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081.精霊術士と楽屋裏

 ライブ当日の朝がやってきた。

 今日は、攻略に向けての準備はお休みして、午前中からライブの準備に取り掛かる。

 ダンスの確認に、機材チェック、リハーサル……目まぐるしく進んでいく時間の中、チェル以外のメンバーにはさすがに余裕がない。

 唯一、セシリアさんだけは、一見飄々としていたが、いつもよりも口数が少ない気がする。


「お、おはようございます!!」

「おはよう~。ノエルちゃん~!!」


 緊張感漂う楽屋の中に、ふわふわとした笑顔を顔に張り付けてやってきたのは、ぬいぐるみ屋のお姉さんだった。


「これ、差し入れ~。みんなで食べて~」

「わー!! ありがとうございます!!」


 受け取った袋には、有名な甘味処のお饅頭が入っていた。

 甘いものが大好きなエリゼが、特に目を輝かせる。


「おいしそう! でも、お腹出てる衣装だし……」

「まだ、時間があるし、一個くらいなら大丈夫だろう」

「お姉さん、本当にありがとうございます」

「これくらいいいのよ~。ノエルちゃんを含め、みんなのおかげで、私もいっぱい楽しませてもらってるから」


 お姉さんが、にこりと笑う。

 その笑顔を見ていると、これからライブに望むという緊張感も少しほぐれてきたように感じた。


「アリエルちゃんの調子はどう?」

「良い感じですよ。新しい衣装も作ってもらって」


 今日のライブに向けて、ぬいエルは、お姉さんに新しい衣装を仕立ててもらっていた。

 新曲のイメージである一番星のイメージに合わせて、星形の髪飾りをつけているのが、とてもよく似合っていた。

 このぬいエルの新衣装は、僕ら自身の衣装をアレンジしたものであり、今回僕らが着る衣装は、今ぬいエルが着ているのをミニスカートにしたような形のものだった。


「今から、ステージで、みんなやアリエルちゃんが踊ってるのを見るのが楽しみだわ~。あ、踊るだけじゃなくて、今回はソロパートもあるのよね」

「あはは、それがあるから、実はとても緊張してて……」

「きっとノエルちゃんなら、大丈夫よ~。頑張ってね~!」

「はい!!」


 お姉さんが去っていくと、他にも何人か差し入れを持った人たちがやってきた。

 改めて、僕らの活動には、本当に多くの人が関わっているのだと感じさせられる。

 ほんの数か月前までは、誰からも必要とされていなかった僕が、こうして、たくさんの人たちから、必要とされている実感。

 誰かに必要としてもらうために冒険者になったわけじゃないけれど、それでも、やっぱり、こうしてたくさんの人が笑顔を向けてくれることは、今の僕にとって、大きな力になっていると思う。


「みんな、そろそろよ!!」


 最終まで、スタッフさんと舞台演出についての確認を行っていたチェルが、楽屋へと戻ってきた。

 気づけば、外からは、たくさんの人たちがステージの開幕を待つ、ざわざわとした音が聞こえている。

 緊張はしている……。でも、嫌な緊張じゃなかった。


「それじゃ、今日も、来てくれた人達の度肝を抜いてやりましょう!」


 チェルの声に、みんなが力強く頷いた。


「私達はぁ~」

「かわいい!!」

「強い!!」

「輝くアイドル冒険者!!」

「ライブの成功目指してぇ~!!」

極光の歌姫ディヴァインディーヴァ、レディ……」

『ゴー!!!』


 掛け声と共に、僕達は舞台へと飛び出したのだった。

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