たった一人のアナタヘ...
【 たった一人のアナタへ… 】
作者 田村トシミ
この文章を読んでくれている
アナタの事を、
私は何一つ知りません。
でも
とても感謝しているんですよ。
何故ならアナタだけが
私の小説を読んでくれたからです。
アナタはきっと忘れていると思います、
だって沢山の小説が
出ていますもんね。
私は以前、
〈トップシークレット〉
と言う小説をこのサイトに
投稿しました。
DCとマーベルに
「こんなヒーローはどうですか?」
と提案する様な小説です。
「ヒーローは、
地球を護る為に、
敵も味方も一般人も含めて、
いったい
どれだけの人が死なないと
護れないのか?
町が破壊されて、
色々な乗り物が壊されて、
やっとヒーローが登場。
なるほど、
その方が話が盛り上がりますもんね。
でも私の心の中は
何だかモヤモヤしてて…
だって
現実社会の中では、
子供のケンカから、
国どうしの戦争に至るまで、
絶え間なく争いが
繰り返されて居るのが今の
現状でしょ!
ならばせめて、
映画や小説の中ぐらいは
なるべく人が死なない範囲の、
ヒーローの
話はないだろうか?
私は
そんな事を思いながら
映画鑑賞をしていました。
しかし、
そんな話はウケません、
絶対的な悪が必要なんです。
其れを退治するから面白いんです。
でも私は
そのセオリーを
自分の胸の中に閉じ込めて、
極力人を殺さない、
何なら
死んだ人を
生き返らせるヒーローを考え…
トップシークレットと言う小説を
書き上げ、
出版社に十分の1ほどの原稿を
送らせて頂き
感想を聞かせて貰いました。
かなり
図々しい男だと思います。
でも
「発想が斬新で面白いですね!
失礼ですが年齢を聞かせて頂いて
宜しいですか?」
「はい、60歳です」
「えっ?本当ですか?随分と
発想がお若いですね、
もし自費出版などをお考えでしたら、
全文を読ませて下さい」
「ありがとうございます。
その様な大それた事は
考えて居ませんので…
原稿の見て頂けただけで嬉しいです。
本当に
ありがとうございました」
そう言って電話を切った。
あぁ…本当は
お金が有れば出してみたい。
30年前の美容師業界は
景気が良かった。
私が一人でしている美容室も
貯金が出来るくらいに
儲けさせて貰った。
しかし
世の中の不景気と、
コロナウイルスが重なって、
なんとも厳しい
状況になってしまったのだ。
昼間は美容師、
夜は工事現場の警備員、
現在,
世間で言うところの
ダブルワークをして
家庭の生計を維持しているのだ。
自費出版する様な余裕は
これっぽっちもない!
毎月の支払いだけで
カツカツなのである。
しかし、
そんな時に
子供から教えて貰った
無料で小説を載せさせて貰える
このサイト…
なんと有り難い
夢のようなサイトではないか。
喜び勇んで息子に
投稿して貰ったのだが…
誰にも読んで貰えない。
なるほど、
面白くなかったのだ。
やはりセオリーを無視しては
いけないのである。
そんな時、
私の小説の所に 1の数字が現れた。
嬉しかった。
誰かが読んでくれたのだ。
妻子から
「良かったね!」
と言う言葉をかけて貰い、
私も御満悦状態に成っていた。
しかし、
1と言う数字は
そこから増える事は無かった。
妻子から、
「題名が悪いんじゃないの、
文章がダラダラと長いんじゃない、
もっと縮めたら」
「なるほど、そうかもしれない」
半年かけて文章を縮め、
大事な部分も削りながら
題名を「トップシークレット」
から
「義賊は空に住んでいる」に変えて
もう一度
息子に投稿して貰った。
しばらくすると 1の数字が現れた。
おっ凄いぞ、
妻子の言う事を
ちゃんと聞いて良かった。
でも
そこから
数字が増える事は無かった…
2ヶ月ほどした時
サイトの方からお知らせがあった。
(アナタの小説はR15に指定されました)
そこで私はやっと気がついた。
私の小説を読んでくれた
1人のアナタは…
たぶん、
このサイトを管理されている
お仕事の人なのだ…
と言う事は、
実質的に読んで
下さった方は1人も居ないのだ。
( 落胆 )と言うものは、
決して悪い事ばかりでは無い。
ゼロ、
これ以上の下は無いのだ、
何も気負う必要が無くなったのである。
落胆は
良い感じで、
私の肩の力を抜いてくれた。
客観的に、
自分の作品を見つめ直す
時間をくれたのだ
まず、
冷静に考えれば、
文法も何もかもが滅茶苦茶だった。
セリフが多すぎる、
セリフだけで構成されていると言っても
過言では無い、
其れでは舞台の台本に成ってしまう。
今、このサイトで
「最後の小説」
と検索すれば、
私の小説が照れ臭そうに顔を出す。
便利ではないか。
とても探し易い。
其れに、
時代が変われば
もしかしたら、
一番最後の私の小説が、
ひっくり返って
本当の一番になるかもしれない。
我ながら、
何と身勝手で、
負け惜しみの強い男だろうか、
みっともないの一言である。
でも良いではないか、
1番に成る
夢くらいは見ようじゃないか!
私は小説に時間をかけたが、
家族には迷惑を、
かけてはいない。
更に、
お金もかけていないのだ。
誰もいない美容室で…
店の隅に置いてある椅子に座り、
一人でニヤニヤしながら
スマホに小説を打ち込んでいる。
側から見ると
気持ちの悪い男であろう。
老眼鏡をかけて
スマホを触ると、
初めのうちは良いのだが、
何だか段々と眠たく成ってくる。
私は
スマホを抱いたまま
口を開けて寝てしまう…
妻子から
不防備なカバだと写メを
撮られてしまった。
「これ…お父さんの寝顔…」
カバが…
夢を胸に抱えて…
幸せそうな顔で眠っていた。
私は
小説を書くと言う夢のお陰で、
生活に張り合いを持ちながら
日々を楽しく、
笑顔満開で生きているのだが…
いずれにせよ
私の書いた小説は、
面白いくらいに誰にも
読んで貰えなかった。
まっ、悔やんでもしょうがない、
これも一つの結果なのだ。
そんな時、
2021年4月、
他府県で一人暮らしを
して居る
息子は助かったが、
私と妻と大学生の息子が
コロナにかかってしまった。
どこで感染したのか分からない。
私は美容室を一人でしているし、
家内は電車に乗って
スーパーに働きに行っているし、
息子も電車に乗って大学に
通っていた。
とにかく
コロナの陽性に成ったのだから
しょうがない。
その日から
保健所と連絡を取り合い、
「コロナに成りました…」
と言う張り紙を
店の入り口に貼り…
3人で家の中に籠る事に成った。
なぜ入院をしないのか?
出来なかったのだ。
保健所から全身ビニールで包まれた
看護師さんが来てくれた。
家内が特に重篤で、
血中酸素が79%と出た時の
看護師さんの慌て方、
スマホを直ぐに取り出すと
「こちらの患者さんは大変危険な状態です、
直ぐに入院しないと…」
しかし、
どこも空いてない様だった。
「奥さん、ご主人…
すみません…
病院が何処も空いていません…
気を強く持って頑張って下さい…」
そう言って帰って行った。
クスリは前日
病院で貰った解熱剤だけ、
其れも3日分…
この時は
とにかく感染者が多かったのだ、
誰の責任でもない。
有り難い事に
息子の症状は軽かった。
私の体温は38度で、
ふらつきと、
軽い呼吸困難ていど。
とにかく家内が重症だった。
次の日から家内は動けなくなり
食べ物を口に運び、
そして
「下の」世話が
はじまった。
まさか
大学生の息子にやらせる訳には行かない。
いくら自分の母親だからと言って、
排泄現場を見れば
トラウマになるだろう。
家内は泣きながら
「お父さんゴメンね…」と
言っている、
「謝らなくて良いよ、
夫婦なんだから
あたり前の事でしょ…
恥ずかしがらなくて良いから」
そう
かっこのいい事を言ったのだが、
実は、
その時の私は、
目まいがひどくて、
立っている事自体が必死だった。
其れこそ
気力で乗り越えたのだ。
2日後、
外に出ている息子が、
車を2時間走らせ
必要な物を買い込み、
家の前に置いてくれた。
ドアを開けずにガラス越しの会話
「ありがとうね…
気をつけて帰ってな…」
「うん…お父さん達も頑張ってな…
お母さんは上で寝てるの?」
「うん、さっき小さな
おにぎりと味噌汁を食べさせてさ、
解熱剤を飲ませて…
今は寝てるよ…」
「そうか…血中酸素は…」
「うん、何とか80を超えてくれた…」
不安げな息子の顔、
少し涙目になっている。
後日聞いたら、
あの時は
3人とも死ぬんじゃないだろうかと
不安に思っていた様である。
大学生の息子が
「兄ちゃん…中に入って、
お母さんの顔を見てく…
あっそうか、
感染すると…あかんなぁ…」
「そうやな、
顔を見たいけど…
また…いる物があったらLINEしといでや…
何でも買って来るから…」
長男の後ろ姿を見送りながら、
(絶対に治すんだ!
死んでたまるか!)
腹の底からそう思った。
2週間後…自然治癒力で
なんとか3人とも
コロナに打ち勝つ事が出来た!
本当に
運が良かったとしか
言いようが無い。
コロナを乗り越えた後、
私は何となく
自分の終活の事を考える様に
なってきた。
15歳、
中学を卒業した後に
美容師に成った。
技術さえ身に付ければ一生食べて
行ける。
52歳までは本当に
衣、食、住、
プラス旅行にも行けたが、
今現在、
62歳の私はダブルワークで、
毎月ドキドキしながら日々を
送っている。
技術には…
とりわけ接客業には、
コロナは余りにも厳しかった!
とにかく、
経済的にかなりヤバイ状況に成った。
2022年1月…
かなり着込んでいたのだが
警備の最中に寒さのあまり
胸が締め付けらて、
息がしずらく成った。
私の命が
「まずい事に成るかもしれない」と
身体に囁き出したのだ。
私は前より増して
真剣に終活と向き合うように成った。
大事な物など何も持っていない。
しかし
大事な者はいる、
最愛の妻と、
何歳になっても可愛い二人の
息子である。
経済的に何も残してやれない…
有るとすれば
私が亡くなった後、
家のローンが保険で賄えるので、
30坪の土地だけである。
私は、
自分の生きた証を残したい!
真剣にそう思う様に成ったのだ。
62年間、
楽しい事ばかりではなかった。
だから
死んだ後くらいは、
幸せに成りたい…
そう思ったのである。
きっと誰でもそう
願うのでは無いだろうか?
そこで私は、
「年がら年中お盆」
と言う小説を書いた。
好きな事を書き綴った、
自己満足全開の内容である。
出来上がった小説を
何回も読み返し
「こんな幸せの掴み方が有っても
良いじゃないか、
頑張って来た人は
必ず幸せに成るんだ!
セオリーなんてどうでもいい!
ざまあーみろ、
ハッピーエンドにしてやった!
あぁスッキリした!」
今…たった一人のアナタは
この小説も読んでくれているでしょう。
本当に
ありがとうございます。
其れがアナタの仕事であっても、
私は…
とても嬉しい。
「年がら年中お盆」は、
ある出版社に原稿を全文送りました。
3日後、電話があり
「私としてはかなり面白いので、
いま上司にも読んで貰って居ます。
木曜日の1時から2時の間に電話を掛けさせていただきます」
其れが土曜日。
ドキドキしながらの五日間、
電話はかかって来なかった。
冷やかしだったのか?
ガッカリしながらの2日間。
土曜日の18時、
いきなり
電話がかかってきた。
何だか過分なお褒めの言葉が
受話器の向こう側から
私の心の中に入ってくる。
美容室なので鏡に囲まれている、
周りに誰も居なくて良かった。
情け無いくらいにニヤけた顔が、
鏡の向こう側から私を見つめている。
「私の気持ちを書いた手紙が、
月曜日に届きます。
御家族の方にも見て貰って下さい。
その3日後の木曜日に、
私の方から細かいお話を…」
私は
恥をしのんで彼の話を遮り、
現在の
我が家の経済状況を説明した上で
「自費出版は出来ませんので…」
とお伝えした。
「はい、その事も含めて
話を進めさせて頂きます」
おぉ分かって頂けた。
そして喜びに満ちた
妄想の二日間。
月曜日、
手紙が届いた。
私の勝手な受け止め方なのか…
えっ?無名の私の小説を
出版してくれるの?
えっ?
そんな訳無いよね。
自分では判断出来ないので
妻子に手紙を観てもらった。
「この文面からいって…
貴方の小説を出したいと言う
事だと思うわ…」と妻。
「お父さんスゴイじゃん,良かったね」と
息子達、
だけど私は
もしもの事を考えて
「いやいや、
褒めては貰って居るけれど、
絶対に自費出版は如何ですかって
言われるから」と
予防線を引いておいた。
でないと
自費出版のお誘いだと
妻子が落ち込むからだ。
しかし、そう言いながらも
心の中のニヤニヤが止まらない。
その夜、
警備の仕事で
工事現場に立っている私…
身体は疲れて居るはずなのに、
妙に心がワクワクして居る。
15分の休憩時間、
街路樹が植わっている
150mほど先に、
新幹線が走り抜けた。
見た感じが2センチほどの間を
走り抜けて居るので、
時間にして2、3秒くらいだと思う、
一瞬にして消え去る閃光に、
なぜか心が躍るのだ。
「君(新幹線)に最後に乗ったのは、
30年くらい前だったね、
本契約で東京に呼ばれたら、
もしかしたら…
君に乗れるかもしれない…
いやいや無駄遣いはやめよう、
夜行バスで行こう…
でも…
契約が結ばれたら
帰りは新幹線でも良いかな…
良いよね。
そう言えば飛行機にも
30年乗ってないよね、
2つとも夢のある乗り物だよね」
たわいの無い独り言…
(お金持ちに成ったらどうしよう…)
そんな妄想を描きながら、
3日間を過ごした。
そして、木曜日の昼11時45分…
私は愚かにも
獲っても居ない狸の皮を
数えてしまったのだ。
家内に
「もしも契約が結ばれたら、
屋根の雨漏りの修理がしたいね!」
すると家内が
「ローンを全部払って、家を引っ越したい」
と言った、
私は思わず頷いてしまった。
12時、
出版社から電話が入った。
もう賢明なアナタなら結果は
分かっていただけて居ると思う、
でも…
一応言いますね。
初めは小説の事を褒めちぎってくれた。
「500以上あった作品の中から
30作に絞りました。
その中に貴方の小説が…
夜の警備員を辞められて、
作品の打ち合わせをしませんか…」
あぁ…夢のようなセリフ、
軽い目まいを起こしながら
受話器を握りしめている私。
しかし次の瞬間
現実が顔を出した。
「つきましては、電子書籍なら
150万ほどで、紙でしたら
300万円ほどです…」
あれれ…?
初めに生活が苦しくて
現在ダブルワークですと伝えたよね?
お金がないから
自費出版は出来ませんって…
確かに言ったよね、
あれっ?彼は忘れちゃったの?
「あの…すみません、
その様な余裕が有りませんので…」
「ならば時間をかけて、
三年ほどかけて、一年に50万円ずつ
振り込んで貰えましたら…」
私は
出来る限りの丁寧な言葉を選び…
話をお断りした。
ここ3日間、
近年まれに見るほど
駄目オヤジの
株が上がっていたのだが…
たった今、
株は一気に暴落した。
怖くて妻子の顔が…
見れない。
しかし
出版社の方を恨んではいけない。
彼らは
慈善事業をして居る訳ではないのだ。
売れるかどうか分からないモノに
時間とお金をかける訳が無いではないか。
500の中の30…
なるほど、
いちおう少しは売れるかも知れない…
そう思ったのか?
其れとも…
誰に対しても
もれなく500の中の30と
言っているのか?
とにかく、
会社の名前の入った本を作り、
自分の会社と契約している本屋さんに
置いあげる…
さぁ貴方も今日から
小説家の先生ですよ!
でも…
売れない時のことを考えて、
かかった経費は全て自分で出してね!
其れこそが
嬉し恥ずかし
自費出版の真髄です。
決して出版社には損をさせない
賢い仕組み。
なんでも過去から現在に至るまで、
「名のある先生方は一人も
もれる事なく
初めの一冊は自費出版なんですよ」
とサラリと言われた。
「其れは出版業界の常識なんですよ」
とも言われた。
私はそんな事も知らない
愚か者だったのだ。
上の息子に現状を説明すると
「そんなの当たり前じゃん!」
と言われた。
待て待て、
お前に出版社からの手紙を見せたら
「おぉ凄い、出してくれるみたいやなぁ」
って、言ってたじゃんか!
お父さん、
その言葉を真に受けていたんだよ。
中卒で美容師に成った
お父さんには、
その辺の
社交辞令が分からないから、
大卒のお前に
手紙を観て貰ったのに…
いやいや止めようではないか、
息子が悪い訳ではない、
他人のせいにするのは
最低の行いだ。
私の受け止め方が
間違っていたのだ。
其れにポジティブに考えれば
幸せな3日間だった。
たった今其れは
終わってしまったけど…
( 三日天下 )と言う言葉がある。
私は天下を取った事はないが、
3日間…
本当に楽しい夢を見させて貰った。
まず、
親戚から借りて居る借金の
完済をした。
当然想像だけで有る。
次に、
家を引っ越して
高級住宅街に家を構えた。
更に、
子供達が大学で借りて居る
奨学金の返済もした。
なおかつ、
母と姉の老後の資金を
渡す事が出来た。
そして最後に、
新幹線や飛行機に乗った
家族旅行にも行ったのだ。
獲ってもいないタヌキの皮を
数えながら、
楽しい夢を見させて貰った。
其れで良しとしよう!
私は本当に、
あさましい性格の男である。
でも、
具体的に良い事もあった。
今まで一人しか読んで貰えなかった
小説だったが、
確実に出版社の方の二人が
読んでくれたのだ。
これで『年がら年中お盆』の読者は、
たった一人のアナタと…
そこに二人も増えたのだ。
懲りない私は、
次の小説を書き出している、
題名は
( ブラザービーチ )
その次は
( 山国 )と言う小説の
大まかな箇条書きも書き上げた。
いまだ、懲りずに候…である。
なぜ小説にこだわるのか?
一つには
お金の掛からない趣味なのだ。
二つ目は…
小学6年生の時、
担任の戸島先生がから
「君が書いた作文を、
先生方ばかりが集まる会合の席上で
発表したところ…
とても良いと評価して貰った」と
皆んなの前で褒めてくれたのだ。
今まで
「コイツの家ビンボーやぞ!」
と言われ続けていたのが、
その日をさかえに
ビンボーと言う謗りが(そしり)
小学校を
卒業するまで無くなったのだ。
私は非常に単純な男である。
その時
褒めて貰った事を、
50年経った今でも
ズッと心の中にしまっているのだ。
それくらい
先生に褒めて貰った事が…
嬉しかったのだ。
では何故、
小説家ではなく
美容師の道を選んだのか?
中学3年生の時、
美術の先生が、
「今回、彼が描いた絵が、
学年で一番上手い」と
褒めてくれたのだ。
其れで美術の「美」と言う字が入った
美容師に成ったのだ。
幼稚園から中学を卒業するまで、
月謝を期限までに支払えた
事が一度も無い…
そりゃ周りの人間から
ビンボー人と呼ばれるだろう。
経済的に高校、大学など
夢のまた夢である…
しかし美容学校は、
その当時、月一万円で通えたのだ。
親がお金を出せない事を想定して、
5月から、
梅田の地下の喫茶店で
ウエイターのバイトを8ヶ月した。
後の3ヶ月は、
卒業した後に雇って頂ける美容室に
バイトに通った。
難しい漢字の読み書きが出来ない
私が、
小説家になれる訳がない、
長年そう思っていた。
だから美容師と言う仕事に
全力を注いだのだ。
ところが、
時代が変わり携帯電話が普及した。
更にスマホが出来た。
ひらがなを打てば
勝手に漢字に変換して
くれるのだ。
読めても書けない60代の私!
スマホは馬鹿な私の救世主である。
さて、
くだらない私の過去の話しは
もう
おしまい。
たった一人のアナタも疲れて
来たでしょう、
もうすぐ終わります。
最後に、
私がいかに馬鹿なのかを書いて、
この話を
終わりにしたいと思います。
まず、一冊も本を出せないのに、
自分の事を
自分一人で
コッソリと小説家と言っています。
家族には言ってません、
馬鹿にされますから。
二つ目、
誰にも読んで貰えないくせに、
素晴らしい小説家に与えられる賞を…
鏡に写る自分に向かって、
「お前も同等の位を持つ小説家だよ」
と、囁いています。
妻子には絶対に秘密です、
馬鹿にされますから。
だけど、
人の可能性は無限大だと
思いませんか?
この先
素晴らしいドンデン返しが
有るかも
しれないじゃないですか。
だから希望を絶対に捨てません!
ましてや
自殺なんて絶対にしません!
命ある限り
「ブラザービーチ」と「山国」を
書きます。
でも途中で、
病気や何かで亡くなったら…
その時は、
私は自分で書いた
「年がら年中お盆」
の話し中で
生き続けて行きます。
だって私の理想の「あの世」を
自分で創り上げたんですから、
めちゃくちゃ楽しい世界なんですよ!
我ながら終活にふさわしい
小説だと
自画自賛しております。
この文章はアナタしか
読まれないと思うので
本音で書いちゃいました、
馬鹿げた話でしょう。
私は、
名のある花では有りません。
油断すると
そこらに生えて来る、
名前もよく分からない様な雑草です。
雑草は強いですよ!
しぶといですよ!
今日も店の隅で
ニヤニヤしながら小説を書いています。
そして疲れると
口を開けて寝落ちをして居ます。
私は、
そんな62歳の雑草です。
いや…懲りない
小説家です!
完…