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「冷静になれば、おのずと策など見えてくるものだ。例えば―」
そう言うとレイロックは、杖を振り上げ結界の一カ所をさした。
「はあっ!!」
彼の声と共に杖の先端の悪魔の首の目がかっと光り、そこから激しいエネルギーがほとばしる。
「くっ」
呪符をコントロールしていたアリッサが苦しそうな声をあげる。
「大丈夫ですか!?」
「ああ」
「あいつどうするつもりなのかしら??」
メイシンが疑問の声をあげたその時、呪符結界の一角に小さな穴があいた。レイロックが杖をあてた場所だけ、呪符の流れが妨げられ、無理やり魔力でこじ開けられた形となっている。
「ジェノホリックよ、受け取れ」
ヒュヒュッ!!
レイロックは、杖で魔力を照射している方ではない手を懐に入れ、そこから取り出した何かを穴から外へと放った。
彼が開いた穴は、まさにジェノホリックの方を向いていたのだ。
ドスドスドス!!
「グォォ!!!」
レイロックが放ったのは三本の針で、それらはすべてジェノホリックの肩に突き刺さった。人の腕の半分程の長さの銀色のそれは、暗殺者や闇魔術師たちの間で暗器として流通しているものだ。
針をその身に受けたジェノホリックは、うめき声をあげながら両腕をめちゃくちゃに振り回しながら立ち上がった。
「何をしたんだい?」
アリッサの質問に、レイロックが満足気に答える。
「なに、針の先に特殊な薬品を塗ってあっただけのことだ。これは不死族を凶暴化させるものでねえ。植物毒を調合して作ったものだから『集魔鏡』の影響も受けずに使えるのだよ」