交響の前奏曲-1
・・・彼女の言葉を思い出した。
『私が好きな人っていうのはね、零也君、あなたなの』
彼女はそう言った。
これが、『好意』であることは理解できた。けれど、それに対して自分がどう思ったのか、分からなかった。
酷く動転したのは覚えている。それは確かだ。
『だーかーらー! 細かい感情なんて俺たちにもわからないって言ってんの! 後から思い返して『俺はあの時悲しんでいたのか』程度だって。その場その場で理解できるほど単純じゃない』
一誠はそう言った。そのとき私はようやく救われたような気がしていた。
だが、それはどの程度のレベルの話なのだろう。
誰もが恋愛を理解せずにしているのか? そうは思えない。
いや、そもそも『理解』という考え方から間違っているのか・・・?
『恋愛』とは何なのか。私は再び、その問題に直面していた。
あの日、あの言葉を告げた後、彼女はこう言って立ち去った。
『ごめんね。急にこんなこと言われても困るよね・・・。その、返事はすぐじゃなくていいから・・・じゃあね!』
あれにはどういう意味があったのか。
彼女とはあれ以来顔を合わせていない。隣の席なのにだ。
周囲が大いに盛り上がっている中、私たちの間にはぽっかりと穴が開いている。
一誠も話しかけてこようとはしなかった。
・・・ここ数日、このことばかり考えていた。
答えが出るまで考えたくても、無理だった。
やがて夜が来て、気が付けば寝ていて、朝が来て、時間になれば登校する。朝の授業、昼休み、午後の授業ときて誰とも会話せぬまま帰宅する。
・・・こんな生活を、かれこれ二週間続けていた。
・・・あの日覚えた『悔しさ』という感情。それだけが私の空虚な心を満たしていた。
そして今日も登校する。
空模様は最悪。土砂降りだった。
・・・どうでもいい。
私はレインコートを羽織ることもせずに自転車をこぎだす。
・・・いっそこのまま、この雨が何もかも洗い流してくれないだろうか。
そんなことを考えながら、自転車を操る。
――だから気が付かなかった。いつの間にか、赤信号の真ん中にいたことに。
「あっ・・・!?」
私の体は、宙を舞った。
こんにちは。灰色猫のクリストファーです。
……内容に関しては、何も言いますまい。
いよいよ終盤に突撃いたします。今しばらく、お付き合いください。
かなり短めですが、ご勘弁を……
次回『交響の前奏曲-2』、お楽しみに。




