5話 複雑な思い〜知られざる真実とともに……〜
この作品は原作そのままを投稿しています
あとから『改訂版』を投稿しますので、ここでは改稿は行いませんので、ご了承ください
更に数分後……。
司会進行の生徒が……。
「さて、では、最後は吹奏楽部の発表です!」
「彼女らの素敵な演奏を楽しんでくださいね!」
「なんたって、先程、登場したロゼさんの最後の演奏です。彼女の音を噛みしめていってください! では、どうぞ!」
という流れで、本番スタート!
ステージ裏
「ロゼ、悔いの残らないように、演奏しな」
「ハイ。先生、今にも涙が出そうです……」
「本番で泣かないようにね」
エズミはロゼの身体を抱き締めた。ロゼはエズミに対して驚愕した。なぜなら、部員全員の前で突然、抱き締めるのはどうだろうかと思ったからだ。
「ロゼ(ロゼさん)、一緒に楽しもうよ(楽しみましょうよ)!」
「うん!」
ロゼの泣きそうな顔から笑顔に変わった。それは無邪気な少女が何かを買ってもらって嬉しいと思えるような表情だった。
「ステージの幕を開けます。いいですか?」
司会進行の生徒がエズミに問いかけた。
「ハイ」
幕が上がった。
ロゼにとっては引退へのカウントダウンが今、始まろうとしている……。
演奏が始まった。全校生徒が知っている曲を演奏した。
ロゼは1曲1曲が終わるに連れて、明日の一般公開日にはみんなで引退したかった。先に引退してしまう自分にとって、後輩たちにいいことをしたのかなどと、思いながら演奏したのであった。
最後の曲を演奏し終えた時には……、ロゼは泣き出してしまった。観客席からは……。
「ロゼちゃん、お疲れ様!」
「ロゼ、よくやった!」
などといわれ、彼女は涙ながらにしながら手を振った。
突然、エズミがロゼにマイクを渡した。
「これで、感謝の気持ちを伝えてごらん」
「ハイ」
ロゼはマイクを受け取って全校生徒はもちろんのこと、吹奏楽部員に感謝の気持ちを伝え始めた。
「みなさんこんにちは。ロゼ・カレンです。まぁ、先程のコスプレ企画にも出てきたので、ご存じだと思いますが。さて、吹奏楽部の演奏を聞いていただきありがとうございました」
一旦区切って、一礼するロゼ。すぐに……。
「しかし、明日の一般公開日は残念ながら受験のため、他の同期のメンバーと一緒に引退できないのは少しながらあります。ですが、残りのメンバーで一般公開日の発表会を盛り上げてくれれば私はそれだけで嬉しく思います。最後になりますが、少人数ですが、素敵な仲間といつも元気で愉快な後輩たちと先生に囲まれた生活はとても充実していて楽しかったです。明日は私以外の同期も引退してしまいますが、1・2年生の元気のよさを引き継いでいってほしいと思います。先生も同様です。それから、観客席にいるみなさん、私たちの演奏を楽しみにしていただきありがとうございます。今回の演奏はどうだったでしょうか?」
観客席からは……。
「よかったで〜す!」
「凄く楽しかったです!」
という声があがった。ロゼは……、
「それはよかったです。すべての人たちに感謝します。ありがとうございました!」
といってマイクの電源を切った。と同時にカーペンターズの『青春の輝き』が流れ始めた。それはサプライズのようで、ロゼは泣いた顔の上に驚きの顔をしていた。それをBGMとしてステージの幕が下がった。
そして、彼女らは上手く引っ込み、前夜祭の最後であるエンドロールを見た。他の生徒は面白そうに見ていたが、リハーサルに参加した生徒はちょっと面白くなさそうにモニターを見ていた。
こうして、学校祭の前夜祭は無事に終了した。
時は流れ……、3000年。
パンドラクロスside
とある射撃場に2人の少年がいた。ウィルとエリアスだ。2人は何やら、口論をしているようだ。
「なぁ、ホントかよ!」
「そうだよ!僕はフィオナさんが好きなんだよ!」
「そりゃ、俺もフィオナさんのことが好きだ!」
「彼女のどこが好きなのか証明できるんかよ!」
「っつ……」
言葉につまるウィル。その横でふと笑うエリアス。
「僕の勝ちだな」
時は戻り……、2010年。
彼女らは音楽室に集合していた。なぜかというと、楽器の後片付けをするためだからだ。
ロゼは今まで使ってきたホルンとマウスピースを綺麗に磨き、洗い、楽器ケースに戻した。かなり分厚くなった譜面入れから、譜面を取り出す。その時、彼女は3年間でこんなに演奏したんだ……。頑張ったなぁ、自分。と思いながらその作業をしていた。
「ロゼ、写真を撮ろう!」
「ハイ!」
エズミがロゼを呼ぶ。それに答えるロゼ。
「今日で全員が揃う時間が最後だから、みんなで写真を撮りたいと思います。いいですか?」
とリヴァルが自分のデジタルカメラを操作しながらいった。
「いいでーす!」
気が付いたら、白衣姿のカイルがカメラを持って待っていた。いそいそと準備をする部員たちと先生。
「エズミ先生、準備完了ですか?」
とカイル。
「ハイ」
とエズミ。
「では、行きます!1+1は?」
「2!」
数枚撮って撮影終了。するとリヴァルが……。
「カイル先生、私のカメラであと何枚か撮ってくれませんか?」
と問いかけた。
「あぁ、いいよ」
とカイル。
「では、また行きます! 1+1は?」
「2!」
「ハイ、リヴァル」
「カイル先生、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
「いいえ、どういたしまして」
とカイルは自分の出番が終わったため、自分が元いた部屋に戻って行った。
「では、ロゼ、最後の一言を!」
とエズミがいった。
「えっ、これまた突然ですね……。3年間ありがとうございました。私は以前いった通り、大学入試の都合により、一般公開日はいませんが、私の分も楽しんで演奏してくださいね。本当にありがとうございました」
と簡単に纏めたロゼであった。
数分後……。
ロゼは音楽室から姿を消したのであった。
渡り廊下に差し掛かった時にジャンの姿があった。
「ジャン先生!」
「なんだロゼ君か」
「先程、話があるっていってましたが、何ですか?」
「ロゼ君の名字は『カレン』だろ?」
「ハイ、そうですが、それが何か?」
「実は俺も『カレン』なんだ。初耳だと思うが、俺らは親戚関係なんだ」
「……、しんせき……?」
「そうだよ。俺とロゼ君は血の繋がった人間なのさ!」
「っていうことはジャン先生は私の叔父さんに当たる人なんですね」
「そういうこと。話はそれだけだ。前夜祭の生徒会企画に付き合ってくれてありがとう」
「それだけって……。まぁ、どういたしまして」
「ロゼ君、明日の試験、頑張れよ!」
「ハーイ!」
ジャンとロゼの関係は血の繋がった親戚であった。2人とも、お疲れ様。
ジャンと別れたロゼは代理の教室に戻った。なぜ『代理の教室』が存在するのかと思った読者が多いだろう。それはちょっとした意味があるのだ。教室は明日の一般公開日のために綺麗にセッティングしてあり、そのセットが壊れないように鍵がかかっているからだ。
「親戚か……」
と呟いた途端に……、
「ロゼさん!」
突然、誰かが叫んでロゼがいる教室に乗り込んで来た。
「レイム!」
乗り込んで来たのは意外なことにレイムであった。
時は流れ……、3000年。
こちらも990年前と同じような光景が見られた。
「ハァ……、どうしよう……」
ハイ、焦っているエリアスであった。
「エリアス、どうしたの?」
イナーシャが近くにいた。
「イ、イナーシャさん、何でもありません」
「そう……」
でも、どうなんだろう。この気持ち、僕には伝わるのかなぁと不安に思っていた自分ががいた。
伝わるのか、伝わらないのかは自分次第なのか否か……。