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【連載版】ラスボス義兄に一目惚れしました  作者: 岩越透香
中ボス令嬢に敵視されています

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22/32

8

 今日は兄との勉強会。早起きして支度を完璧に済ませた私が五分ほど早く寮を出ると、兄が入り口の前にいた。


「おはようございます、お兄様!」

「おはよう、エミリア。それじゃあ行こうか」

兄に手を引かれ学院に入る。試験期間中は休みの日でも図書室が空いているから、そこで勉強するのかと思っていたけれど、兄は迷わず階段を登った。


「お兄様……?」

「本当は良くないから秘密にしていてね?」

兄が足をとめたのは生徒会室の前だった。扉を開けると応接間のような部屋があり、衝立で奥は隠されている。その奥に行くと、生徒会役員用の机が置いてあった。


「用もないのに入ってはいけませんよね、ここ」

「だから内緒」

兄は彼の机から本を取り出し、入り口すぐのテーブルの上に置いた。


「始めようか、さあ座って?」

「……はい」

私はここで勉強することを選んだ。関係者以外は基本立ち入り禁止なこと以外は素晴らしい環境だった。


 向かいに座る兄のことを意識しないように手元に集中する。……駄目だ。どうしても意識してしまう。兄は足を組みつつ本を読んでいるのだが、その様子はどこか威厳がありかっこいい。読んでいるのは教科書だろうか、魔法書っぽい気がする。


「手が止まっているけど大丈夫?」

「あっ……えっと、ここが分からなくて……」

正直に兄を見ていたとは言えず、分からない場所をでっち上げる。


「ここ? ずいぶん難しい問題を解いているね。見せてみて」

ノートを手渡そうとするが止められ、兄が私の横に座った。私の字が小さいこともあって兄が文字を読む間、兄の髪が私に触れる。


「――どう?」

「は、はい! 分かりました!」

「今、何も考えずに返事したよね?」

「そそそ、そんなことは……」

「今日は理解できるまでちゃんと教えるから」

ずっと一緒に居られるなら、分からないままでも良いけれど……教えてくれている兄に申し訳ないからしっかり話を聞くようにしないと。



「――良かった」

張り出された成績上位十名には私の名前が含まれていた。


 他の知っている名前でいうと、殿下やオリバー、メリナ、アメリー、カンネがいた。


「おめでとー! エミリアちゃん! 私は赤点回避したよー!」

「流石です」

隣で見ていたライラとカンネが上位入りを祝ってくれた。


「カンネもおめでとうございます」

「当然だよ! カンネは頭が良いから!」

カンネの代わりにライラが自慢げに言った。私だって兄を自慢できる隙を見つけたらするだろうし、その気持ちがとても分かる。


「ところで、カンネ」

今までの楽しそうな声色から一転、真面目なトーンでライラが言った。


「サマーパーティーに出れないって嘘だったよね? 赤点取った子もパーティーの準備してたよ!?」

「あくまで噂でした。真偽は分かりません」

「ふふ、仲が良いようで何よりです」

「どこがー!?」

ライラはそう言いつつも、仲が良いことを誇るように顔は笑っていた。



 試験が終わると次はサマーパーティーだ。サマーパーティーは学院の庭園で行われ、軽いドレスで参加する催し物で、用意される食事もサンドイッチやマカロンなど手で食べられるような軽いものだ。私のようにパーティー慣れしていない令嬢にとって気楽に参加できるからありがたい。エスコート役は兄が申し出てくれたためとても気が楽だ。一応は婚約しているので、兄がエスコートしてくれるのは当然ではある。それはそれとしてとっても嬉しい。


「白と緑のグラデーションのドレスに夏の花を合わせようかと思っているのだけれど」

「きっとお嬢様にお似合いです。レオン様に伝えておきます」

「ありがとう、アンナ」

私が伝えに行きたいところだけれど、令嬢としてそれはマイナスになるので大人しくアンナに任せた。



「かなり人がいますね」

「全学年が参加するパーティーだからね」

参加は自由だというのに、参加者は百人は超えている気がする。帰省のために帰る人もいるだろうに、ここまでの人気イベントだったとは。


「あの、あちらの方々は?」

「パートナーがなんらかの理由で不在の生徒だね」

兄が居なかったらあの場に私も居たのだろうか。その軍団の中にライラたちを見つけた。カンネの婚約者は学院を卒業済らしいので、そういう人もいるのだろう。


「あちらに行っても良いでしょうか?」

「行くなら僕は居ないほうが良いのかな……。せっかくならエミリアの友達に会ってみたいけど」

ちらちらと様子を伺いつつ、兄と話しているとこちらに誰かが向かってきた。


「こんにちは。エミリア嬢、生徒会長」

「ご機嫌よう――」

「お久しぶりです、殿下」

私の挨拶に少し被せるように兄が殿下に挨拶した。


「意外だったな、お前は年上好きだと聞いていたのだが」

……前世と合わせたら私は年上判定、か。


「もしかして先輩のことでしょうか? あれは互いにパートナーが不在だっただけです」

「そういうことにしておこう。では良いパーティーを」

殿下は爆弾を投下するだけして去った。兄はなんだか気まずそうにしている。


「特定の相手を作ると変な勘違いをさせてしまって面倒なんだ」

「なるほど?」

妹の私なら単なるエスコートでしかないから余計な噂がない。私としては噂されても良いけれど。


「ところでお兄様、好みは年上ですか? 年下ですか?」

「エミリアが殿下に影響された……」

兄は困ったように年下だと答えた。私は二歳下だから年下、守備範囲内だろう。


「ライラ、カンネ、ご機嫌よう」

「エミリアちゃん! もしかしてお相手は……」

「兄ですよライラ。彼はレオン・フォン・ラヴィーネ様、生徒会長です」

ライラがその先を言う前にカンネが耳打ちをした。ライラは驚いた様子で私たち二人を見比べている。


「はじめまして。レオン・フォン・ラヴィーネです。妹と仲良くしてくれてありがとう」

「いえいえ、こちらこそ……」

「これからもどうぞよろしく。……エミリア、また後で」

「ええ。エスコートありがとうございました」

サマーパーティーは緩い会で、パートナーとは分かれて他の人と親交を深めるよう推奨されている。そのため名残惜しいけれど兄と別れる。


 これからは二人と行動すればいいと思っていた矢先、バラバラに行動することを提案されてしまった。


「サマーパーティーは普段話さない人と話すのが目的の一つなんでしょ? なら私たちも一緒に居ないほうが良いよー。……私は良い人を見つけたいし」

……彼女の本音は最後の言葉なのだろう。令嬢にとってそれは死活問題だということは知っている。


「……そうしましょう」

「成果は聞かせてくださいね?」

「きっと良い報告をしてみせるよ!」

――こうしてぼっちが誕生した。一人で立っているのは嫌だから会場を散策してみようかな。

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