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094.精霊術士、テーマパークへ行く

 瞬く間に3か月が過ぎた。

 この3か月で、僕らは、聖塔の攻略に向けて、様々な準備を行った。

 その中でも、特に大きなことは、2つ。

 1は、レベル上げだ。

 僕の"才覚発現"とチェルの"スキル効果向上・極大"の相乗効果を利用した魔物狩りによって、僕らのレベルは全員が70の大台に乗った。

 世界的に見ても、これだけ高いレベルへと至った冒険者はほとんどいないだろう。

 さらに、レベル上げのために、上級ダンジョンへの挑戦を続けた結果、エリゼのスキルの力によって、様々なドロップアイテムも得られた。

 特筆すべきは、セシリアさんの新しい槍だろうか。

 それは、というダンジョンのボスを倒した時に、手に入れたものだ。

 名を"ロンゴミニアド"という。聖なる力を持つ槍で、アンデットへの特攻を有している。

 チェルの聖剣と同じ素材で作られているらしく、およそ武器としては最高峰の性能のものだ。

 ただでさえ高かったセシリアさんの攻撃力に、さらに磨きがかかったと言えるだろう。

 また、ステータスアップの宝箱にも、たびたび出会うことがあり、本来のレベル以上に、僕らは高いステータスを獲得していた。

 そして、もう1つの中心的な活動は、アイドルとしてのものだ。

 メロキュアさんから提示された条件を達成する意味でも、僕らは、冒険者としての活動と同じくらい、アイドル活動にも精を出した。

 特に結成半年を記念して行われた野外ライブは、街の外からも、たくさんの人々が訪れ、これまでよりもさらに大きな賑わいを見せた。

 その後、行われた握手会では、再びリオンが、なぜか僕の名前付きの団扇を持って現れたりもしたのだが、とりあえず、また、チェルから教わったように握手しておいた。

 久々に握ったリオンの手には、出会った頃のチェルと同じような豆がいっぱいできていた。

 彼が本当に心を入れ替えて頑張っているのだということを感じさせられるような掌だった。


「さあ、いよいよ聖塔の攻略に乗り出す時が来よった」


 カングゥさんとの攻略対決を決めた場所でもある野外ステージの上、僕らはメロキュアさんに集められていた。


「攻略は3日後。準備は滞りなさそうやな」

「ええ、レベルも上がったし、装備も整ったわ」


 チェルが答えると、仲間達も力強く頷いた。


「随分、自信がついたみたいやな」

「で、できる限りのことはやりました!」

「はい、私達は、以前よりもずっと強くなっています」

「言葉に嘘はないやろう。せやけど」

「足元だけは掬われないように、と言うのだろう。叔母様、私達は決して油断しない」


 セシリアさんの言葉に、今度はメロキュアが大きく頷いた。


「さて、そんな頑張ったあんたらに、ひとつご褒美や」


 そう言って、何か紙切れのようなものを差し出すメロキュアさん。

 受け取ったチェルが、首を傾げる。


「これって……」

「あ、これって、王都で来年オープンする予定のテーマパークのチケットですよね!!」

 

 コロモが目を輝かせて、そう言った。

 テーマパーク? なんだろう。何か面白い施設なのだろうか。


「そや。いろんな乗り物なんかが楽しめる夢の国の招待チケットや」

「うわぁ、このチケットがあれば、オープンしたら、いつでも入れるんですか?」

「いや、このチケットは特別やねん。なにせ、オープン前に入れるチケットなんやから」

「あー、もしかして」


 僕はなんとなく勘づいてしまった。


「僕らを広告に使いたい、ってことですか?」

「そういうことやね」


 ニッと笑うメロキュアさん。


「オープン前のこの施設で、君達にめいっぱい遊んでもらって、それを映像水晶で放送するんや。今や、あんたらの人気は、この街だけやなく、王都でも相当のもんになってきとるからな。宣伝効果もでかいってもんや」

「なるほどね。まあ、仕事として受けるのはやぶさかじゃないけど」

「そんなに構えんでええよ。何せ、クライアントからは、君達が自然に遊ぶショットが、いくらかあれば十分って話を聞いてる。あとは、単純に、レジャー感覚で楽しんでくれればOKや」

「そんなことでいいの?」


 ガッツリ、施設のアピールをする気満々だったチェルが、若干拍子抜けしたような表情を見せた。


「ええんや。今回の目的のメインは、君らの休養や。これまでの間、あんたらはわき目も降らず頑張ってきた。知らず知らずのうちに、疲労もたまっとるはずや」

「それは確かにそうかもしれないな」


 セシリアさんが頷いた。

 彼女は、僕達と出会う前は、ソロで冒険者をやっていた。

 疲労が、己のパフォーマンスに与える影響が一番身に染みているのは、彼女だろう。


「だから、めいっぱい楽しんで、疲れを癒して欲しい」

「必要な休養というわけね」

「せや」

「だったら、存分に羽根を伸ばさせてもらうとするわ」

「で、でも、今から王都に移動するとなると、3日じゃとても間に合いませんよ」

「その辺は、大丈夫や。転移結晶がある」


 転移結晶は本来、ダンジョンからの緊急脱出に使われるものであるが、決して、ダンジョンだけで使えるというアイテムというわけではない。

 たとえ、どこにいても、登録されている教会へと一瞬で移動することができるのだ。

 つまり、教会がある街同士であれば、その日のうちに行き来することさえできてしまう。

 もっとも、転移結晶自体が、かなり高価なものなので、命に関わらない状況で使うことが稀だというだけだ。


「いいんですかね。めちゃくちゃ贅沢しちゃってるような……」

「ええんやええんや。転移結晶ぐらいやったら安いもんや。とにかく、攻略やアイドル活動の事は、今回だけは忘れて、存分に楽しんできぃ」


 そう言いつつ、笑顔を浮かべるメロキュアさん。

 僕らは、それぞれが受け取ったチケットをただただ眺めていたのだった。

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