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【連載版】ラスボス義兄に一目惚れしました  作者: 岩越透香
幕間②

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生徒会

三章で入れられなかった話を中心に更新していきます。

 夏休みが終わり、二学期が始まるとすぐに生徒会役員の引継ぎ作業が始まった。兄を含めた現三年メンバーを中心に私たち一年生に仕事を教えてくれるらしい。各学年のメンバーは四人ずついて、一年生は私、メリナ、グレイ殿下、オリバーだ。ゲームでは殿下とオリバー、アメリアともう一人男子が役員だったような気がする。私が兄に頼んで役員になったのは、ゲームでは攻略対象だった二人と仲良くなって黒幕退治の足掛かりにするためだ。


 自己紹介をしている時は、オリバーから私たちへの敵意を感じたような気がしたけれど、穏便に終わった。問題はその後――役職決めだった。殿下が副会長、私が会計に立候補したところまでは良かったけれど、オリバーとメリナの立候補先がどちらも書記で、被ってしまった。


 この学院では一年生で就いた役職で二年生の役職が決まる。一年の時副会長だった人は会長に、会計だった人は会計、というように。そして、一年生で庶務をやった人は監査に、書記をやった人は副会長になるため、来年の副会長の座を狙って二人が争っているというわけだ。


 皮肉を言いあい、舌戦を繰り広げている二人を私は眺めていることしかできなかった。……良かった、計算が得意で。計算が得意でなければ間違えて書記に立候補してしまっていたかもしれない。



 役職決めの勝者はオリバーで、彼が書記を務めることになったらしい。簡単に仕事内容を説明してもらった後、先輩たちは「同級生で仲良くなってね」と私たちを生徒会室に置いてどこかへ行ってしまった。


「改めて、これから二年間よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくお願いします。()がグレイ様をサポートしますわ」

「私も精一杯頑張ります!」

先輩たちが居なくなった後、殿下が話を切り出してくれたことは良かった。けれど、性別の差もあって、殿下が出せる話題も多くはなかった。


「……」

私が話を広げてしまうとメリナの印象を悪くしてしまいそうだし、メリナが話すと何となく殿下が嫌がっている。オリバーは普通に話せていない。そのせいで生徒会室はとても居心地の悪い空間となってしまったのだ。


「グレイ様は夏休みは何をしていらしたの?」

メリナが話題を切り出してくれて内心ガッツポーズをしたけれど、殿下は一言で会話を終わらせようとしていた。


「わ、私は祖父母と買い物をしに行きました。殿下はこの休暇中どこかに出かけられましたか?」

殿下は私の問いかけには普通に答えてくれた。そしてオリバーは殿下の話ならすんなり答えてくれるらしい。もうやだ! 殿下が会話を回して! 私、そういうの苦手なんですけど!


 体感では三時間ぐらい経った頃だろうか。先輩たちが戻ってきて、地獄みたいな空気を感じ取り頭を抱えた。



 一年生の仲が悪いという問題はひとまず見て見ぬ振りをして、四人を分断させてそれぞれに先輩が指導してくれる方針になった。私の指導係は二年の会計の先輩がやってくれることになった。三年の先輩にはなんとなく避けられているような気がする。兄が何かしたのだろうか。


「エミリア、順調?」

殿下の呑み込みが早かったのか、兄は何度も私の様子を見に来てくれた。会計の仕事は計算はあるけれど、わりとシンプルだから、ほとんど仕事は覚えている。しかし、兄に会う口実づくりに少しだけ手を抜いているのは先輩には秘密だ。


「ええ、お兄様。先輩の教え方が上手なおかげです」

「そうか、困ったことがあればいつでも聞いてね」

「ありがとうございます、お兄様」

そんな私たちの様子を見て、先輩がぼそっと「仲が良いな……」と呟いた。



 顔合わせでは――それ以前も――仲が良くなかった二人だけれど、生徒会活動での相性は悪くないらしい。同族嫌悪と言う言葉が頭に浮かぶ。


「あなたにはこちらがお似合いよ」

「はっ、そういうのなら、完璧に仕上げてみせろ」

二人が口喧嘩するのは変わらないものの、仕事面ではかなり有能で、むしろ競争している分早く正確にこなしているのだとか。


 少し前に、メリナにオリバーの印象について聞いてみたことがある。すると、「悔しいけれど優秀よ」との評価を貰っていた。


「鼻につくのは欠点ね。それを実力で黙らせてきたのでしょう。私には通じないけれど」

「そうなんですね?」

「ちょっと、どうして笑っているの。答えなさい」

ゲームでは悪役令嬢だったメリナにライバル的な友人ができているなんて、現実は分からないものだ。そう考えていると顔に出てしまっていたらしい。


「メリナがオリバーと仲が良いようで良かったな、と」

「やめなさい」

彼女には即否定されたけれど、本気で嫌っているようには思えなかった。



 勉強も、生徒会の仕事もしているとあっという間に冬になった。――もうすぐ兄が卒業するころだ。生徒会は会場の設営、卒業式後のパーティーの段取りの確認など様々な仕事があるけれど、一つ特権がある。それは卒業式に参加できることだ。


 会場の端の方に座り、卒業式を見守る。私たちが準備した式が成功できるのかという不安と、兄が卒業してしまう寂しさで胸がいっぱいになった。


 式が進み、卒業生代表が話す時が来た。代表はもちろん兄。話す内容はごく一般的なもので、ゲーム内での事件前の評価――優等生といった言葉だ。


 話し終わったとき、兄が私を見たような気がした。兄は会場を見渡していただけで特に深い意味はないと思うことにした。卒業したって会える家族より、学院にいる友達を見るだろうと。期待して駄目だったらやっぱり悲しいから。


 卒業式が終わり、会場から三年生が居なくなると、私たちも急いでパーティー会場に向かう。仕事のためではあるけれど、私としては兄の姿を目に焼き付けるためだ。兄が同級生と一緒にいる瞬間なんてとても貴重だ。目に焼き付けておかないと。


「あ、それ会場に運びますね」

「ありがとう、でもそれ重いけど……」

「大丈夫です、こう見えて私は力持ちなので!」

先輩から荷物を預かりパーティー会場へ向かう。


「エミリアちゃん、凄いな……。あの重量を持って走れるなんて……」

先輩の呟きでやりすぎたと悟ったけれど、一生に一度の機会だから止まるわけにはいかなかった。

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