ランクを上げよう②
「なあ、アンナ。何か稼げるクエストを知らないか?」
「稼げるクエスト?」
宿の食堂で、おれのテーブルへ夕食を運んでくれたアンナにおれは聞いてみた。
アンナがおれの質問に首をかしげる。
ちなみに宿の食堂にはおれみたいな宿泊客だけじゃなく、近所の店のおっさんなども食事に来ているようだ。
「カミサマ。お金なくなっちゃったの?」
「いや、金はあるから安心しろ。だが、冒険者のランクを上げるためにはもっと稼ぐ必要があるんだよ。」
「ふーん。」
アンナが食堂の他のテーブルを見渡して言う。
「それならカミサマ。私は知らないけど、あそこの席のヘンリーさんに聞いてみたら?」
「ん? ヘンリーさん?」
「うん。ヘンリーさんはこの街の兵士長さんだから、何かクエストを教えてくれるかもだよ。」
「おお。ぜひ紹介してくれ。」
ダメ元で聞いてみるもんだな。この宿にそんなコネがあったとは。
ヘンリーは白い髭を生やした五十代くらいのおっさんって感じで、兵士って感じの服装ではなかったが、言われてみると体つきががっしりしているように見える。
「ヘンリーさん。カミサマに稼げるクエストを紹介してあげて。」
「ああん、カミサマ?」
ヘンリーが飲んでいたジョッキから顔をあげ、おれの身なりを値踏みするように見てから言う。
「お前さん、冒険者か?」
「ああ。」
「……アンナ。冒険者の男はやめておけといつも言ってるだろ。」
「うはは。違うよ。カミサマはここに泊まってるお客様だよ。」
おれは神様だが、ここはおれから頭を下げるべきだろうな。
おれはヘンリーに頭を下げてお願いした。
「無礼を承知で頼む。おれは冒険者のランクを上げたいんだ。」
「ふむ。今のランクはいくつだ? ……なに、Fランク? そうか、この街に来たばかりか。それなら、そうだな……。」
ヘンリーはおれの話を真面目に聞いてくれて、少し考えたあと、何か思いついたという感じで答えた。
「来週だが、冒険者を募り討伐隊を編成して、南に生息するオークどもを討伐する計画がある。それに参加してみるか?」
「おお、いいのか? それは助かる。」
オーク討伐隊。冒険者ギルドの掲示板には無かったクエストだ。おそらく街の方で冒険者を選抜して声をかけているのだろう。
「なあに。わしにはお前さんがFランクではもったいないように見えただけだ。戦力はいくらでも不足しているからな。はやくランクを上げて、わしら兵士を助けてくれ。」
「ああ。望むところだ。」
おれはナナオも討伐隊に参加させてほしいとヘンリーに頼んだ。
ヘンリーは少し悩んだ様子だったが、おれがコンビを組んでいると言ったら「いいだろう」と承諾してくれた。
よし。さっそく明日ナナオに伝えて準備を進めよう。
オークは一体倒せば銀貨二枚らしい。ってことは、ナナオと二人でオークを十体倒せば、今月の報酬がEランクの基準に届くことになる。
翌日、おれは冒険者ギルドでナナオにオーク討伐隊のことを伝えた。
「オーク……、銀貨二枚……。」
「ああ。これはチャンスだ。いっきにランクアップを狙える。」
「そうね。やりましょう。」
ナナオの表情からは緊張が見てとれたが、これを乗り越えなければ冒険者は続けられないのだとナナオは理解しているのだろう。強く頷いて答えた。
翌週、おれとナナオはヘンリーに言われた場所に赴いた。
そこにはすでに、兵士や冒険者たちが集まって装備を確認したり、話しあったりしている様子があった。
おれはヘンリーに教えられたように、冒険者を統率する兵士がいるというテントを探した。ちなみにヘンリーは今回の討伐隊には参加しないらしい。
鎧にしっかり身を包んだナナオがテントを見つけて指差す。
「ねえ、オレ。あれじゃない?」
「ああ、きっとそうだ。」
テントの中には数人の冒険者と参加者リストを照合している兵士がいた。
おれとナナオは順番を待って、兵士に話しかけた。
「冒険者のオレとナナオだな。リストにあるぞ。お前たちの位置は討伐隊のこの辺りになる。進軍の合図があるまで待機してくれ。」
「わかった。」
おれたちは討伐隊が集まる広場の指定の場所に移動した。
兵士と冒険者を合わせて百人くらいになるらしい。冒険者たちが武器を持って隊列に並んでいる。みんな静かに討伐隊の指示を待っているようだ。おれは経験したことがないが、この光景はまるで戦争の準備だな。
「オレ! オレじゃないか! ナナオも!」
冒険者の中から、オレとナナオの名前を呼ぶ声がした。
「キース。エバンスもか。久しぶりだな。」
そうか。キースたちの冒険者パーティも討伐隊に参加していたのか。
よく見ると参加している冒険者たちはそれなりに強そうだ。冒険者ギルドでは見たことがない顔が大半だが。こんなにどこにいたんだってくらいいる。
「討伐隊にオレもナナオも参加できたんだな。」
「まあな。ここにはどれくらいのランクの冒険者が集まっているんだ?」
「おそらくここに配置されている冒険者はDランクからEランクってところだな。」
「もっと高いランクの冒険者もいるのか。」
「ああ。今回の討伐ではオークキングも倒す計画だ。そっちには街の兵士とCランクの冒険者も投入されるらしい。」
「オークキング……。」
おれはステータスがカンストしてるので、おそらくそいつと戦っても楽勝で勝てるはずだ。
オークキングを倒せれば、いっきにランクはCってことか。




