは同じサーバーの中のレベルが一番高い君主キャラとの差分でもらえる経験値が増えるというものなのだが、君主のレベルが上がるというのは箱庭の建物のレベル上限や配下の武将たちがあげられるレベル上限が上がるということ。

武将のレベルが上がるとほんのちょっとだけ強化されるが能力的にちゃんと強化するためには武将に武器や鎧、盾、靴などのアイテムをたくさん集めて装備させないといけない。

いわゆる貼り付けシステムなんだが、君主のレベルアップが早すぎると武将のレベルアップに必要なアイテムや強化に必要なアイテムや銭が全然入ってこないのだ。

そして君主レベルが上がると、アイタム集めの敵やPVPなどの相手だけ強くなっていって全く勝てなくなっていく、そうなると面白くないからやめる、やめるから過疎るのスパイラルだったんだよな。

ようするに後から参加した新人は君主レべルの上りが速すぎて無課金だと途中で詰むのだ。

金が足りなすぎてレベルが上ってもまともに武将育成も箱庭育成もできないんだよな。

強くしたいなら課金しろよ言うのが運営の考えなのかもしれないが見え見えすぎて誰もしねーよというレベルだった。


 そんな感じで最後は過疎って消えていった無名ソシャゲの一つだ。


 そんなことを考えていたらチカチカ光る”ログインボーナス”のアイコンが視界の端に見えた。

ああ、ログインボーナスね。

ソシャゲなら有って当たり前なんだが、これ……受け取って大丈夫だろうか。

受け取ったせいでむしろ進行がしんどくなるとか言うのも十分あり得るしどうしたものかな。


「おお、ひろポン様。

 我が君、ログインボーナスは取っておいたほうが得ですぞ」


 むさい髭のおっさんがチュートリアルのアシスタントとか一体誰得だよ。


「ログインボーナスの内容って金とか食料だけで経験は入らないよな?」


「はい、そのとおりですぞ我が君」


 とりあえずログインボーナスをタップしてみた。

金と食料が5000ずつ手に入った。

”ぼん”と金と米を中心とした食料が現れた。

唐突に現れるのも不思議だがチャンフェイは特に驚かないところを見るとこれも当たり前なのだろう。


「では、黄巾賊討伐に参りましょうぞ」


「いやいや、まだ準備できてないだろ」


 そう言えば今更ながら自分の格好を見下ろしてみた。

寝台に寝ていたはずなのになぜか完全武装の鎧姿だ。

野営中でもないのになんで鎧を着込んで寝てるんだよ……。

しかも三国志世界にありがちなキンキラキンの派手な鎧。


「そりゃ鎧を身に着けて完全武装で寝ていたら疲れも取れんだろうさ」


 俺の独り言にチャンフェイが首をかしげる


「どうしました我が君?」


「いや、普通寝るときは鎧は脱がないか?」


「はっはっは、何を言っているのですか。

 装備は一度付けたら二度と外せませんぞ」


 そりゃゲームの仕様上ではそうだろうけどな……。

トイレとか風呂とかどうすんだよこれ。

と思ったら鎧は普通に脱げたし、トイレも有った。

そこまでだめだったらどうしようかとマジで思ったぜ。

まあ、準備ができたら黄巾賊討伐にでかけるとしようか。

ともかく君主レベルが上がらないように気をつけないとまず確実にドツボにはまるだろうしなんだかな~という感じではあるよな。

普通レベルアップしたら強くなってウハウハになるもんじゃないのかね。

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