1話 それぞれの出会いと結成
人には現実に生きる自分と夢に生きる自分がいる。
そして、ここにいる11人の演奏者たちもそのうちのメンバーである。
パンドラクロスとライトレイ。そこで待ち受けるバトルと冒険が今、始まる……。
遥かに未来の世界の3000年……。
パンドラクロスside
こちらはパンドラクロスの館……。そこに向かう2人の少年の人影が現れた。
「ここか……。パンドラクロスの館は……」
「うーん。ここかなぁ?」
2人は顔を見合わせた。
「お前は誰だ?」
「はじめまして……僕はエリアス。16歳です。君は?」
「俺? 俺はウィル。俺も16歳」
「楽器は? 僕、トロンボーン」
「俺もトロンボーン」
「うわぁ、一緒だぁ!」
「僕たち、同い年っていうことだよね?」
「よかった……。同期がいて……」
ウィルとエリアスはこうして出会った。
ライトレイside
ライトレイの建物はパンドラクロスよりシンプルなログハウスだった。
1人の少年がそこに向かう。
「ここか……。今日から過ごす場所は……」
その時、ドアが開き、1人の少女がじょうろを持って現れた。
「いらっしゃい。貴方の名前は?」
「は、はじめまして。僕はロブ」
「私はティー。今日からよろしくね、ロブ」
ロブとティーはこうして出会った……。
パンドラクロスside
「ん? インターホンがある」
エリアスがインターホンの存在に気づいた。
「押してみるぞ」
「うん」
ウィルはインターホンのボタンを押した。
ピーンポーン♪
1人の少女らしき人が出た。
「こちらはフィオナ。名前をどうぞ」
「えっ、名前をいわないと駄目なんですか?」
「ハイ。防犯やセキュリティのためなので……」
「そうですか……。僕はエリアスです」
「俺はウィルです」
「ハイ、分かりました。今から行きますね」
インターホンが切れた。ウィルとエリアスは……。
「どんな人だろう。「フィオナ」って……」
数分後……。
「はじめまして、こんにちは。エリアスとウィル」
「あなたがフィオナさん?」
「そうだけど」
フィオナは目がテンになるウィルとエリアスを見て笑いながら答えた。
「このお屋敷は凄くないですか?」
「そう? まぁいい、これからお父様のところに行ったあと、敷地内を案内する」
「ハイ、分かりました。」
3人が敷地内に入ったあと、また1人の少女と1人の少年が玄関にいた。
「タッチの差ね……」
「そうだな……」
おやっ?意外と仲がよさそうだ……。
「何これ? 押してみる?」
「うん」
ピーンポーン♪
再びインターホンが鳴った。
「こちらはイナーシャ。名前をどうぞ」
こちらも少女がインターホンを出た。
「ハイ。私はラファです」
「俺はセロンです」
「ハイ、分かりました。今から行きますね」
数分後……。
「はじめまして、こんにちは。セロンとラファ」
「こんにちは。イナーシャさん。」
「これからお父様のところに行ってから敷地内の案内をするわね」
「ハイ」
フィオナside
「あと少しでお父様の書斎に着く。失礼のないようにな」
「ハイ。」
3人はイナーシャ達にはまだ、気づいていないのであった。
イナーシャside
イナーシャとラファとセロンはフィオナとウィルとエリアスより、遅めに敷地内に入った。
「お父様の書斎に入るから、できるだけ失礼のないようにね」
「ハイ」
「分かりました」
セロンとラファが答えた。
ライトレイside
ロブはティーに導かれて、敷地内に入った。
「あら、ティー。その人は誰?」
「彼はここに入るの?」
2人の少女がティーに話しかけた。
「サラさん、リリアさん、彼はロブ。どうやらここに入るらしいです」
「はじめまして。僕はロブです」
「わぁー、男の子だぁ。ここは男の子1人しかいないからね。私はサラ。よろしくね、ロブ」
「ここはパンドラクロスより人数は少ないけど、楽しく過ごそうね。私はリリア。よろしくね」
サラとリリアがロブに自己紹介をした。ロブは何か疑問点があったかのように……。
「パンドラクロス?」
と、問いかけた。
「『パンドラクロス』とは、敵の組織よ。彼らは私達を恨んで(憎んで)いる組織。そして、私達は失われた時と大切なものを取り戻す(救ってあげる)組織よ」
ティーが解説する。
「へぇー……」
ロブは納得したようだった。
「サラさん、リリアさん。ロブを師匠のところに行くついでに、敷地内の案内をしてもいいですか?」
「いいわよ。」
「いいよ♪」
パンドラクロスside
トレイズの書斎にて。
フィオナはインターホンを押そうとした時……。
「フィオナ、待って!」
1人の少女がフィオナのところに駆けつけた。彼女はフィオナと同じ顔だったので、双子だろうか。
「イナーシャ。そっちもお客様がきてたんだ」
「うん。メンバー、揃っちゃったね」
「そうだね……」
双子の会話が数分続いた。
ライトレイside
ロブはティーにまた導かれて、ある部屋に着いた。
ティーがドアをノックする。
「どうぞ」
澄んだ女性の声がした。
「ハイ。失礼します」
ティーは丁寧に返事をしてから部屋に入った。
「失礼します」
ロブも部屋へ入って行った。
「ティー、そちらの人はどなた?」
「彼はロブです。今日からここに入るみたいです」
「はじめまして、僕はロブです」
「はじめまして、ロブ。私はネロ。ここにいるティーやサラ達の師匠です」
この人が師匠? かなりの美形だぞと、ロブは思った。
「き、今日からよろしくお願いします」
「うふふ、こちらこそ。あなたは何か楽器はできるの?」
「ぼ、僕はチ、チューバを弾くことができます」
「へぇー……。チューバかぁ。凄いね」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、ティー。ロブに敷地内を案内してあげて」
「ハイ、分かりました。失礼しました」
「失礼しました」
パンドラクロスside
フィオナがインターホンを押した。
「こちらはトレイズ。名前をどうぞ」
「フィオナと……」
「イナーシャです。お客様を連れてきました」
「ほう……、そうか。どうぞ、入ってくれ」
フィオナとイナーシャのお父さんらしき人の話が終わった。
「みんな、入るよ!」
フィオナが実に楽しそうにいった。
ガチャ。
「失礼します」
「フィオナ、イナーシャ、この4人は今日からここに入る人間達か?」
トレイズがいった。
「ハイ、そうです。お父様」
フィオナとイナーシャがかしこまったような口調で返答する。
「ほう。さて、1人ずつ自己紹介をして貰おうとするか。では、そこの僕からお願いする」
「ハイ。僕はエリアスです。トロンボーンを演奏することができます」
「俺はウィルです。エリアスと同じくトロンボーンを演奏することができます」
「私はラファです。アルトサックスを演奏することができます」
「僕はセロンです。ユーフォニウムを演奏することができます」
「君達のこと、少し分かったよ。次は私の娘達の紹介だ。フィオナ、私はちょっと外出する。例のあれのこと、忘れるなよ」
「ハイ。行ってらっしゃいませ、お父様。さて、私達の自己紹介をします」
フィオナは一旦、言葉を切って……。
「私はフィオナです。ホルンを演奏することができます。ここにいるイナーシャの姉です」
「私はイナーシャです。クラリネットを演奏することができます」
「あ、あの……。」
「何? ラファ」
「フィオナさん達って……双子ですか?」
「そうだよ」
ラファはもちろんのこと、3人の男子達は口をポカンと開けていた。あまりにも衝撃的な事実を知ってしまったからであろう。
気づいたらフィオナとイナーシャは後ろを向いた。4人はキョトンとした。
遥かに過去の2010年……。
今日から新入生を含め、11人の部員が音楽室にいた。
「私はエズミ。35歳独身、よろしくね。じゃあ、3年生から自己紹介をして」
吹奏楽部の顧問のエズミがいった。
「私はリヴァル。クラリネットを担当しています」
「私はロゼ。ホルンを担当しています」
「私はナミ。フルートを担当しています」
「私はマリア。トロンボーンを担当しています」
3年生は4人。担当している楽器は見事にバラバラ。
「続いて2年生」
エズミは先を促す。
「私はアール。トランペットを担当しています」
「私はオペラ。アルトサックスを担当しています」
「俺はラドル。パーカッションを担当しています」
「俺はシヴァ。ユーフォニウムを担当しています」
2年生も4人。こちらも見事にバラバラ。1年生の3人はどうだろうか?
「じゃあ、次は1年生。1年生はちょっと長めに話して貰おうかな」
「僕はラーグ。チューバを担当します。楽器を演奏するのは小学生以来なので覚えているかどうか不安ですが精一杯演奏しますのでよろしくお願いします」
「僕はレイム。トロンボーンを担当します。中学時代からこの楽器に出会いました。まだまだ未熟なところがありますが、どうぞよろしくお願いします」
「俺はザーク。トロンボーンを担当します。レイムと同じ時期にこの楽器に出会い、今では俺のお気に入りです。どうぞよろしくお願いします」
全員の自己紹介が終わった。
「うわーっ。トロンボーンがいっぱいいる」
マリアが嬉しそうにいった。
「マリア、パートリーダーなんだからしっかりしてね」
マリアの隣に座っていたロゼが心配そうにいった。
「何か曲でも演奏する? 楽譜ならこちらで準備するからね。ロゼとリヴァルはザークとレイムとラーグに楽譜と譜面台を準備してあげて」
「ハイ」
また次元を戻して……。
パンドラクロスside
フィオナside
「ねぇ、フィオナ。「例のあれ」って、何のこと?」
「あぁ、「あれ」のことは実は衣装のことなんだ。彼らが今、着てるのは私服っぽいし、それだと闘いにくいだろう。」
「ふーん、なるほどね……。どうやって、「例のあれ」をやるの?」
「こうやって、やるよ!」
「懐中時計?」
「うん。いくよ!」
カチャッ。
懐中時計が止まった。4人の男女の動きが止まった。フィオナは1人1人の前に立ち、指をパチンと4回鳴らした。
「これでいいの?」
イナーシャが問いかける。
「これでOKだよ!」
フィオナが満面の笑みで答えた。
カチャッ。
懐中時計が時間を取り戻すかのように動き出した。
「……」
みんな、きょとんとしている。
「「例のあれ」って……。この衣装のことですか?」
「そうだよ。これはお父様からのプレゼントだと思えば妥当だな。これから、冒険が始まるよ!」
「フィオナさん達のお父様、ありがとうございます。」
ライトレイside
「ロブ、この服に着替えて」
ティーがロブに差し出したものは……。パンドラクロスと同じように、衣装のプレゼントだった。
「い、いいんですか?」
「いいのよ。今日から貴方のものなんだから」
「ありがとうございます」
「いいえ」
未来の世界では、パンドラクロスとライトレイ。それぞれが出会い、新たなる冒険の開始はそう遠くはないだろう……。
現在の世界では、これから楽しい時間(?)を過ごすことになるだろう……。