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照らされて尚変わりゆき

作者: 八崎節子


 その廃墟は空を舞う。遠い昔に滅んだ、海の底の生物の形をして。


 本来なら入らないだろう、陽光が壁のそこかしこから差し込むその虚ろの中で、私達は再び巡り逢った。


「やあ、よく来たね」


 何も変わっていなかった人。朽ちていくものに寄り添い、滅びの時まで共に在るという夢を見る事を繰り返す人。


 この人に辿り着く為に、私がどれだけ駆け続けて来たか、とてもよく分かっているだろうに。自分がそのようにして生きているのだから。


「ここはいつ落ちるの」

「まだだ。でも、近づいている。時をかけて。ゆっくりと」


 飛び交う塵をかわし、崩れていた壁土を踏み越え、あなたに近付く。


 目の前に立つ。


「こんなに命の塊のままで。けれど、来てくれたのか」

「会いたかった」


 やっと、伸ばした腕が、今は届いた。しばらくして、私の背にも腕が回される。

 力のない、温もりのない体。


 ずっと温かい陽光が、私達を刺すように照らしているのを感じる。


「このままでいい?」

「ああ、このまま」


 目を閉じて埋めた胸の中、尚も剥がれていく虚ろの振動を感じる。


 虚ろの中に、このまま包まれて、地に着くのを待つのもいいだろう。


「これからも、そうであって」

「分かった」


 けれど。


 そうして、地に足を着けたら、私達になったあなたと私は、又立ち上がり、歩き出すのだ。


 太陽の示す、次の瓦礫の内へと。


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