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078.精霊術士とラッキースケベ

 さて、宝箱開封とボス撃破ライブを終えた僕達は、すぐには戻らず、未だ、黄昏の湖畔の中にいた。

 ボスを倒した後の、中央島には、雑魚モンスターの姿も一切見当たらず、平和そのものだ。

 青々とした空が広がる砂浜のロケーションは、なかなかどうして悪くない。

 で、そんな最高の環境で、僕らが何をしているかといえば……。


「ほら、コロモ。もっと胸寄せて、胸」


 手持ちの魔動カメラを向けつつ、そんなおっさんみたいな台詞を言っているのは、チェルだった。

 言われた当人のコロモは、顔を赤らめつつも、指示通りに、その一般的に見て、かなり豊満な胸を寄せる。

 谷間がグッと強調されて、童顔とは相反する、セクシーさが際立つコロモ。

 恥ずかしがっている様子が、いっそう扇情的で……いや、いかんいかん。弟子をそんな目で見ちゃいけない。

 僕は、コロモに光を当てるために持ったレフ板と呼ばれる反射板の角度を調整しながら、煩悩を捨て去ろうと湖を方を眺めた。うん、綺麗な湖だ。心が洗われるね。

 僕らがしているのは、今度、発売を予定しているというイメージ映像水晶のための撮影だった。

 なんでも、アイドル冒険者としての僕らの人気から、今までの攻略やライブの映像を集めた総集編的な映像水晶を発売するという話になったらしい。

 しかも、極光の歌姫としてではなく、個々人での発売となる。

 それぞれのメンバーの映像水晶を購入することで、そのメンバーと握手ができる権利を持つ"握手券"というやつもつけるのだそうだ。

 販売方法を思いついた時の、チェルとマネージャーさんのほくそ笑んだ顔が、とても印象に残っている。アコギだなぁ。

 とはいえ、ありがたいことに、それを望んでくれているファンの人もたくさんいるようで、ある意味ウィンウィンともいえる関係性が成り立っている。

 そんなわけで、僕らは、この誰にも邪魔されない最高の環境を利用して、特典用の水着映像を撮影しているというわけだった。


「次は、そうね。腰を捻って、おしりをこちらに向けてみましょう」

「こ、こうでしょうか……」

「うん、いいわよ。コロモ……ちょっと女の私でも興奮する」


 男の僕も興奮しちゃいそうなので、その辺りで止めときませんか、チェルさんや。

 すでに、エリゼやセシリアさんの撮影は終わっているのだが、こちらもなかなかに、際どい内容だった。

 同姓同士だからか、チェルの結構な無茶ぶりにも、みんな恥ずかしがりつつも、色々なポーズを取ったり、動きをしたり……。

 撮影補助として、レフ板を持ったり、髪をなびかせたり、シャボン玉吹いたりしながらも、僕も時折、理性が飛びかけた。

 その度に、海を見て、心の平静を保っていた僕だったが、さすがに、そろそろもう心臓が保ちそうにない。


「さっ、コロモはこんなところね」

「あ、ありがとうございました!」


 カメラが下ろされると、コロモはホッと胸を撫で下ろした。同時に僕もホッとする。

 相当恥ずかしかったようで、顔はもう茹蛸のようだ。

 レフ板を揺らして風を送ってやっていると、コロモは気持ちよさそうに目を細めた。


「師匠、すみません。お手を煩わせて」

「全然だよ。むしろ……よく頑張ったと思う」


 コロモの性格的に、あんなポーズを取ったりするのは、かなり抵抗があっただろうに、本当によく頑張ったよ。


「私、変じゃなかったですか……?」

「へ、変だなんて、とんでもない。その……凄く魅力的だったというか」

「師匠から見て、魅力的だったなら、う、嬉しいです……!!」


 満面の笑みで、そう言ってくるコロモ。

 僕の弟子は、本当に可愛いです、はい。

 と、その時だった。

 座った状態から立ち上がろうとしたコロモが、体勢を崩した。


「あっ……」

「コロモ!」


 砂浜なので、怪我をする心配こそなさそうだったが、僕は反射的にレフ板を放り出して、コロモを支えようと身を乗り出した……のだが、自分も砂に足を取られて、その下敷きになった。

 結果、コロモの豊満すぎる胸部が、彼女自身の体重で、僕の顔面に押し付けられる形となる。


「む! むふ!!」

「す、すみません!! 師匠!!」


 慌てて起き上がるコロモ。

 危うく窒息死しそうになった僕に、コロモがしきりに頭を下げている。

 だが、そんな言葉すら耳に入らないほど、僕の頭は、完全に茹っていた。

 柔らかい……まるで、マシュマロみたいだった……。


「知ってるわ。確か、これ、ラッキースケベっていうのよね」

「ほほう。神話の英雄譚にも、たびたび登場するという、あの」

「放心してますね……ノルのエッチ」

「師匠! 本当に、大丈夫ですか? 師匠!!」


 泣き出しそうな顔で、僕の全身をぶんぶんゆするコロモ。

 結局、僕がまともな思考を取り戻したのは、それからしばらく経ってからのことだった。

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