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冒険者ギルドに行こう

 まあ、せっかく異世界ファンタジーの世界を創造して最強の冒険者になっているのだから冒険をしないとな。っつーことで冒険者ギルドに行ってみることにした。

 いや、待てよ? あるよな、冒険者ギルド? そういう世界観だよな?


「アンナ。ちょっと聞きたいんだが、この街に冒険者ギルドはあるか?」

「冒険者ギルド?」


 宿の掃除をしていたアンナに聞いてみる。

 アンナは掃除の手を止めて、首をかしげてから俺に答えた。


「場所わからないの? カミサマ?」

「あ? ああ……。この街は初めて来たからな。」

「ふーん。外に出たら左に向かって、ちょっと曲がったところだよ。」

「そうか。ありがとな。」


 ふう。やっぱりあったな、冒険者ギルド。焦ったぜ。

 おれはさっそく冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドは酒場も兼ねているようで丸いテーブルに数人の冒険者風の奴らがおり、カウンターには厳つい感じのおっさんと、奥にはおそらくクエストを貼りだした掲示板が見えた。

 はぁ。受付嬢みたいなのはいないのかよ。

 カウンターのおっさんがおれから視線を外さないので、仕方なくおれはカウンターのおっさんに話しかけた。


「ここが冒険者ギルドで合ってるか?」

「ああ。お前、見ない顔だな。何の用だ?」

「あー……そうだな……。冒険者のクエストを受けたいんだが。冒険者ギルドに入ればいいのか?」

「ああん?」


 おっさんが怪訝な顔をする。

 なんだよ。聞き方を間違えたか? でも、しょうがないだろ。おれ、この世界のことを何も知らないからな。おれが創った世界のはずなのに。


「なんだ、初心者かよ。俺の目も曇ったかな……? 冒険者ギルドへの登録は入会金が必要だ。金貨一枚。……持ってるか?」

「ああ。それなら。」

「マジかよ……。それで誰の紹介も無いのか? この街には一人で来たのか? ほれ、ここに記入しろ。お前、字は書けるのか?」


 おお。意外と親切なおっさんだった。おれはおっさんに言われたとおり記入し、登録証を受け取った。ランクはFだ。まあ、最初はそういうもんらしい。


「受けられるクエストに制限はねえが、最初は簡単なお使いから始めた方がいいと思うぜ。」

「そうだな。サンキュー。」


 おれは掲示板に貼り出されたクエストを眺めた。

 薬草採取、銅貨五枚。

 魔物討伐、銀貨一枚。

 馬車の護衛、銀貨二枚。

 なんだ、パッとしねえな。

 ……ん? そういや、この世界の金貨一枚ってどれくらいの価値なんだ?

 おれはカウンターの方を向いて、料理や酒の値段を確認する。

 パン、銅貨一枚。

 肉のスープ、銅貨五枚。

 酒一瓶、銅貨十枚。

 んんー?

 おれは冒険者ギルドを出て、通りの店の商品を眺めながら宿に戻った。宿の髭のおっさんに確認すると、おれが最初に渡した金貨一枚で一ヶ月はここに泊めてくれるらしい。なんならもっと居てくれていいとさえ言っていた。


「ここまで得た情報を総合すると……、金貨一枚の価値は日本円に換算して二十万円くらいだな……。」


 銀貨二十枚で金貨一枚。つまり銀貨一枚は一万円。

 銅貨二十枚で銀貨一枚。つまり銅貨一枚は五百円か。

 おい、おい。おれ、すげえ金持ちになってんじゃねえか……! おれの手元には適当に創り出した金貨がまだ十枚くらいある。これで二百万円⁉ 逆に銀貨や銅貨は一枚も持ってねえぞ?

 この金貨は隠しておいた方がいいな。明日から冒険者ギルドのクエストで適当に小銭を稼いでおこう。たぶん、その辺の店で金貨を出してもお釣り出ねえだろうから。


     ◇


 翌日もおれは冒険者ギルドに向かうことにした。


「お、カミサマ。いってらっしゃい。」

「おう。行ってくるぜ、アンナ。」


 宿の掃除をしていたアンナに手を振って見送られ、おれは外に出た。

 ここには一ヶ月いてもいいって話だったしな。食事も用意してくれるから正直助かる。

 冒険者ギルドのカウンターのおっさんに会釈して、おれは再びクエストが貼り出された掲示板を眺める。

 薬草採取、銅貨五枚。つまり二千五百円の仕事。

 魔物討伐、銀貨一枚。つまり一万円の仕事。

 馬車の護衛、銀貨二枚。つまり二万円の仕事ってわけだ。

 ここは時給で考えるべきか、日給で考えるべきか。

 今のおれはレベルがカンストしていて無敵なので、魔物討伐みたいなクエストが良さそうなんだが、そんな簡単な話かどうかはわからん。


「おい、あんた、一人でクエストを探してるのか?」

「ん?」


 おれが声をかけられた方を向くと、おれより背の高い金髪の兄ちゃんが立っていた。金属の鎧を着て腰には剣を携えている。


「もし良かったら、俺たちと一緒にクエストを受けないか?」

「クエストを?」


 見ると、金髪の兄ちゃんの他に、ローブを着た茶髪のガタイのいい兄ちゃんと、鎧に身を包んだボブヘアの女もいた。ボブヘアの女はおれと同じくらいの背丈で若そうな感じだが、鎧をしっかり着込んでいて体の線はよくわからない。

 

「俺の名前はキース。こっちは、えーっと……。」

「エバンス。」

「……ナナオ。」

「はっはっは。すまん、すまん。この二人にもさっき声をかけたばかりなんだ。つまり俺たちみんな初対面ってことなんだが、あんたはどうだ?」


 つまり、今回のクエストだけの野良パーティってことか。

 金髪の兄ちゃん——キースが笑顔を見せる。歳は三十代くらい。初心者って感じではないが、特別強そうな感じもしない。

 でも、そうだな。完全初心者のおれが一人でよくわからないクエストを受けるより、慣れてそうな奴と一緒にクエストを受けて、いろいろ学ばせてもらった方がいいだろう。

 おれがちらりとボブヘアの女の方を見ると、なぜか向こうもおれのことをじっと観察していたようだった。ナナオだっけ。男だけならむさ苦しいだけだが、女もいるなら悪くはないぜ。


「わかった。おれも参加させてもらう。」

「……よし。これでパーティ成立だな。」


 キースがほっとした感じで言った。

 まあ、何かあってもおれは最強だから大丈夫だろ。

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