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「お父様、私のことはもう、良いのです。私はずっとお父様達に守られて何一つまともに出来ていなかった。


 ですが、旅を通して色々な事を知り、気付きました。一度貴族社会から飛び出した私は貴族として生活するには難しく思っています。


 自由に生きていきたい。お父様、どうか私の籍を抜いて下さい」


「ソフィア、とんでもない。ソフィアは大切な娘だ。何も知らない娘を守りきれなかった私達の責任なのだから。ソフィアには無理をさせて本当にすまなかった。別の話もある。籍を抜く、抜かないという話は後で考えよう。


 家族皆に集まった理由なんだが、国内は奴隷制度が禁止となっているのにも拘わらず、ソフィアが王家から捕まえて隷属させようとした事。これを明るみに出そうと思う。


 現在、ソフィアの情報はただ魔力が高い事でオリヴェタンに養女に入ったとなっているのみだ。


 ソフィアの能力をこの機会に知らしめて隷属させられないような手を打つつもりだ。そして、オリヴェタン家への介入を阻止するのも加えておく」


「兄さんもテオもソフィアもお帰り。ソフィア、凄く心配したぞ。無事な姿を見て安心した。で、父上。具体的にはどうやって明るみに出す予定なんだ?」


 フィンお兄様がお父様に問うと、


「明日はちょうど、王宮会議がある。その場で公表し、ソフィアが狙われないようにする良い機会だ」


 王宮会議とは、各大臣に加え、大臣補佐や軍事からは魔法使い、騎士、近衛等の各師団長、師団長補佐が集まり、国の警備から領土に関する会議である。


 勿論陛下や王子達も参加する。


「父上、でも、その場で公表してしまうと国中の貴族からを求められ結果的にソフィアを国に縛り付けてしまう事にならない?」

「テオ、そうだな。だが、その辺も任せておけ。一筆陛下に書いて貰えば良い。レオン、明日は私とソフィアと王宮会議に参加するぞ。分かったか」

「分かりました」


 そうして久々の家族会議は明日の詳細を詰めていった。


 明日の話が進むにつれて不安も大きくなり、思い出す過去にも体温が奪われていく。おばあ様は途中で気付いて抱き寄せてくれる。


「さぁ、明日に向けて今日は早く寝てしまいなさい。レオンは少し残るように」


 お父様の指示で執務室を出た私は自分の部屋へ戻ろうとするが、いざ扉の前に立つと駄目ね。まだ恐怖が先立つ。


 自分に過去の事だと言い聞かせて、ドアノブに震える手をかける。


「お嬢様、別のお部屋に移動しますか?」

「サラ、心配をかけてしまったわね。私は大丈夫よ」


 そう言って手に力を込めて震えを抑えた時。


「ソフィア、無理しなくていい」


 振り向くとそこにはテオお兄様が悲しい顔をして立っていた。


「おいで。僕の部屋に行こう」


 テオお兄様に連れられてサラと共にお兄様の部屋に入った。ソファへ座ると、テオお兄様はお茶を淹れてくれる。


「テオお兄様、美味しいです」

「少しは落ち着いたかな。こんなに冷たい手になって。ソフィアにとっては怖いかもしれないが、僕はようやくここまできたとホッとしているんだ。


 だってさ、ソフィアを利用しようとした奴に恥をかかせる事が出来る。ソフィアはこれからどうしたい? 僕かレオン兄さんの結婚を望んでくれるかい」


「私は、正直に言うと、この邸にいるとどうしても思い出してしまって怖くて、不安で全てのことに躊躇してしまうのです。


 私、卒業もしていないですから王宮魔法使いとしても働けません。それに今回、一人旅をして感じました。アーテナーの街に住みたい。ヴィシュヌ様にもっと教えを請いたいと思っています」


「そうか。ヴィシュヌ様ならソフィアのことをしっかりと導いてくれるだろうな」


 ふふっとテオお兄様は微笑って私の頭を撫でる。レオンお兄様もテオお兄様も優しい。


 私はその優しさに甘えてしまっている自分がいる。


「落ち着いたかな? 今日は客室で休むといい。無理しないんだぞ?」

「はい」

「お兄様、おやすみなさい」

「ソフィア、お休み」


 私は無理をせず客室で休むことになった。




「おはようございます。ソフィア様」


 サラが起こしに来てくれたみたい。


「サラ、今日もラファルをお願いしても良いかしら」

「分かりました」


 私も急いで服を着替えてサラと一緒に食堂へ向かう。既にみんなが揃っていたわ。私だけ寝過ごした!? と思ったけれど、どうも違うようで良かった。


 久々に家族と食事を取る。何となく、ギクシャクしてしまう。

 私って駄目ね。


 食後は王宮へ向かう用意をする。流石に自室に帰らないとね。サラにお願いをして手を繋いで貰い、一緒に自分の部屋に入った。


 私の部屋は移動させられた部屋ではなく、元の部屋。令嬢達が居なくなった後、すぐに私の部屋はサラ主導で元に戻ったのだろう。何事も無かったようにベッドも何もかもが元に戻っていた。


「サラ。ありがとう」


 ポツリと呟いた言葉にサラは泣きながら何度も謝っている。


 私は恨んでも怒ってもいないわ。侍女という身分でしかないサラには仕方なかったのだもの。

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そうそう、サラさんには無理 本来守らなきゃいけない侯爵一家が無能だからこうなった
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