生誕の序曲
私、いや、僕・・・それとも俺か? ううむこの一人称とやらの使い方がどうにも慣れない。性別的に男なのだから俺か僕を使うのが主流なのだろうが・・・。
ともかく私は育場零也。この日本という国の・・・ええと、棟明市にある静麗学園・・・だったか? に通う男子生徒であり、同時に『神』である。
・・・え? 本当に神なら何でこんな所にいるかって?
そもそもの発端は16年と10か月前に遡る。
さて、その16年と10か月前に私は目覚めたばかりだった。実に45億と4千万年ぶりの目覚めであった。
45億4千万年前というと、私が趣味で行っていた宇宙創造で、ちょうどこの惑星―――地球と呼ばれているらしい―――が出来たころだ。その完成を見届けたところで私は力尽きて寝てしまったのだ・・・。
何でって、「よっしゃあー! 宇宙作ってやるぜーっ!」と、勢い余ってビッグバンしたのが138億年前。それから92億年と6千万年間、不眠不休で宇宙を創り続けてたらいつの間にかそうなってたのさ。
で、気が付いたらこの地球という惑星はいつの間にやら妙な奴らが住まう土地になっていたわけで。中でも気になったのが『人間』だ。地球上どこを見ても生息していると思ったら、おまけに妙なものを使いやがる。
大体なんだ、あの住居は。絶対自然物じゃないだろ。何なんだあのよく分からん乗り物は。お前ら空飛んだり海渡ったりする動物じゃないだろ。
何よりも気になったのが地球の周りを飛び回ってる鳥みたいな奴だ。どう見ても生物ではないので、多分人間が作ったものだ。
いやー腹が立ったね。お前たちはこの星の何なんだってね。私は色取り取りの星を作って眺めたかっただけなのに。
あまりに気に入らなかったものだから、適当な理由つけて惑星ごと吹っ飛ばそうとも考えた。だがすぐにそんな考えは捨てた。
こんな技術力を持っているということもそうだが、そもそも今まで創ってきた星に生物なんて誕生したことすら無かった。こんな状況だ。興味が湧かない方がどうかしてる。
その後1か月ほど私は人間観察をした。
なるほど、人間の寿命は場所にもよるが70年ほどか・・・。
そして私は思い立った。「そうだ、一回人間になってみよう」と。
・・・思ったはいいものの、少々面倒なことがあるのだよ。
一つ、別にいきなり地球上のどこかに出現してもいいのだが、どうも人間の社会には『戸籍』というものがあるらしい。これが無いとまともに人間としての活動が出来なさそうだ。
一つ、人間たちの交わしている『言葉』が理解できない。
一つ、人間たちの『規則』が理解できない。
一つ、そもそも『体の動かし方』すらわからない。仕方がない。そもそも肉体なぞ持ったことはない。
深刻な問題はこのぐらいか。
これらを考慮すると、どうも私が人間社会に難なく馴染むためには次の手段しかないように思える。
―――『人間の赤ん坊として転生する』―――
これならば戸籍とやらの問題は無視できるし、肉体の成長過程で言語や倫理も身に付くだろうし、体の動かし方だって徐々に理解できるだろう。記憶も問題なく持っていける。
しかしこの方法にはとある問題があった。
先のような、人間としての肉体を一時的に手に入れ出現する方法ならば、その肉体は私が作り出す仮初のものであるため、いつでもその肉体を放棄してこちらへ戻ってこれるだろう。
しかし人間の赤ん坊として現界するのならば話は違う。それは人間の息子、あるいは娘として誕生するということであり、それは神としてのの力を放棄することに直結する。その肉体は仮初のものではなく、紛れもない本物である。
つまりこの方法を選択した場合、その肉体が朽ちるまで私は地球に留まらなければならない。人間としての一生を終えるまで神としての力を取り戻せないのだ・・・。
私は考えた。
この方法以外思いつかない。しかしこの方法でいいのか。
人間としての人生を生きる。それは人間を知るという点では何にも勝る体験になるだろう。だが同時に、一時的とはいえ神の力を失う。
考えに考え、結論を出した。
結局私は自分の好奇心を優先させる選択をする。人間として、転生すると決めたのだ。
そうして私は目論み通り、人間の赤ん坊として転生した。
そして、今に至る。
こんにちは。灰色猫のクリストファーと申します。
『45億と4千万年ぶりに目覚めた神様がちょっと人間になってみるそうです』をお読みくださり、ありがとうございます。
さて、初投稿となるこの作品ですが、本来短編小説として一括投稿する予定でしたが、執筆が進むにつれ妄想が止まらなくなり、長くなってしまいました・・・。後悔はしていません。
この作品を楽しんでいただけたなら幸いです。
さて、次回から本編となり、新キャラクターも登場します。
次回、『開演の狂詩曲』をよろしくお願いします!




