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【連載版】ラスボス義兄に一目惚れしました  作者: 岩越透香
幕間①

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13/13

ラヴィーネ家の七不思議?

「ガストン、ラヴィーネ家の七不思議って知ってるか?」

「口じゃなくて手を動かせ。残業したくない」

調理器具を片付けていると、噂好きな同僚のエレクが俺にそう聞いてきた。彼の話は嘘が六割、誇張が四割だと思っているからまともに聞く必要もない。


「そんなお前に教えてやろう」

「あ、聞いてねえなコイツ」

「其の一、消えた侯爵様!」

何も返答しないでいると、その沈黙を肯定と捉えたらしく、詳しく話し始めた。


「これは聞いた話なんだけどな、執務室にいるはずの時間に訪ねても居なかったらしいんだ」

「トイレか?」

「だがしかし、次に執務室に行ったときにはそこに居たらしい!」

「トイレだな」

相変わらず手を動かさないエレクの代わりに洗い物を終える。……料理の腕は認めるが、こんなサボり魔がどうして侯爵家で働いているんだか。


「其の二、消える料理!」

「また消える系か。レパートリーが少なすぎねえか?」

「よく分かったな! ちなみに三つ目は存在しない五つの不思議と言うつもりだった!」

多分、語呂がいいから七不思議と言っているだけだったのだろう。やっぱり誇張していたな。


「料理?」

とはいえ料理人として料理と聞いたら聞くしかない。この感じだと、おそらく七不思議は誇張されたもの。――つまり元となる話は存在するはずだ。


「ああ、実はこの厨房には家に住み着く妖精にお供えするための小さな机があるんだ」

「妖精なんて迷信だろ」

「俺もそう思っていた。消えたのを見るまでは」

ああ、嘘だったか。聞いて損したな。今日はもう帰ろう。


「その目は嘘だと思ってるな!? 本当だ! 嘘じゃねえ。目を離した一瞬の隙に消えたんだ!」

往生際悪く言い訳をするエレクを厨房に置いて俺は家に帰った――のだが、奴は何日にも渡って料理が消える話をし続けた。


「はー。確認すりゃ良いんだろ? 消えなかったら、その話は終わりな」

「よし、じゃあ今夜な!」

「はあ……。まあ一日だけなら良いか」

その日は少し憂鬱な気分のまま仕事をすることになった。


「先輩たち喜んでたな」

「そりゃあ片付けを引き受けてくれたら誰だって喜ぶ。……お前、俺を喜ばせてみないか?」

「嫌――じゃない。やるから拳をしまってくれ」

仕事をしながら観察を続けても変化はなし。やがて洗い物も片付き、なぜか結婚しているエレクの話を聞くという苦行もしたが変化はなかった。


「もう十二時過ぎだな。帰るぞ」

荷物をまとめて厨房を出る。


「一晩中見てよう!?」

「阿呆か。明日も仕事があるのを忘れたか?」

やはり引き留めてくる同僚は無視して帰ろうかと思ったが騒ぐやつを屋敷に置いていては迷惑だと思い直す。同僚を連れ帰るために厨房に入った時、空になっている食器が目に入った。


「は?」

あの一瞬で食べ物を隠したのか? 口の中も服の中も確認したがどこにも痕跡はない。


「お前、どこに隠した?」

「え? あ! 消えてる! やった、あれは見間違いじゃなかったんだ!」

騙そうとしていたのだと思ったが、彼は純粋に驚き喜んでいるように見える。なら、本当に妖精の仕業なのか……?


「いや、ありえない。誰かが俺を騙そうとしていたはずだ」

俺は絶対に騙されないからな……!



「なあ、七不思議を仕入れたんだが聞いていかねえか?」

エレクは忘れた頃に七不思議の話を持ち出してきた。料理が消えたタネを見破れなかった俺をカモだとでも思っているのだろうか。


「どうせエミリア様関係だろ?」

「正解! 流石だな」

「ここ最近で何かが変わったならそれしかねえよ」

半年ほど前にこの屋敷に来たエミリア様は活発な方らしく、よくそこら辺で見かける。レオン様は相変わらず顔を出されないが、彼女たちが来たからか、侯爵様の雰囲気は柔らかくなっているような気がする。


 エミリア様の表情の変化は侯爵様に似て乏しいが、よく見ると感情豊かでついお菓子をあげたくなってしまう。そのたびに料理長に怒られてはいるが。


「お前はエミリア様が来てから菓子作りにハマってるよな。……犯罪だぞ?」

「そんな目で見てねえよ!」

その疑いを向けることはエミリア様にも失礼だろうに。……一発くらい殴っておくか。


「いってえ……。図星か? あっ待って待って殴らないで」

「調子の良いやつだな」

「じゃあ誰が好きなんだ? 好きなやつくらいいるだろ」

俺の好きな相手を広められるか、エミリア様をそういう目で見ているという根も葉もない噂が流されるか……。迷った末に好きな人の名前を告げた。


「だからいつもエミリア様に多く菓子を持たせていたんだな。ふーん」

「もっかい――」

「じゃあ話を戻すぞ!」

拳を握りしめたことに気がついたのか、話を変えてきた。


「三番目は動く雪像だ! 無言で拳を握るな!? 庭師の爺さんに聞いたんだよ。エミリア様が雪遊びをした日に何か巨大な物が動いたってな!」

「雪像だとは限らないだろ?」

「あの日のデカいものっていったら雪像しかないだろ! エミリア様が倒れた後、雪像が壊れていたってのも怪しいな」

ラヴィーネ家の相伝魔法は冷気を操る魔法だと聞いたことがあるが、雪像を動かすのは冷気を操るなんてレベルではない。やはり庭師の見間違いという線が妥当か。


「せめて七つ集めてから教えてくれ」

コイツがいるから楽しいのは事実だが……毎日のように話すのは少しだけ疲れるな。

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