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クエストに行こう

「ところであんたの名前はなんて言うんだ?」


 キースがおれに聞いた。

 

「おれか? おれの名前はおれだよ。」

「オレって名前なのか? そうか。じゃあオレ。改めてよろしくな。」

「ああ。よろしく頼むぜ。」


 キースがカウンターのおっさんのところに貼り紙を持っていって、クエストを受注しにいく。

 ああやってクエストを受けるのか。


「ところでキース。どのクエストを受けたんだ?」

「え? あー、すまん、オレにまだ伝えてなかったな。オウルベアの討伐依頼だ。」

「オウルベアか。」


 そのクエストならさっき見たな。たしか銀貨一枚の魔物討伐だ。

 しかし、パーティ四人で銀貨一枚は割りに合わない気もするが。

 キースがおれの微妙な表情から何か読み取ったのか、言い訳みたいに言った。


「実はこの依頼は俺の出身の村からだったんだ。家畜を襲われて困っているらしい。だからどうしても受けたくてな。だが、いつもパーティを組んでいる奴らから断られてしまってね。助かったよ。」

「ふーん。でも、四人いないとダメなのか?」

「……ああ。オウルベア自体はそれほど脅威じゃない。だが、問題はオウルベアが潜んでいる森だ。ここには群れで襲ってくるウルフが出る。どうしても複数人で周囲を警戒して進まないといけないんだ。」

「なるほどな。」


 他の二人はちゃんと事前にキースにクエストの内容を聞いてパーティに参加したようだ。

 まあ、それが普通か。次はそうしよう。

 キースは時間が惜しいのか、続きは移動しながら話そうと言った。



 おれたちは交通手段として馬車の荷台に相乗りし、キースの出身だという村に向かった。

 馬車の荷台の中でおれはキースに話しかけた。


「キースの村は近いのか?」

「ああ。この時間から向かえば、夕刻には日帰りできるはずだ。」

「そうか。」

「オレの出身はどこなんだ? 遠くから来たのか?」

「ん? まあそうだな、遠くだ。」

「北か? 東か?」

「んー、東かなあ。」

「ということはサンベルクか?」

「……いや、もっと東かなあ。」


 どこだよ、サンベルク。知らねえよ。

 今まで寡黙だったエバンスが口を開いた。


「俺は……ノースカロンだ。」


 どこだよ、ノースカロン。

 だが知らないのはおれだけらしい。キースとナナオの顔は少なからず驚きを隠せないという雰囲気だ。キースが聞いた。


「ほう……。ノースカロンは遠いな……。どうしてこの街に来たのか聞いていいか、エバンス?」

「……言いたくない。」


 ああ? なんなんだよ? じゃあなんで言ったんだよ?

 微妙な空気が流れる中、助けを求めるようにおれとキースの視線がナナオに向いた。まだ話してないのはナナオだけだ。


「わ、私……?」

「あ、ああ……、ナナオ。言いたくないんならいいんだが……。」

「別に構わないけど……。私は、イースベルクの村から来たわ。」

「おお。じゃあ、オレと出身が近いんじゃないか? なあ?」

「ああ? おれと?」


 って今の話の流れだと、ナナオの出身の村もどうやら東の方らしいな? 全然知らないが。

 ナナオがおれの顔をじっと見る。またかよ。さっきも見てたよな。

 おれは馬車の外を向いて答えた。


「いや、おれはもっと東かなあ……。」


 これ以上下手なことを言ってボロが出ても面倒だしな。


     ◇


 馬車に一時間ほど揺られるだけで、おれたちはキースの村についた。

 キースは村長っぽいじいさんと軽く話をした後、おれたちを森へと案内した。


「やはりオウルベアの巣はこの先にあるらしい。」


 おれたちは剣を抜くと、キースを先頭にエバンス、おれ、ナナオで陣形を組み、周囲に気を配りながら森の奥へと進んだ。こうして見ると全員剣が武器なんだよな。


「いいか、皆? ウルフでも気は抜かないでくれよ。以前より魔物が強くなってきているからな。」

「以前より、ね……。」

 

 そういやこの世界はおれが数日前に創造した世界のはずだが、こいつらはそれより前からこの世界で生きてきたみたいに話すんだよな。

 不思議な感じがするぜ。これも世界観が仕事してるんだろうが。



 ガサリと草が揺れる音がして、それと同時にキースが何かを斬り捨てた。


「来たぞ、ウルフだ!」

「あ?」


 と、おれが声を上げる間もなく、更に別の方向からウルフがおれに飛びかかってきて、おれの目の前で弾かれて転んだ。


「うおっ! びっくりした!」


 だが、おれのステータスはカンストしてるので、こんな雑魚の攻撃自体、おれに傷を負わせるどころか届きもしない。

 おれは冷静になって剣を振って転げているウルフを斬った。

 こうなってくると、森の草木がうまいことウルフたちを隠しているな。


「他にもいるのか?」

「オレ! 目の前にまだ二匹いるぞ! 気をつけろ!」


 エバンスがおれに向かって叫んだおかげで、おれは草木に隠れていた二匹を先制して斬撃で斬ることができた。

 キースがもう一匹、エバンスとナナオもそれぞれ一匹ずつを倒したようだ。

 戦闘が終わり、キースがおれに声をかけた。


「結構やれるじゃないか、オレ。」

「ああ。エバンスのおかげだ。」

「……感知の魔法だ。」


 エバンスがボソリと言う。

 魔法? いや、そりゃ、剣と魔法の世界を創ったのだからあるはずだよな。

 エバンスが左の方を指差して言った。


「あっちに何か強そうなのがいる……。」

「あっちだって? よし、エバンス。案内してくれ。」

「……ああ。」


 エバンスの言葉で、キースはおそらくこの先にオウルベアがいるのだと気付いたのだろう。

 感知の魔法を持つエバンスを先頭にして、おれたちは気配を殺しながら慎重にその場所に近づいていった。

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