おれの失敗③
Eランクになってからのおれは、だいぶ羽振りが良くなった。
クエストは魔物討伐なら楽勝だし報酬も悪くない。
これならDランクになるのもあっという間だろう。Dランクになるには金貨一枚と銀貨十枚分を毎月稼げるようになればいいらしい。楽勝だな。Dランクならキースと同じだ。
おれは今日もクエストを終えて宿の食堂で夕飯にすることにした。
アンナが湯気の立っている焼いた肉の乗った皿を運んでくる。それと酒の入った瓶だ。
「カミサマ。お待ちどうさま。」
「おう。」
酒なんてこの世界に来てから今まで飲まなかったが、金に余裕があるのと、酔わないとやってらんねえって気分だから飲んでいる。
ナナオは故郷に帰るのはDランクになってからと言っていたのに、その前に帰ってしまった。借金だってあるって言ってたのに。
まあ、全部おれのせいか。おれがやらかしたせいでナナオはこの街から出る決断をしなくてはならなかったのだ。
「全部おれのせいか……。」
おれはスパイスの利いた肉をかじって酒をあおった。
ちっ。肉はうまいが酒はまずい。
宿の食堂はそこそこ客が入っていて、料理を運ぶアンナが何度もおれのテーブルの前を通り過ぎる。
アンナは宿の看板娘らしく、いろんな客と楽しそうに話をしている。みんな顔見知りなのだろう。
どっかの店で見たことがあるおっさんがアンナに声をかける。
「おーい、アンナ。酒、もう一杯。」
「はいよー。ジョンさん。」
アンナが気さくな感じで返事をする。
おれはまずい酒を飲みながらしばらくアンナの姿を眺めていた。
アンナは細めの体にエプロン姿で、動く度に長めのスカートが揺れる。
客の男がひとり、アンナの尻に手を伸ばして掴むのをおれは目撃した。
「アンナぁ。たまには俺の相手もしてくれよ。」
「きゃっ!」
アンナの丸い尻がスカートごしだが客の男にガシッと掴まれる。アンナはそれを笑って軽く叩くと言った。
「もう。ダーメ!」
「なんだよぉ。アンナ、いいだろぉ?」
「ダーメ。」
アンナは客の男のことなんか相手にしないって感じだったが、男はずいぶんとアンナにしつこく絡んでいるようだった。
ちっ。胸くそ悪いな。おれはまずい酒を飲み干してアンナを呼んだ。
「アンナ! こっちにも酒だ!」
「はーい! カミサマ! 今いくね!」
アンナがまずい酒をもう一本持ってくる。本当は飲むつもりなかったんだが。
「アンナ。……あの野郎、しつこいようだったら、おれが言ってやろうか?」
「ええ? 大丈夫だよ。酔っ払いの相手はなれてるから。あはは。でも、カミサマ、ありがとね。」
「そうか。」
アンナはそう言ったが、おれは全然ムカついてるままだがな。おれは神様だからあの野郎なんて雷の魔法で消し炭にしてやれるんだが、まあさすがに人間を殺しちまうのはまずいか。おれはまずい酒をあおった。
やがて食堂の客も減ってきたのでおれも宿の部屋に戻ることにした。
「ごちそうさん。」
皿を片付けているアンナに声をかけて食堂を出る。
はあ……。やっぱり酒を飲み過ぎたな。まだ酔いが覚めない。
水をもらおうと部屋を出る。おれの部屋は宿の一番奥にある。
廊下まで出ると、ちょうどアンナと出くわした。食堂の片付けが終わったところかもしれない。
「あれ、カミサマ。どうしたの?」
「アンナ。水をくれ。」
「はーい。待っててね。」
そう言ってアンナが食堂の方へと向かっていった。アンナの長いスカートが揺れる。アンナの後ろ姿。アンナの尻の形。ちっ。あの野郎。アンナの尻を揉みやがって。
「お待たせ、カミサマ。」
「ああ。すまんな。」
おれはアンナに水をもらって飲んだ。おれが水を飲む横でアンナがじっとおれを見ている。飲み終わったあとコップを片付けてくれるつもりなんだろうが。
おれがアンナの顔を見ると、アンナがニコッと笑う。ちょっとつり目だけど可愛い顔してるな。人気なのもわかる。
「アンナ。」
「なあに、カミサマ?」
ここはおれの部屋の扉の前だった。宿の一番奥で、この先にはおれの部屋しかない。
「やらせろ。」
アンナ。最初におれが泊まった時、おれが金貨を持ってる上客だと思って宿のおっさんから、おれの部屋を訪ねて相手をするように言われたんだろ? だったらいいじゃねえか。おれだってアンナの尻を揉む権利くらいあるだろ。
「ええ?」
アンナが戸惑ったように笑う。
「アンナ。ダメか?」
「えーっと……。」
アンナがおれに聞いた。
「カミサマ。私のこと好きなの?」
「ああ。」
もしもやれるならな。
アンナが目を細めて微笑んで言った。
「わかった。いいよ。カミサマだったら。」
「本当か?」
「うん。」
アンナがおれの手を引いて、おれの部屋の扉を開けた。
おれをベッドに寝かせて上に乗る。
部屋の中は窓の外からの月明かりだけで暗い。
アンナが丁寧におれの服を脱がせる。アンナが服を脱ぐ。アンナの唇がおれの唇に重なる。
「アンナ……。」
「カミサマ。ふふっ。ちょっと照れるね。」
アンナの唇がおれの身体の
アンナがおれの
「ア、アンナ。おれ、もう……。」
アンナが顔を上げ、おれの顔を見て満足そうに微笑むと言った。
「じゃあ、私が上になるね。」




