3話 ソロコンテストと恋の狂詩曲(ラプソディー) #3
一方、時は流れ……、3000年。
パンドラクロスside
ウィルはフィオナの部屋の近くにいた。彼は彼女の部屋のインターホンを押すか押さないかどうするか迷っているようだ。
「フィオナさんは俺のこと、どう思っているんだろう?」
そんなウィルに1人の少女が話しかけてきた。
「あれ? ウィル、こんばんは。どうしたの?」
「あっ、ラファさん、こんばんは。今日、フィオナさんは見ましたか?」
「今日、フィオナさんは会っていないけど、どうして?」
「そうですか……。で、ラファさんはどこかに出かけるのですか?」
ウィルはラファに問いかけた。彼女の手には、キャリーバッグとアルトサックスが入っているだろうと思われる楽器ケースを持っていた。
「うん。ちょっと実家に戻ろうかなと思って」
「だからですか。私服姿も可愛いなと思って……」
「そぉ? ありがとう」
「いいえ、ラファさん、気をつけて行って帰って来てくださいね」
「うん。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
ラファとのお喋りは終了した。
数分後……。
ウィルはフィオナの部屋のインターホンを押した。押したのはいいが……。彼女からの反応がなかった。
その時、また、ウィルに話しかけてきた。今度は少年だった。
「おっ、ウィル、こんばんは。どうした?」
「こんばんは、セロンさん。今日、フィオナさんは見ましたか?」
ウィルはセロンにラファと同じことを問いかけた。
「いや、見てないよ。『フィオナさんは見ましたか?』って聞くけど、常識的に考えればお風呂に入っているんじゃないのか?」
「そういうセロンさんはお風呂に入ったんですか?」
「あぁ、入ったよ」
「そうですか……。ありがとうございます」
「じゃあ、また明日。おやすみ!」
「おやすみなさい」
そして、セロンが自室に向かったのを見計らって、フィオナの部屋の間のラファの部屋を通り過ぎて、イナーシャの部屋に向かった。
一方、フィオナは……。
彼女はお風呂に入ろうとしていた。その時、彼女は脱衣室におり、服を脱ごうとしていた。彼女のスラリと高い身長(注・イナーシャも同じくらいの身長である。)の細身でスタイルのいい身体が今、あらわに……。
お風呂シーンはカット。
「今、インターホンが鳴ったけど……。まぁいいか」
彼女はシャワーを浴びた。
その時、エリアスは……。
彼は彼の部屋にいた。
「フィオナさんは僕のことをどう思っているんだろう?」
エリアスもフィオナのことを考えていたのであった。
ウィルは……。
ウィルはイナーシャの部屋のインターホンを押すか押さないかどうするかまた迷っているようだ。またしても女性の部屋である。
ついに、インターホンを押した。
「ハイ、こちらはイナーシャ。名前をどうぞ」
「こんばんは。俺です、ウィルです。入ってもいいですか?」
「ハイ、分かりました。どうぞ」
「ハイ、失礼します」
ウィル、女性の部屋にいざ出陣。
「こんばんは、イナーシャさん」
「こんばんは、ウィル。どうしたの? さっき、ラファとセロンがウィルに会ったっていってたからさ。で、何か用があって来たんでしょ?」
イナーシャはお風呂上がりだったらしく、綺麗にネグリジェを着ていた。テーブルには、1冊の本と紅茶が入っていたとされるティーカップが置いてあった。
「あっ、ハイ。あの……、好きな人に思いを伝えるにはどうしたらいいのですか?」
「ウィル、恋してるでしょ?」
とネグリジェ姿のイナーシャにいわれて、ちょっとドギマギしたウィルであった。
「恋?」
「好きな人に思いを伝えるにはどうしたらいい?っていったでしょ? その好きな人に自分の気持ちを素直に伝える方がいいね」
と、微笑みながら答えた。
「自分の気持ちを素直に伝える?」
「そう」
「それと、フィオナさんはお風呂に入ると何分かかりますか?」
「うーん、同じ時間にお風呂に入ったとして……。彼女の場合は『何分』じゃなくて、『何時間』といった方が妥当ね。彼女のお風呂は人一倍長いからね」
「同じ双子でもお風呂の時間に差があるんですね……」
「そうなの。双子って、すべてが同じように行動するとは限らないから」
「ありがとうございます。是非参考にさせてもらいます」
「いいえ。じゃあ、また明日ね」
「おやすみなさい。失礼しました!」
ウィルはイナーシャの部屋を出て、ラファの部屋をまた通り過ぎて、フィオナの部屋に向かった。
その頃、フィオナは……。
彼女はお風呂から出てきた。彼女の濡れた身体はバスタオルで拭き取られ、それを身に纏った。濡れた髪を小さいタオルを使って拭き取っていた。
マグカップに牛乳を入れようとしたやさき……。突然、インターホンが鳴った。
「ハイ、こちらはフィオナ。名前をどうぞ」
「フィオナさん、俺です、ウィルです。入ってもいいですか?」
「ハイ、どうぞ」
「失礼します」
「こんばんは、フィオナさん」
「ウィル、こんな遅くにどうしたんだ?」
「あっ、あの……。フィオナさんは俺のことをどう思っていますか?」
ウィル、今度はバスタオルに身に纏ったフィオナを見てまたドギマギしていた。
「ウィル、唇が乾いてるぞ。牛乳があるけど、飲むか?」
フィオナはマグカップを2つ用意して牛乳を同じくらい注いでそのうちの1つをウィルに手渡した。
「……。ありがとうございます……。(フィオナさん、優しい……。)」
2人は暫し、沈黙。
「さっき、ウィルは私に俺のことをどう思っていますか?っていっただろう」
「ハイ」
「私はウィルのことをどう思っているのかというと……」
また、暫し、沈黙。
しかし、フィオナはツンとした表情を浮かべた。
「私はウィルには他のメンバーにないものを持っていると思う」
「他のメンバーにないもの? それは何ですか?」
「それは自分で考えな。今、私の部屋にいるということはウィルは私に好意を寄せていたりする?」
フィオナはウィルの顔を覗き込むようにして問いかけた。
「かもしれません……」
「私には好意を寄せている人がいる……。それはウィルとは限らないけどね……」
「そうですか……。フィオナさんの貴重な意見、ありがとうございました。牛乳、美味しかったです」
ウィルは空になったマグカップをフィオナに手渡した。
「どういたしまして。おやすみ、ウィル。また明日ね」
「ハイ。失礼しました、そして、おやすみなさい」
ウィルが姿を消した(自室に戻った)後、フィオナは髪をドライヤーで乾かしながらこう思っていた。今は夏場なのでほとんど乾いているけどね。
「……。(私が好きな人はウィルじゃない……。私が好きな人はエリアス……。彼が本命なんだから……。)」
と。
ウィル、エリアス、フィオナの3人の恋は動き出したばかりである……。
さて、時は戻り……、2010年。
宿泊室
「さあ、トランプ大会を始めようか!」
「ワーイ!」
「私たちもやる!」
なんと、みんなでトランプ大会に参加!
「じゃあ、何やる?」
「んー……」
暫し、沈黙……。
結論、しちならべからスタート。
「じゃあ、トランプを分けるよ。枚数関係なく分けるからね!」
「了解」
エズミが全員にトランプを配っていく。配られる枚数は1人2〜3枚くらいだ。
「エズミ先生、すぐに終わってしまう人が出ちゃいますよ。15人いるんですからどちらかが7人で、どちらかが8人でいいんじゃないんですか?」
「あっ……。そうだね……」
エズミ、そのことをようやく思い出したのであった。
ハイ、チーム分け。
エズミ、リヴァル、ナミ、アール、シヴァ、アリア、カイルの7人で1グループ。ロイド、エル、ロゼ、マリア、オペラ、ラドル、ザーク、レイムの8人で1グループで決定。
エズミside
「よーし、今度こそトランプを分けるよ」
「ハーイ」
ロイドside
「ハーイ、トランプを分けるよ」
「ハーイ」
1回戦、再びしちならべ。
「よし、開始!」
エズミのコールでトランプ大会が始まった。
ロイドside
「さあ、誰からトランプを出す?」
「マリア(ロゼ)が出したいっていってまーす!」
そこの3年生コンビは無駄にテンションが高い。他のメンバー、唖然。ロゼはまだ、コンタクトか裸眼かは分からないが、
「あれ? 眼鏡、どこ?」
といった。
「ロゼさんの眼鏡は俺が持っていますよ」
とザーク。
「あっ、でも今はコンタクトをしてるからいらない」
ハイ、ロゼはコンタクトをしていたのであった。
「そうですか……」
ザーク、残念。
「じゃあ、マリアから!」
ロイドに促されたマリアであった。
順番はマリア→ザーク→ロゼ→レイム→オペラ→エル→ラドル→ロイドの順番になった。
エズミside
「よーし、誰から出す?」
「じゃあ、俺からで」
シヴァがトランプを出してきた。流石だな。ロイドたちと違うなぁ……。
「比べないでくれない?」
あっ、すみません。ロイドに怒られちゃった。
話を戻して……。
「じゃあ、シヴァから!」
「ハイ」
順番はシヴァ→ナミ→カイル→エズミ→リヴァル→アール→アリアの順番になった。
ロイドside
「レイムとザーク、暑苦しい……」
女性陣はいう。2人はロゼを賭けてしちならべで戦っている……。
「あっ、パス」
ロゼが残念そうにいった。レイムが……、
「次は僕の番ですね……」
「お前もパスなんじゃねぇーの?」
ザークがちゃかす。
「大丈夫だもーん! ほら、あった」
ハイ、ダイヤが全部揃った。ザークは口をポカンと開けていた。
「う、嘘だろ……?」
「ほら、ダイヤが綺麗に揃ってるでしょ?」
レイムはみんなに揃っていることを実に楽しそうにいった。
「まぁな……」
「レイム、凄い!」
ザーク以外の人たちがいう。ロゼが…、
「今日はツイてるじゃん」
「冷静なコメント、ありがとうございます」
数分後……。
まだ、トランプを持っているのはロゼ、レイム、ザークの3人。(注・トランプの残量が少ない順。)
「げっ、暑苦しい2人となの?」
「暑苦しいとは失礼です!」
3人はトランプを引きは出しの繰り返しだった。レイムがロゼの最後の1枚を引かれて……。
「ワーイ! 終わった!」
「ロゼ(ロゼさん)、お疲れ様でした。」
「ホントにお疲れ様だよ。頑張ってね、レイム」
残ったメンズ以外の人たちがいった。ロゼは嬉しそうに、そして、2人をからかうようにいった。
「ハイ」
レイムはロゼにからかわれているのに対し、ザークが嫉妬したかのように……。
「うわー、ずるっ! レイムだけ。ロゼは俺にも頑張って欲しくないんですか?」
「……」
シラケた。
「うん、頑張って欲しくない」
残念なザークであった。ちゃんちゃん♪
最終的に、ザークはレイムに負けたのであった。
エズミside
「……。」
こちらは無言のトランプ。みんな、真剣だなぁ……。
「終わった!」
エズミが嬉しそうにいった。他の面子が……。
「えっ、もうですか?」
「凄い……」
「俺、もう1枚」
とシヴァ。
こちらはどこかの誰かさんたちとは大違いで、トランプバトルは繰り広げられていない。いわゆる、平和なトランプをしているようだ。だが、どこから見ても無言のトランプといった方がいいだろう。
数分後……。
そろそろ、最下位争いに来たところなのに……。
「……」
静かなトランプはまだ続いていた。
「俺、バツゲーム?」
カイルが焦り始めた。
「やだ、そんなこと、いわないでくださいよ。カイル先生」
「私も」
アールとリヴァルも焦り出したようだ。