不思議な世界
「何、さっきの?」
そういってさっきのことはなかったことにしてオンラインゲームをしようとするが、パソコンがない。
それ以前に、日向が立っているこの場所は、日向の部屋ではない。
目の前には、町が広がっている。しかも、日向が最も苦手とする【ニンゲン】が沢山いる。
そんなことに気づき、不安になっていると、足元からニャーと泣き声が聞こえた。
「み、ミ……っ!」
ミィの声がして下を向いた瞬間、日向は絶句した。
三毛猫のミィが、赤褐色をした、ピューマの様になっていたのだ。
それ以上に驚いたのは、日向自身の姿だった。
「なんだよ、この服……。」
彼女の服は、ラフなTシャツではなく水色のシルクのワンピースになっていた。
そして、腰には長い剣が帯刀してあった。
「これ、本物なのかな?」
と、興味を持ってさやから剣を引き出すと、七色に輝く鋭い刃が見えた。
即座にやばい、と感じた彼女は過ぎに刀を鞘にしまった。
刀をしまうと、彼女は自分の格好に興味が向いた。
(この服、すごくサラサラで肌触りがいいし、風通しがいい。ワンピースみたいになっているのに、すごく動きやすい。)
自分自身ではバカだと思いながらも、様々なポーズをとっていく。
そんな彼女の横を、紫色のとんがり帽子をかぶった女の子が駆けていく。その女の子は、手にクリスタルのような宝石がついた、きらびやかな杖を持っていた。
その女の子は日向の横を通り過ぎてから、ぴたりと動きを止めて、恐る恐る日向のほうを見た。
「えっと、何?」
じーっと女の子に見つめられて居心地が悪くなったのか、日向は女の子に声をかける。
「な、何でここに、この大陸に、ワルキューレがいるの?」
「あ?」
「ご、ごめんなさぃいいいいいいいいいいいい!」
意味が分からなくて聞き返したが、その少女は叫びながらクリスタルの杖を一振りして箒を出し、それに乗って飛んで行ってしまう。
「はい? ワルキューレ? シカモサッキノナンデスカ? 杖振ったら箒が出てきた? どーゆー世界ですかここは。は? あの人魔法使いかなんかですか? ん? 責任者出してよ。どーなってんですか」
尾声で、ぶつぶつとつぶやく日向を、町の人が危ない人を見つめるように見る。