恒久不変の交響曲
ひとつの命が、消えようとしている。
それは以前はその形ではなかったもの。
それを見つめる者がいた。そのしわがれた顔に、悲しみの色は浮かんでいない。
死に行く者は、満足げな笑みを浮かべていた。
――わしは……死ぬのか……
――そう言いながら何だか嬉しそうだねぇ
――だってなぁ……今泣いたってどうにもならんじゃろう……それに、お前さんを悲しませちゃいけないからのぅ
二人の老人はお互いに言葉を交わし合う。ただこの瞬間を、価値あるものにするために。
――天国ってやつに、行ければいいのぉ……
――あんたがそれを言うのかい?
――お前さんの言う「あんた」っていうやつは、とうの昔に死んでおるわい
――そうでしたねぇ……
唐突に、その部屋の扉が開かれた。
――おお、華恋か。元気にしとったか?
――おじいちゃん、苦しくない?
――いや、大丈夫じゃよ……ばあさんも、華恋もいることだしのう……
――うちのバカ息子はどうしたね?
――お父さんは仕事。でもほら、手紙をもらってきたよ
彼女は手紙を老人に手渡した。しかしすぐに顔をしかめる。
――あのバカは気が利かんのう……だれも心配なんかされたかないわい
彼は目を閉じる。一瞬の後、彼は懐かしい顔をした。
――この病院のこの部屋で、人生を終えることになるとはのう……
彼は再び、懐かしそうな顔をした。
――ああ、本当に、いい人生じゃった……
やがて――――彼の意識は、いつかのように、闇に没した。
こんにちは。灰色猫のクリストファーです。
さて、当初の予定ではこの話の前に一話挟む予定だったのですが、「いっそのこと読者の想像に任せては?」と思ったのでこのように終わらせていただきました。
よって、この話に至るまでの顛末、この話の登場人物が誰であるか、この話の後何がどうなったか、全て読者の方々の想像にお任せします。
まあ、丸投げと取ってくださっても結構です……(笑
最後まで読み続けていただけた方、ありがとうございました。




