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異世界での生活④

 Dランク冒険者になったおれは更にクエストをこなしていった。

 一ヶ月の収入は金貨二枚を超えるようになった。もうほとんどCランク冒険者の収入に引けを取らないくらいだ。まあ、おれのステータスはカンストしているし、別空間の部屋を使った移動でクエスト達成なんて楽勝だからな。

 毎晩アンナともやれていて充実した日々だ。

 渚は相変わらずおれについてきているが、そろそろこの世界がなかなか良い世界だって渚もわかったんじゃないか?

 今日もおれはいつもの調子で冒険者ギルドのテーブルでクエストの依頼書を確認していた。横には女子高生の制服姿の渚が座っている。

 そのおれに近づいて声をかける奴がいた。


「オレ。久しぶりだな。」

「キースか。」

「お前、噂になってるぞ。どんなクエストでも必ず日帰りしてくる奴がいるって。どうやってるんだ? 魔法か?」

「まあ、そうだな。」


 キースがチラリと渚に視線をやったので、おれは説明した。


「おれの妹だ。」

「妹……。オレにも家族がいたんだな。」

「まあな。」


 本当は妹でもなんでもない。渚の正体はあっちの世界の神の分身で、得体の知れない女だ。赤の他人よりも更に酷い。


「オレ。Dランク冒険者になったんだってな。異例の速さだ。」

「そうか? おれの実力なら当然だろ。」

「ふっ。相変わらずだな。……なあ、オレ。覚えているか? パーティに誘うって話だ。」

「ああ……憶えているが。」


 今は誰のパーティにも入るつもりがない。キースには冒険者の振る舞い方を教えてもらった恩があるが、今のおれの効率優先のクエスト攻略は一人じゃないと不可能だ。

 キースはすぐに察したのかおれに謝ると言った。


「いや、すまなかった。オレは今は一人でやってるんだな。」

「ああ。察してくれて助かる。」


 キースはふっと笑った後、真剣な顔をして少し小声でおれに言った。


「……それならひとつ忠告させてくれ。」

「なんだ?」

「オレのことを面白く思ってない奴らがいる……。」


 おれのことを面白く思ってない奴ら?


「冒険者にか?」

「ああ。とにかく気をつけてくれ。特にオレの妹は美人だ。一人で出歩かせないようにした方がいい。」

「わかった。」


 まあ、渚はいざとなったら姿を消せるし、渚の制服の下は創られていないから、渚が危害を加えられるなんて想像もできないが。一応、礼は言っておくか。


「ありがとう、キース。」

「なあに。困ったらいつでも言ってくれ、オレ。」


 金髪のキースが笑顔を作った。こいつ本当にいい奴だな。

 と、その時、キースの後ろからいかにも不愉快って感じの男が声をかけてきた。


「おー、おー、キース。後輩君にアドバイスかぁ⁉ 紹介しろよ。」

「グ、グリム……!」


 ん? なんだ? キースの知り合いか?

 グリムと呼ばれた男はモヒカン頭でいかにも悪い奴って顔をしている。この世界にもこんな奴がいるのか。これはマイナス一ポイントかもしれん。いや、まだ判断するには早い。


「グリム、だったか。おれはオレだ。よろしく頼む。」

「おー、おー。よく挨拶できたな。後輩君よ。褒めてやるぜ。」

「おう。」


 まあ意外にも話せばわかるタイプかもしれん。

 だがグリムはドカッと椅子に座るとおれに言った。


「そんじゃオレ。お前はもういい。どっかいけ。その妹とクエストの依頼書は置いていけよ。もともとそれは俺らが受けるはずのクエストだ。お前だろ、オレ。最近調子に乗ってる新人野郎は。誰に断ってクエストで荒稼ぎしてんだ? あーん?」

「はあ?」


 前言撤回。こいつは救いようのないバカだった。キースが言ってたおれを面白く思ってない奴ってのはこいつのことだな。

 はぁ。呆れて声も出ないぜ。よりにもよっておれと渚に目をつけるとは。

 おれが呆れていると、額に汗をにじませたキースがおれとグリムの間に飛び出してきて叫んだ。


「オレ! ここは俺に任せて妹と一緒に逃げろ!」


 そのキースをグリムが蹴飛ばした。


「誰に口聞いてんだ! キース!」

「ぐあっ!」


 キースが派手に冒険者ギルドのテーブルに突っ込んで倒れる。


「キース‼」


 おいおい。キース、俺を庇って。いい奴すぎるだろ。プラス二ポイント。だがグリムにはムカついたぜ。マイナス二ポイントだ。

 おれがキースの無事を確認しようと動くとグリムの仲間みたいなモブどもが行く手を遮った。

 

「おっと。逃がすかよ。」

「逃げる? 笑わせるなよ?」


 おれはちょっと力を入れてモブの肩を押した。するとモブがもの凄い縦回転をしながら吹っ飛んだ。


「ああ⁉ 今、何しやがった⁉」


 何って、おれのステータスがカンストしてるだけだが?

 人間相手に本気を出すわけにはいかないが、この野郎どもには痛い目を見せてやらないといけないようだな。

 おれはグリムを睨み付けた。


「こ、こいつ……!」


 おれが与えるプレッシャーに耐えきれなかったのか、グリムが拳を作っておれに殴りかかってくる。

 だがおれのステータスはカンストしているので、そこらの冒険者の拳がおれに届くはずもない。


「ぐあっ!」


 案の定、グリムの拳はおれに届く前に弾かれた。

 グリムが自分の拳を押さえてよろめく。


「おれは神様だからな。おれとお前の差をわからせてやる。」


 おれはグリムの顔の前で半分くらいの力を込めたパンチを寸止めした。ブワッと空圧が後からやってきてグリムの顔に当たり、そのままグリムは顔から吹っ飛んでいった。

 ははっ。おれ強え。


「力の差がわかったら二度とおれに絡むなよ。キースにもな。」


 って聞こえてねえか。グリムは冒険者ギルドの壁に張り付いて気絶していた。

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