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矛と盾の鎮魂曲-1

 夢を見た。


 幸せな夢だ。幼いころに祖母のいる田舎に行った時の記憶。


 笑っていた。祖母も私も。




 ・・・違う。これは記憶なんかじゃない。それはあり得ないことだ。


 ―――私はいまだかつて、笑ったことも、泣いたことも無いのだから。


 私はなぜか、この夢にうすら寒いものを感じた。





 あれからしばらく経ち、16回目のクリスマスを迎えた。


 一応このような行事のある日には授業は進まない。


『世界中の人々が幸せで包まれる』


 何かのキャッチフレーズだ。


 けど、幸せなんて微塵も感じたことはない。正確には、感じていても気づけないのだ。


 この手の行事―――クリスマスとか正月とか―――で私が感じるのは数々のイベント料理の味ぐらいだ。


 私は懸命に幸せを感じようとした。その試みはことごとく失敗。


 さらに追い打ちが来る。





 ・・・祖母が、息を引き取ったらしい。




 祖母は数年前から体を悪くしたらしく、介護施設で暮らしていた。


 その施設から連絡が来たのだ。




 祖母にはよくしてもらった。素晴らしい人だと思った。


 けれどその祖母が帰らぬ人となったと聞いても、まるで悲しむことはできなかった。


 ・・・違うか。恐らく『人間』の私は悲しんでいるのだろう。だが『私自身』はそれを把握できない。


 だから私は人生初となる葬式の場でもただただ無感情だった。


 出所の分からないモヤモヤした気持ちが私を満たした。その気持ちの正体を知っているのは『人間の私』だけ。


 『私自身』はそれを知らない。





 もう嫌だ。


 気づかされてしまった。


 私は人間になったつもりだった。


 けれど人間の要素なんて外面的なものしか持ち合わせていなかった。


 そんなことは分かっていた。


 だけど気づきたくなかった。


 いつか分かると思っていた。だけど無駄だった。


 私が心理学書なんかを読んでも理解できるはずがなかった。


 人間として完成できないならいっそ人間やめてやろうか。





 だがそれすらも不可能だ。


 今度は私の中の『人間』の部分が邪魔をした。


 きっと人間の私の精神の根底には『死にたくない』という思いがあるのだろう。




 ―――私は神としても、人間としても中途半端な存在になってしまった。

 こんにちは。灰色猫のクリストファーです。


 突然の急展開(?)ですみません。


 さて、この作品には『神としての意識体の私』と『人間としての無意識の私』に当たる表現がしょっちゅう登場します。


 人間の我々は意識も無意識も人間です。しかし彼には神としての意識が植え付けられてしまっている。

 

 まるで進展しませんがそんな話をしています。


 タイトルの『矛と盾』はもちろん矛盾を示しています。


 その『鎮魂曲』です。勘のいい人なら察するものがあると思います。


 ・・・本来の用法とは異なりますが。


 次回、『矛と盾の鎮魂曲-2』。ここから大きく動き出します。

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