クエストに行こう②
「いたぞ、オウルベアだ。」
先頭のエバンスがおれたちを制止して言った。
キースがおれたちに頭を低くするように指示し、おれたちは木の陰に隠れた。
オウルベアはフクロウの顔をした熊で、ちらっと見えた感じだと二メートルくらいか。巣穴の前をウロウロとしている。
キースがエバンスに小声で話しかける。
「エバンス。オウルベアは一体か?」
「感知の魔法で知る限り、あの一体だけだ。」
「よし。あいつは俺がやる。三人は左に回ってくれ。俺が右から仕掛ける。三対一に分かれればオウルベアは手薄な俺の方に来るだろう。」
「わかった。」
ステータスがカンストしているおれなら一撃でオウルベアくらい倒せるのだが、ここはキースの策に乗ることにした。
おれとエバンスとナナオは、キースの合図でいっせいに左から飛び出した。
キースは打ち合わせ通り右からオウルベアの前に出る。
オウルベアは驚いたように体を震わせたあと、両手を持ちあげて立ち上がった。
おれたちより全然でかいぜ。
おれもステータスがカンストしていて魔物の攻撃をいっさい受け付けない自信がなければ、ビビって動けなかっただろう。
「オウルベア! こっちだ!」
キースが剣を構えてオウルベアを挑発する。
おれたちも万が一、オウルベアがこっちに向かってきた時のために剣を構える。エバンスとナナオからも緊張が伝わってくる。
だが、オウルベアはおれの目を見るなり後ずさりして、キースの方へ狙いを定めたようだ。
「狙い通りだな。」
キースがオウルベアの振り下げた爪をかいくぐり、すれ違いざま剣でオウルベアの腹を引き裂く。
「おお。」
キースは振り向くと同時に上段から剣をオウルベアの首めがけて打ちおろし、一撃でオウルベアの首を切断した。
「すげえ。」
あっという間にオウルベアを倒してしまった。これじゃ完全におれたちはオマケだったな。
おれたち三人は剣を収めてキースのところに集まった。
キースは切断したオウルベアの首を拾い上げた。
「この頭と、あとはオウルベアの爪を回収して村長に渡せばクエストは完了だ。」
「思ったよりも簡単だったな。」
「ああ。オウルベアが若い個体だったのと、想定よりもウルフの襲撃が少なかった。それでも、皆がいなかったら達成できなかったクエストだ。本当に感謝するよ。」
「ふっ。」
ここまで楽にクリアできたのは、エバンスの感知の魔法の功績が大きいだろうな。おれも魔法を使えるようになるかな。帰ったら設定を創造してみよう。
おれはキースの指示でオウルベアの爪を回収する作業に入った。つっても、運びやすいように手首から先を斬り離すだけの話だ。おれは軽く剣を振ってオウルベアの両腕を斬った。
「できたぞ。これでいいか?」
「お、仕事が速いな、オレ。」
「まあな。」
キースがオウルベアの首を、おれとナナオがオウルベアの爪を片方ずつ持ち、エバンスの感知の魔法を頼りに、魔物の気配を避けながら森を抜けた。まあ、帰るまでがクエストだからな。戻る途中でウルフに襲われてやられたんじゃ意味がない。
村に戻り、キースがオウルベア討伐を報告し、村長から報酬を受け取る。
なるほどな。報酬は依頼主から受け取るのか。
「おい、みんな。村長が報酬を増やしてくれたぞ。」
そう言ってキースがおれたち全員に銅貨を十枚ずつ配った。オウルベア討伐は銀貨一枚、つまり銅貨二十枚の仕事だったはずだから、全員に十枚ということは銀貨二枚分の報酬を受け取れたってことだな。銅貨十枚だとパン十個。五千円くらいだ。
「今回は本当に助かった。エバンスの魔法もよかったし、オレもナナオも初級の冒険者にしてはよくやれてたと思う。今回の臨時パーティはこれで解散だが、また何かあったらよろしく頼むよ。」
「ああ。」
こうしておれたちは解散し、おれの初めての冒険者クエストは終了した。
おれは宿に戻って今日受け取った銅貨を眺めた。金貨と比べると汚い硬貨だ。
この銅貨をコピーして創るのはおれだったら簡単だが、働いて獲得した金というのは特別な価値があるような気がするぜ。
よーし。明日もまた冒険者ギルドに行ってみるか。




