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依頼を受けよう②

 おれとナナオはこの街の墓地となっている土地の前にやってきた。

 街からの道は細く、街の外の人間にはここに墓地があるとはわからないだろう。だが、辿り着いてしまえば、そこには石で創られた墓が無数に並べられ、どれほどの霊がこの地で慰められているのかはわからなかった。

 

「ずいぶん広いな。」

「それはこの街の歴史を考えればね。」

「歴史、ね……。」


 この世界はおれが数日前に創った世界のはずだが、すでに何百、何千という人間がこの世界で死んでいるかのような光景だ。これも世界観か。まあ確かに人間が生きているのに墓地がないのは不自然ではあるが。


「それで、どうするんだ? 大ネズミが現れるのを待つのか?」

「そんな悠長なことはやってられないわ。もしも現れなかったら今日の稼ぎがゼロじゃない。巣穴を探すの。」

「なるほどな。」


 墓地は林を切り開いて作られており、大ネズミは林の方にある巣から墓の方にやってきては荒らすらしい。何を目的に墓にやってきて何を荒らすのかは、この際考えないようにするぜ。

 おれとナナオは墓地の端から林の中に入り、手分けして大ネズミの巣穴を探すことにした。

 大ネズミの巣は、案外簡単に見つかった。このサイズの穴だったら大ネズミは猫くらいの大きさか?


「おーい、ナナオ! ここに巣があったぞ!」

「こっちにもあったわ! そっちは任せるわね!」

「あ? 巣って一つじゃねえのかよ……。」


 おれが巣穴を覗くと、ゴソゴソと動く影がある。

 げっ。これが大ネズミかよ。

 おれは巣の中に剣を突き入れた。

 ギエッという鳴き声と、刺した感触がおれの手に伝わる。


「あんまり気持ちのいいもんじゃねえな。……たしか、この袋に入れるんだったか。」


 おれは絶命した大ネズミを巣から引っ張りだし、支給された袋につっこんだ。よし、これで銅貨二枚。


「オレ。そっちは一匹?」

「ああ。ナナオは?」

「私もやっと一匹。」


 ナナオがおれに大ネズミを入れた袋を見せて言う。

 おれたちはため息をついて林の中の木々を見渡した。


「ここにはあとどれだけの巣があるんだ?」

「ギルドに依頼するくらいだから結構あるんじゃない?」

「うげぇ……。」


 この調子で探していたらあっという間に日が暮れてしまう。

 ここはおれの新しい魔法の出番だな。


「よおし、それなら見てろ。おれが大ネズミの巣をあぶりだしてやる。」

「ええ?」


 おれは先日エバンスの魔法を見たあとに使えるように創造した魔法を発動した。

 感知の魔法。さらにはレーダー付きにアレンジしてある。

 今、おれの目は大ネズミどもの位置が完全にわかる。ついでにナナオでも見えるようにレーダーを共有しておこう。


「なにこれ……。赤い点が……?」

「それが大ネズミの位置だ。エバンスの魔法の上位版だぜ。」

「……驚いた。オレも感知の魔法を使えたの?」

「ああ。先日使えるようになった。」


 おれとナナオは手分けして大ネズミの巣を回り、日暮れまでに合計で十五匹の大ネズミを仕留めたのだった。銅貨三十枚。つまり、おれたちはオウルベアの時よりも稼げたってわけだ。

 冒険者ギルドで報酬を受け取ったナナオがおれに言った。


「オレ。今日はありがとう。おかけで思ったよりも稼げたわ。これなら予定よりも数日早く終われそうね。」

「ん? 今日だけじゃないのか?」

「当たり前でしょ? まだ墓地の周りを半周もしてないじゃない。明日もちゃんと来てよね。」

「まじかよ。」



 翌日もおれとナナオは早朝から大ネズミ退治のため墓地に向かった。

 おれの感知の魔法のレーダーで巣を見つけて退治していくだけの仕事だが、墓地になんか滅多に人が来るものじゃない。おれとナナオの二人だけの作業が続く。

 

「オレ! ごめん! そっちに一匹逃げた!」

「おう。任せとけ。」


 おれは感知の魔法で居場所をとらえた大ネズミを正確に斬り倒す。


「はぁ、はぁ。ごめんね、オレ。」


 大ネズミを追ってきたナナオが、おれの顔を見て笑顔を見せる。そんな鎧を着込んでいるから息が切れるんじゃないか?


「休憩するか?」

「うん。休憩したい。」


 おれたちは墓場の横の少し丘になっているところに腰をおろして弁当を広げた。

 まあ、弁当って言っても街のパン屋で買った銅貨一枚のパンだけどな。硬くて味も塩っぽい。あとは宿でアンナからもらった干し肉がひと切れだ。

 ナナオがおれの食ってるものを見て言った。


「やっぱりそれだよね……。私もそう。安いパンばっか。」

「そりゃこれしか稼ぎがないからな。」

「はぁ……この調子じゃ、目標どころか、借金も返せないかも。」

「借金?」


 思わずおれはナナオの顔を見たが、ナナオの表情に悲壮感は見られない。


「あ。借金って言ってもね。村のみんなに借りたお金。ほら、この街に入るにも、冒険者ギルドに登録するにも大金が必要でしょ?」

「ああ。そういえばそうだったな。」


 合計で金貨二枚払ったな。すっかり忘れていたが。

 そうか。ナナオは借金してあれを払ったのか。もしかしたら、そうやって最初に借金をして冒険者になる奴が大半なのかもしれない。


「そういえばオレも東から来たって言ってたよね?」

「ああ? 東か? 東なあ……。」

「……?」

「……そんなことより、ナナオ。ナナオの目標ってなんだ? 今言ってたろ。目標がって。ナナオはなんで冒険者になったんだ?」

「え? なに、突然……?」


 しかしそれを聞かれたナナオはおれから視線を外し、食っていたパンを見つめて黙ってしまった。


「……いや、ナナオ、聞いてすまなかった。」

「ううん、私の方こそごめん……。」

「さて、そろそろ再開するか?」

「……うん。」


 まあ、言いたくないか。数日前に会っただけ、ただ金のために組んでいるだけの奴だ。そんなに親しい間でもないしな。

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