3話 ソロコンテストと恋の狂詩曲(ラプソディー) #2
音楽室
「視聴覚室から音が聞こえないけど……。まぁいいか、2人とも、もう1回、さっきの曲、聞かせてくれないかな?」
とロイドが2人に頼んだ。相当、『Trombone concerto』が気に入ったようだ。
「ハイ」
数分後……。
「ロゼとレイム、視聴覚室にいるみんなを呼んで来て」
「ハーイ」
視聴覚室
「あの足音は……。ロゼの足音?」
「かもね」
ハイ、あっという間にロゼとレイムが視聴覚室に着いていた。
「こんにちは」
「みんな、至急音楽室に集合!」
「ハーイ」
音楽室
「みんな、午前中の練習、お疲れ様。午後は体育館で練習ね!」
「ハイ!」
それから、全員で昼食を取った。
約1時間後……。
「さて、体育館に楽器やらいろいろなものを持って行こう!」
「ハイ」
「じゃあ、どうやって持って行こうか」
みんな、考え始めた。Let's thinking time! チクタクチクタク♪ちっちっちっポーン♪
「そうだ!」
リヴァルとマリアが何かを思いついたようにいった。
「あのね、ナミが私のクラリネットを持って、ザークがロゼのホルンを持って行って」
「それで、私がレイムのトロンボーンを持って行って、オペラはアールのトランペットを持ってあげて。それで、手の空いた人はパーカッションを持って行く方針で」
「先生たちもパーカッションの方をお願いします」
「りょーかい♪」
と呑気な返事を返した。
楽器やら譜面台などを持って行くのに、1人2往復ずつ音楽室と体育館に行き来していた。
「じゃあ、先にロゼとレイムのソロコンテストの曲をやろうか。2人とも、ステージに登って!」
「ハイ!」
「あっ、2人とも、ちょっと待って!」
「ハイ?」
「何でしょうか?」
「ソロコンテストの申込書の名前、間違っているか確認して」
「ハイ」
エズミが彼女らに見せたのは『第20回 ソロコンテスト申込書』。そこには顧問名、伴奏者名、演奏者名と書いてある。2人はその紙を覗き込み確認する。
「先生、OKです」
「分かった。じゃあ、郵送で送っておくね」
「ハイ」
「じゃあ、本番と同じように衣装を着てやってみる?」
「衣装、用意しているんですか?」
レイムがロイドに問いかける。
「うん。まだ、仮だけどね」
「仮でもいいので是非着てみたいです!」
ロゼはエルに必死で頼んでいるようだった。
「了解。ちょっと待っててね」
ロイドとエルはどこかへ姿を消した。
数分後……。
「ロゼはこのドレスが似合うんだよね……」
ロイドはロゼに黒いドレスを着せてこういっていた。
「意外とロゼはスタイルがいいんだな……。レイム、こうスタイルがいい人はさほどいないぞ。こっちも黒の方がいいかな? あっ、そうだ、ロゼ、眼鏡を外してみたらどうだ?」
「そうだよ。外してみなよ」
ロゼはそっと眼鏡を外した。
「き、綺麗……」
「こういうのロゼしかできないよ」
ロイドとエルは結婚式に行ってしまう娘を見ているような口調でいった。
「先生、眼鏡をつけてもいいですか?」
「ダメダメ。コンタクトは持ってないの?」
「今、持ってますが……」
「2人は靴を持ってくるだけね……。ロゼは黒いヒールかパンプス、ある?」
「ヒールはありますが、かなり踵が高いですよ」
ロゼはコンタクトをしながら答えた。左目にコンタクトが入ったぞ。
「何cm?」
「1番低いもので5cmで1番高いもので10cmです」
「そうか。その5cmのヒールでお願いね」
「ハイ」
一方、レイムは……。
「レイムは革靴はあるか?」
「ハイ、ありますよ」
「2人は準備できた?」
エズミの声が響いた。ロイドとエルが、
「OKです!」
と答えた。
体育館のステージ下でリヴァルとオペラがロゼとレイムの楽譜と譜面台を準備していた。ステージでは、アリアとカイルがピアノを動かしたりしていた。
「では、始まり始まり」
パチパチ♪
エズミのコールで2人は姿を現した。
2人はお辞儀をし、自分の立ち位置についた。
演奏が始まった。
ロイドとカイルはステージ下に移動して、他のメンバーとその光景を見ていた。
「ロゼが裸眼?」
「しかも、何か2人とも、キザに見えるのは気のせい?」
「キャーッ! ロゼさん、スタイルがいい!」
セリフの上から、ナミ、ザーク、オペラがいった。
約5分後……。
演奏が終わった。2人は上手にステージ裏に戻り、ステージ下に駆けつけた。
「ロゼ、無理して駆けつけなくていいんだよ。ヒール、履いてるんだし」
「無理はしていないよ。ヒールで走り回るの多いし」
「何か、ソロコンテストの練習で午後の練習終わっちゃったね。じゃあ、ロゼ以外の3年生とアールは買い出しに行こうか」
「今日はどっちが作るのですか?」
「今日は金管で、ロゼとレイムは着替えがあるから他のメンバーは楽器と楽器を1ヵ所にまとめておいてね」
アールとロゼ以外の3年生のメンバーが姿を消した。それを見計らってロゼが携帯電話を取り出した。
「じゃあ、レイム、写真でも撮ろうか。オペラ、ちょっと来なっ」
ロゼはオペラを呼び出した。
「ハイ」
ロゼの携帯電話はカメラモードになっていた。
「じゃあ、ズームする時は上下させれば動くし、真ん中の四角いところを押せば写真が撮れるから」
「ハイ。分かりました。全身ですか?」
「うん。全身で」
リン♪
ロゼの携帯電話のカメラモードの音が鳴った。
「綺麗に撮れました♪」
「ありがとう。オペラ、楽器の方が終わったら待ってて」
「ハイ」
ロゼとレイム、お着替えタイム。
「お待たせ」
「ロゼさん、お疲れ様でした」
「じゃあ、みんな、荷物を宿泊室に運ぼうか」
「ハイ」
6人は全員分の鞄を宿泊室に運んだ。
「ロゼたちが、宿泊室にみんなの荷物を運んでおいてくれたんだ」
「ハイ。ロイド先生、先程のドレスも宿泊室に置いておきました」
「ありがとう」
「さあ、金管チームのみんな、ご飯を作って来てね!ロゼは18時前にできたら誰かにメールか電話してね」
「ハイ」
調理室
「ねぇ、マリアとアール、何を買って来たの?」
出てきたのは玉ねぎだけ準備すれば簡単にできるエビチリの料理セットと、3個入りの杏仁豆腐。
「ロゼはエビチリが食べたいっていってたよね」
「うん、いってた」
「ちなみに、デザートは杏仁豆腐ですよ」
「へぇー、今日は中華だね。でも、人数は多いんじゃないの」
「確かに」
ロゼは人数を計算をしていた。
「じゃあ、私とマリアはエビチリを作るから、アールとレイムはご飯を炊いて。それでシヴァとザークはテーブルのセッティングと食器を出して」
と彼女はテキパキと指示を出していた。
「了解」
ロゼside
ロゼは某料理セットの袋を開けながら……。
「マリア、玉ねぎは何個必要なの?」
「玉ねぎは中ぐらいの2〜3個だって」
「この玉ねぎは結構大きめだから、半分くらいかな。足りない分は微調整をしよう」
「分かった」
アールside
こちらは順調だった。米の分量と水の分量は完璧だった。
数分後……。
炊飯器にお釜をセットして、ご飯炊きスタート。
シヴァside
「必要なものは……。箸、スプーン、茶碗、器、コップを15人分か……」
「出したら、軽く水洗いしましょう」
「そうだな」
こうして、順調に夕食の準備が進み、後は食べ終わった食器を片付けるだけの段階になっていた。
「全部、終わったよね?」
「うん」
「じゃあ、リヴァルに電話をかけるね」
宿泊室
「あっ、ロゼからの電話だ。もしもし」
『もしもし、リヴァル?ご飯、作り終わったよ』
「すぐに行くね」
『ハーイ』
「ロゼからご飯作り終わったという電話が来ました」
「じゃあ、調理室に行こうか」
「ハイ」
調理室
「うわぁ。凄い!」
「ちゃんと飲み物とコップまで用意してある」
「流石、ロゼだよね。マリアとは違って全員に指示を出してやったとか?」
「そう! ロゼが木管担当だったら、こんなに早くご飯を作り終わらないもん」
「マリアさん、ロゼさんとレイムはソロコンテストの練習で疲れているんですから、無駄な体力を使わさないでくださいね」
「ハーイ」
「オペラ、私とレイムに気を使わなくてもいいんだよ」
「ご飯が冷めないうちに食べようか!」
「いただきます」
彼女らは夕食を取った。
「今日は夜の予定を変えて何やりたい?」
エズミが部員たちに問いかけた。
「私、トランプを持ってきたので、トランプ大会でもやりませんか?」
オペラが楽しそうにいった。
「あっ、オペラ、私に復讐する気ね!」
「俺もやりたいです! レイム、お前もやるよな?」
「僕もやります! ザーク、お前には負けないぞ!」
「あっ、その前に楽器とかいろいろなものを片付けないとね……」
「私たちが楽器の方を片付けておきます。金管チームの楽器はトロンボーン以外は楽器ケースに戻しておきますね。なので、ロゼさんたちは後片付けをやってください」
オペラがいった。
「オペラ、なんていい子なの」
ロゼがオペラをほめちぎる。なんてキザなのでしょう?
「今日のご飯が美味しかったので、そのお礼です」