肝試しを開こう
「おい、良い事思いついたぞ!!今年の夏は皆で集まって肝試ししねえか?」
そんな事を叫んだのは誰だったか。兎にも角にもその一言で僕らの夏の予定が一つ埋まったんだ。
その後は特に語る事は無い。夏休みが始まるまでだらだらと授業を受け、思う存分遊ぶ為に夏の課題を可能な限り減らした。そして肝試しに参加する生徒(主に女子)を集めて、親や教師の許可を取り。そして学年のほぼ全員で行う学校を借りての肝試し計画を完成させた。
日頃はだらだらと意味も無く遊ぶ僕らだがそれ故に遊ぶ為の全力を尽くす。その時の行動力は先生達が保健室をすすめるほどまでに積極的で計画を実行しようとする。やる気が無い時はとことんまで何もしないけどね。
夏休みに入り数日を計画詰めやホラーアイテムの用意をして過ごし、実行日を迎えた。
夕方の部活が終わる頃に学校に入って仕掛けを設置していく。
それほど怖い物では無く、高校生が自分で作れて安く済むような簡単な仕掛けだ。
ライトで照らしたら目が光って見えるように肖像画の目に画鋲を刺したり、怖い音を集めたカセットテープをエンドレスで流し続けたり、生首に見えるような物を置いたり天上から水が滴るようにしたり、人影に見えるようにシーツを吊るしたり、血の手形風の痕を作ったりと色々だ。
そこまで怖くは無いけど雰囲気を出せるお札とか蝋燭とか数珠とかの小物も数点ずつ各教室に置いておく。後は各階の特殊教室にスタンプを置いて見て回った事を証明できるようにしておく。
仕掛けを終わった頃にはもう薄暗くなりグラウンドに人が集まり始めていた。
それから十分後には全員が集まって夏休み企画肝試し大会が開催された。
まず初めに長ったらしい先生の一言を貰ってから企画者である僕達がルール説明をする。
1.全4階をぐるっと周って帰って来る事
2.各階の特殊教室にスタンプが有るのでそれを押して来る事
3.普通教室には入らない事
4.スタートは図書室でゴールは玄関とする事
5.三人から四人のグループで行動する事
6.トラップを仕掛けたり僕達の仕掛けを強化しても良い。ただし終わる時には回収しておく事
7.まだ入って無い人にネタバレしない事
8.最初に終わって暇なら脅かし役に回っても良い
9.学校外の人に迷惑を掛けない事
10.皆で楽しみましょう
説明が終わると適当にグループを作って順番に入っていく。
僕達企画者は脅かし役として校舎内をうろつくチームと参加者をまとめるチームに分かれて活動を始める。終了時刻は2時間後なのでそれまで目一杯楽しもう。
中々にカオスな肝試しとなった。序盤は普通に楽しむだけで時折驚く声が聞こえる位だったが中盤からは元参加者が仕掛けを強化していったのか時折本気の悲鳴すら聞こえるようになっていった。そしてそれを笑う声も。本当に楽しそうだ。成功したみたいで嬉しい。
脅かし役に周った友人も逆に驚かされたりもしたそうだ。脅かされた人がより怖く脅かしにかかり終盤は
参加者も本気で逃げたり返り討ちにしたりするケースも多々あったようだ。
楽しいと時間が早く過ぎるように感じるように今回はあっという間に時間が経ってしまった。
終わりの連絡が来たので放送室に移動して最後までノイズを撒きながら校舎内から出てグラウンドに戻るように指示をする。指示をした後は僕もそのままグラウンドに戻った。
「よう、お疲れさん」
「そっちこそお疲れ様。まだ皆帰って来て無いの?」
「どうも熱中してるみたいだな。他の奴らに探しに行かせてこっちは暫く待つか」
「だね、早め仕掛けも回収しないと行けないし」
入口で待っていた友人と話しながら残っている人に呼び掛けて名簿をチェックする。
5分後にもう一度校舎から放送を掛けて回収しやすい仕掛けを回収して帰るとグラウンドに戻ると生徒の数は最初の半分も集まって無かった。それどころか企画した友人すら帰って来て無いようだ。
仕方ないので僕も校舎に入って探しに行く。今度は駆け足で素早く各階を見て周る。人は全く見えずに一周してしまった。でも所々で声が聞こえるので帰っている途中なのかな?
もう一度グラウンドに戻るとさっきより人が減っているようだ。探しに行った人の半分が帰って来て無いらしい。先に帰ったんだろうか?電話を掛けていったが全員電波が通じない所にいるらしく誰も出ない。寝落ちでもしてるのかな?終了の時間も迫ってるし受付に一人残して残った人に手伝って貰いながら仕掛けを回収して周る。新しい仕掛けに引っかかったのか叫び声や悲鳴も聞こえてくる。少し大袈裟に叫びすぎじゃないかな。僕達の仕掛けを全部回収するとまたグラウンドに戻る。
人が十九人しか残ってない。……まさかね。廃屋とかならともかく普段通ってる学校だよ?
ふと胸に浮かんだ最悪なホラーをしっかりと否定する。これが参加者側からの仕掛けなら完璧と言える位にホラーだ。残っている18人を6グループに分けて残りの仕掛けの回収と隠れた生徒を探す事にする。
そしてその中に必ず企画した僕達の誰かを混ぜておく。残りの一人は相も変わらず受付にまわってもらう。ではもう一度夜の校舎へ。暗いと見落としもあるので電気をつけようとスイッチを押すがつかない。
あれ?夜は電気が止まるんだろうか?時間を掛けてライトの小さい光で各階を周る。周りながら他の人が残したコンニャクの仕掛けや玩具のゴキブリとかも回収しておく。見落としは無い筈だけど誰も見つからない。隠れる場所はもうないと思うんだけど。玄関に戻って来る途中同行しいていた一人がトイレに行った。一人にしないようにもう一人を付いて行かせると中庭を突っ切りグラウンドに戻る。何か酸っぱい匂いがする。………誰もいない。受付に居た筈の友人すら消えている。いたと思われる場所には靴が片方落ちていた。そしてトイレから悲鳴が聞こえて来た。慌ててさっきの二人を追いかけてトイレに戻る。………誰もいない。何も残っていない。
「はははは、皆止めてよ。本気で怖いでしょ」
「ねえ、そろそろ時間だからいい加減出て来て。僕の負けで良いから」
「ねえ?聞こえてるの?」
僕の大声はガランとした校舎に響きわたる。反響とエコーだけが帰って来てさっきまで聞こえてた悲鳴も笑い声も何も聞こえない。
「おーい、出て来ないなら僕はもう帰るよ!」
叫んだ声は木霊してそして静かになった。
そして僕は一目散に走り出した。走り出した。走り出したつもりだった…
足を踏み出した瞬間に塗れた廊下を踏んで転んだ。手からライトが落ちて中庭の床と地面を照らす。
そして僕は血塗れの地面と青白い顔で逆さにぶら下がる皆の顔を見た。見てしまった。
「――――――っ!!!!!」
声にならない叫びを出しながらその場から這い蹲って逃げようとして、僕の上に「なにか」の影が覆い被さった。そして僕の意識は闇に包まれる。願わくは夢でありますようにと祈りながら……
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