1本目
「向日葵―」
その一言で現実に戻る。
向日葵「何でしょうか」
「いや、だから花を見繕ってって」
向日葵「何のために?」
「墓前に飾る花だって」
向日葵「竜胆と樒、菊でいいかな」
「何でもいいけど…」
向日葵「切っとこうか。このあとすぐ行くんでしょ?」
「頼んでいいかな」
向日葵「オッケー」
―
「それじゃ、行ってくるわ」
向日葵「気をつけてねー」
「お前もボーッとしているんじゃないぞー」
向日葵「大きなお世話…と言いたいけど、気をつけるー」
―
向日葵「はぁー…終わった、終わった」
花を店の中へ戻す。
シャッターを下ろそうとすると一人の女性が走ってくる。
「まだ大丈夫ですか?」
向日葵「ええ、まぁ。なんの御用ですか?」
「薔薇を一本欲しくて…」
向日葵「用途は?」
「彼女に渡したくて」
向日葵「…ちょっと待ってくださいね」
「あ…変だと思われちゃったかな…」
向日葵「いえ、意外といらっしゃいますよ。ピンクの薔薇なんてどうでしょうか?」
「赤じゃなくて…ピンク?」
向日葵「ええ、女性に渡すならピンクがいいかと。完全に私の好みですが」
「それじゃそれで。一本いくらですか?」
向日葵「レジ〆ちゃったんでいいですよ。楽しい時間にして、成就したらまた買いに来てください」
「ええ…それはそれで気が引けるけど…ありがとう!また買いにきます!」
向日葵「夜道、気をつけてくださいね」
「向日葵さんね!覚えておく!」と言い、駆けていく。