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輝きのその先へ  作者: 追憶の欠片
5/9

恥の上塗り

職員室に着くと俺は先生に自分の今置かれている現状を話出した。


「はははっ!靴を忘れたのでスリッパを貸してくださいだと?またか、またなのか雷騎!」

説明してから開口一番のセリフがこれだった。そこまで笑うことないだろ。そう思った俺は抗議をした。


「そんなに笑うことないだろ、宗兄」


「だってお前始業式とか入学式とか何かの節目の次の日には必ず上履きを忘れてるだろう?」


ぐっ…否定できない


「正直俺は今日もお前が上履きを忘れるんじゃないかと期待していたんだ。その期待にお前は大いに答えてくれた!あはは!だめだ笑いが止まらない」


宗兄は今も腹を抱えて笑っている。この態度教師としてどうなのだろうか?


「んで、スリッパが欲しいんだったか、ちょっと待ってろ。ええと確かここにあったはず」

ガサゴソ


「あったあった。ほら、これ使え。」

そういうと宗兄は持っていたスリッパを取りやすいように、俺の胸に向かって投げてきた。

ポイッ


「投げずに手渡せよ全く」

俺は悪態をつくと、宗兄が投げてきたスリッパをキャッチ

スカッ うっ!

…出来なかった


「あははっ!取りやすいように投げたのに……取れないとか…取れないとか…ははは!」

宗兄はまたも笑い始めた。キャッチ出来なかった俺は恥ずかしさと、宗兄のあまりの笑いように苛立ちを覚え顔を赤くして抗議した。


「手渡しとか方法はいくらでもあっただろうが!」


「あぁ、悪いそれは思いつかなかったな。まぁまぁそう怒んなって」

怒らせたのは誰だよ、全く。


「ところでそろそろ授業が始まるから早めに教室に戻った方がいいぞ。」


「そんなこと言って、今の件を有耶無耶にしようとするなんて、いいか宗兄、俺を騙そうとしても無駄だぞ。俺はその手には引っかからないからな!」


「そうか~聞く耳持たずか~こりゃ参ったな」

宗兄は頬をポリポリとかいていた。

ふん、俺がそんな手に引っかかると思うなんて、俺を子供扱いしすぎだろ。


「授業が始まるのは本当なんだがな……」

どうやらまだ俺を騙そうとしているらしい。懲りないな


「一応忠告はしたからな」


「ふっ、一度通用しないと知った手を二度も使うなんて宗兄らしく」


キーンコーンカーンコーン

え?これはチャイムの音?ってことは先生が教室に来る前に行かないと遅刻確定ってことか!


「やばい!教室に行かないと!」

そう言い残すと俺はダッシュで教室へと向かった。


「雷騎~廊下は走んな~それと先生が入る前に席に着けると言いな~頑張れ~」

のんきにそんなことを言ってくる宗兄に対し、俺は先ほどの怒りも忘れて返事を返した。


「ありがとう、宗兄、遅刻にならないように頑張るわ~」

俺はそれから1分後何とか先生が教室に入ってくる前に席に着くことが出来た。


ガラガラガラ

「はぁ、ぎりぎり何とか間にあった。さて俺の席はどこかな?」

俺は自分の席を探すべく教室を見回す。駄目だ張り紙もないから全く分からない。


「全然間に合ってないわよライ。間違いなく遅刻。」

辺りをきょろきょろ見回す俺に気づいたのか声のした方向を向くと俺の前に水鳥がいた。


「いや、間に合ってるだろう。先生が来る前に教室に入ることが出来れば遅刻にはならないんだ。バレなきゃいいんだよバレなきゃ。」


「はいはい、自由席らしいから、とりあえず好きなところに座ったら?まぁ、窓際一番後ろしか空いてないんだけどね。」


「ベストポジションだな。良かった~いい席残ってて。」


「ライは、本当に窓際が好きだよね」


「外の景色を見られるし、いい暇つぶしになるからな」

そんな雑談をしつつ、俺たちは席に着くことにした。この時の俺たちのやり取りが、周りから注目されていたことに俺は気づかなかった。普通に考えれば、遅刻した奴が注目を浴びるのは当然と言えるが。

さて、今年の担任は誰になるのか。そんなことを考えていると教室のドアが開く音がした


ガラガラガラ

「おっみんな席に着いてるな。感心感心。さて俺のことを知っている生徒もいると思うが自己紹介するぞ。今年の縁クラスの担任になった五竜神田 宗介だ。みんなこれから一年間よろしく頼む。」


なんと入ってきたのは宗兄だった。詰んだ、この瞬間から俺の遅刻は確定した。だって、さっきまで一緒にいたからな。

「さて、このまま今日の日程の話と自己紹介をする…予定だったんだが、とりあえず雷騎、お前は罰として話が終わるまで、水を入れたバケツ持って廊下に立ってろ。」


「古典的!?何でそんなことしないといけないんだよ宗兄」


「理由を聞きたいか?それはお前が何かの節目の度に多岐に渡り遅刻を繰り返してきたにも関わらず、一度も罰らしい罰を受けていなかったからだが。」


「うっ!そっ宗兄は知らないかも知れないけど、俺はちゃんと罰を受けたことがある!」


「それを堂々と言うか、一応どんな罰を受けたのか聞かせてもらおうか?」


「この前の始業式でトイレ掃除を一週間して」


「それはお前が当番の週だからやったんだろう?」


「ほっ…他にも室内を綺麗にするように命じられて」


「それはお前の部屋が汚いのを見つけた水鳥に命じられたものだろう?学校で受けた罰ではないな」


「何故それを!?」


「水鳥から聞いたからだが、他には?」


「…………」


「ないみたいだな、よし廊下へ行ってこい、お前の居場所はここじゃない」


「ひどい!」



ガラガラガラ、バタン

仕方ないからしぶしぶ教室を後にする。そう言えばバケツってどこにあるんだろう?


「めんどくさいけど、探しに行くか。トイレには用意されているだろうし。」

俺はバケツを持ちしばらくの間、廊下に立ち尽くしていた。


あれからどれくらいの時間がたったのだろうか?廊下だけに!

はぁ、つまらないなやることが、なさすぎる。そう言えば去年の今の時間は自己紹介をしていた気がする。


ガラガラガラ


「雷騎もう入ってきていいぞ、むしろ入れ、自己紹介お前が最後だからな。」


俺がそんなくだらないことやどうでもいいことを考えていると、教室のドアが開き宗兄から入っていいとの許可を貰えた。それにしても宗兄、せめて自己紹介の場にはいさせてくれよ、ただでさえ、人の名前と顔を覚えるのが苦手なのに。俺は、宗兄に少しだけ恨めしい視線を送り教室の中へと入る。


中に入ると、皆からの視線が飛んできた。これだけ見られてると緊張するな。


「じゃあ雷騎教壇の前で自己紹介を頼む、時間は有限だから、早めにやれよ、どうせお前の自己紹介なんて興味あるやつなんかほとんどいないだろうからな。」


この教師いつかぶっとばしてやろうか、いくら仲が良いとは言っても、限度はあると思うんだ。

少しイラッとしたが、横目でチラッと黒板のスケジュールを見ると確かに時間はあまりなかった。

俺自身も自己紹介は早く済ませたかったこともあり、俺はバケツを目の前の床に置くと早速自己紹介へとうつ


「雷騎バケツは手に持っとけ」


れなかった…邪魔が入りはしたが、気を取り直してバケツを持ち上げると、今度こそ自己紹介へと移る。


「俺の名前は飛流雷騎、趣味はスポーツと漫画、好きな言葉は全力で楽しむ、皆一年間よろしくな!」

まぁ、自己紹介はこんな感じでいいかな、意外と悪くない自己紹介だったと思う。


「さぁ、皆の自己紹介が終わったところで、早速今日の日程について、説明するぞ。まずは、これからいつも通りグラウンドへと向かい学校行事の花見を行う。時間は二時間あるから、学校内を自由に見て回ってもいいし、そこで昼食をとっても構わない。ただし、最初の20分間は、例年通り、他クラス、自分のクラスの順に男女ペアとなって雑談をしてもらう。これは少しでも色々な人との交流を深めてほしいとの学園長からのお達しだ。友達は多くて困ることはあまりないからな。話が盛り上がることを願ってるぞ。それと男子の諸君に一つだけ忠告がある。女子ネットワークは怖いこれは覚えておけ。」


一体宗兄の過去に何があったのか非常に気になるが、今は質問をするべきではないので、あえてスルーしておく。


「じゃあ今から紙を配るぞ、雷騎、バケツ置いて手伝ってくれ、これ半分廊下側に頼む、配り方は任せた。」

俺は宗兄の指示に従って紙を配っていく。半分のクラスメイトに配り終えたところで、宗兄からクラスのみんなに向けて声がかけられた。


「それじゃ、その紙持って移動するぞ、貴重品も一緒に持って行けよ、教室は施錠するからな。皆は先にグラウンドで集まっててくれ。雷騎だけは少し残るように。」


その言葉を合図に全員がグラウンドへと向かう。残った俺は宗兄に残らされた理由を聞くことにした。

「宗兄どうして俺だけ居残りなんだ?」


「お前まさかバケツそのままにするつもりじゃないだろう?」


あぁ、忘れてた、すっかりポーンと忘れてたよ。

むしろなんか腕が痛いな何してこうなったんだっけってレベルで忘れてた。


「当たり前だろそんなことするわけない。俺は宗兄が思ってるほど記憶力悪くないからな」

我ながらどの口が言うのかと思ったが、動揺を見せると気づかれるので、俺は肩をすくめながら努めて冷静に答えた。


「それならいいんだ、ならそのバケツをグラウンドまで持ってきてもらえるか?このイベントで極たまに、はしゃぎすぎて捻挫するやつとかいるからな。アイシング代わりにもなるから、持ってきてくれないかって保健の先生に頼まれてたんだ。」


「それで、代わりに俺にバケツ持たせたのか。俺がグラウンドまで持って行っても違和感がないようにするために」

なんだかんだでこの人は色々なことを考えているということが分かった。新しい一面を見れて、俺は少しだけ嬉しくなった。宗兄のことは人として好きだからな。


「度重なる遅刻者への罰も与えとかないと、教師として示しがつかないことが多々あるからな。一石二鳥だ。」

たしかにそうかもしれない。人を教える立場の人間が教えることを拒んだりすれば、それは職務放棄と周りから言われる可能性もあるだろう。


「宗兄も色々と大変なんだな。」

俺はしみじみとそう思った。


「そう思うなら、俺はともかく他の先生方にはあまり迷惑をかけるんじゃないぞ。」


「は~い。それじゃそろそろ行こうか、宗兄」

俺は一応返事はしたが、守れるかどうかは少し、いやかなり不安ではある。それでも極力は迷惑をかけないようにはしよう。そんなことを考えながら俺は宗兄と一緒にグラウンドへと向かった。

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