071.精霊術士、水着になる
それは、絶景だった。
僕のパーティーメンバーであるところの4人の美少女。
チェル、コロモ、エリゼ、セシリアさん。
今、僕の目の前では、その全員が全員、あまりにも魅惑的な姿をしていた。
端的に言おう。水着である。
まずは、チェル。彼女は細い。細いのだが、出ているところは出ているというまさに均整の取れたスタイルというやつで、まるで作り物にさえ見えてしまうほどだ。
そんな彼女を包み込むのは、髪色と同じ、ピンク色の水着。ビキニタイプだが、腰には、シースルーのパレオが巻かれている。
防御力アップ効果のある髪飾りや腕輪なんかも装備されており、どことなくエスニックな雰囲気も感じられる装いだ。
続いて、コロモ。普段から、服を押し上げている彼女の大きな胸。今日はそれがガッツリ露わになっていた。
チェルと同じく、ビキニタイプの水着だが、全体的に、どこかメイドさんのような意匠が施されており、クロスデザインの肩ひもや腰回りには、ふわふわのフリルがふんだんに使われている。
ともすれば、そのグラマラスな体型から、露出すると、必要以上にセクシーになりすぎてしまうきらいのある彼女だが、それらのおかげで、随分可愛らしいという印象に振られているように思える。
続くエリゼはオフショルダータイプのビキニで、バストから腕回りまでが、ドレープ状のひらひらになっている。
強調されるのは、その圧倒的なくびれ。いや、実際のウエストはチェルの方が細いのだろうが、ヒップが大きめのエリゼは、余計にウエストとのギャップが生まれ、その腰のラインは、まさに聖女の名にふさわしい美しさだ。
以前は、もう少しだけぽよぽよした感じもあったのだが、アイドルとしての日々のダンスレッスンの成果か、以前より引き締まったような印象を受ける。
最後に紹介するセシリアさんは、もはや語るのもおこがましいほどに、完璧な肢体だった。長身でスレンダーな体つきだが、二の腕やふとももなんかは、しっかりと鍛えられているのがわかる。腹筋もうっすらと割れており、セクシーというよりは、カッコいい身体という方が似つかわしい。
4人が4人とも、とんでもないスタイルの美少女ばかり。
これは、映像水晶の前の男性視聴者もさぞ前のめりに……って。
「いや、なんで水着……」
理由はわかっている。わかっているのだが……ちょっとみんな露出度が高すぎないだろうか。
必要以上に肌の露出の多いメンバーの姿を映像水晶越しにでも見られることに、なんだか、少しだけ抵抗を感じる。
その上……。
「とても似合っているな。ノエル」
「し、師匠、可愛すぎます」
「細い腕、脚……私ももう少し華奢だったら……」
「うーん、さすが、マネージャーね。ナイスチョイスだわ」
4人全員の視線が一斉に僕の方を向いて、僕は思わず両腕でその身を抱いた。
こういうのを羞恥プレイっていうんだろうか。
水着の美少女4人にじっくりと眺められる僕の水着姿……いや、これ、恥ずかしくて死ぬ。
もし、ノルの姿で、ただ、男性用の水着を着ているだけなら、これほど恥ずかしくないだろう。
ノエルの姿で、女物の水着を着ているから、めちゃくちゃ恥ずかしいのである。
他のメンバーとは違って、ワンピースタイプの水着を着せられた僕。マネージャーさんが選んだものだ。
布面積が多く、スカートもついているので、露出は他のメンバーに比べればかなり少なくはあるが、そんなの関係ない。
今までも、フリフリの衣装を着た姿をたくさんの人に見られているわけだが、水着はやはりレベルが違う。
こう羞恥心がむくむくと胸に湧き上がってきて、顔がとんでもなく熱い。
いや、本当に、僕の女装水着姿、配信されちゃうの……。
僕、もうお婿に行けなくなっちゃいそうなんだけど……。
「ほら、ノエル。カメラの前でアピールよ。可愛さ振りまいて。今日はそれで攻めるんだから」
むーりー!!
チェルさん、鬼畜すぎますって……!!
「あっ、こら、ぬいエルで身体を隠すな!!」
「だが、恥じらっている、そんな姿もいい」
「セシリアさん……」
攻略開始早々、すでに心が折れかけている僕ではあるけど、ここは説明せねばなるまい。
なぜ、僕達が、こんな水着姿なのか。
理由は、単純。このダンジョンでは、その方が都合が良いからだった。
現在攻略中のダンジョンの名前は黄昏の湖畔。
湖の外周と、さらには、その中がステージとなるダンジョンだ。
その中とは、つまり水中ということであり、僕達は、特殊な魔法を使うことで、この湖の中のダンジョンを攻略する手筈なのだ。
水中では、通常の装備や衣服では、大きく動きが阻害されてしまう。
そんなわけで、僕達は、普段とは違って、露出の多い水着姿で、攻略に臨んでいた。
もっとも、漆黒の魔都からこのダンジョンに攻略目標を変更した理由が、かわいさアピールがしやすいから、というものであり、水着姿になることこそが、そもそもの目的であるとも言えた。
いや、だけど、これ、かわいい、というよりは、男性視聴者を喜ばしているだけのような気も……。
とはいえ、さすがに、チェルは考えているようで、このダンジョンには、もう一つ、とある旨みがある。
若干、運の要素が絡むとはいえ、エリゼがいれば、それを引き当てられる可能性も高い。
「ほら、みんな、さっさと行くよ!!」
「あ、こら、ノエル! 精霊術士がパーティーの先陣を切ってどうするのよ!!」
一刻も早く、この羞恥プレイを終わらせられるよう、僕は、いつにも増して、気合を入れて、攻略に臨むのだった。
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