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070.精霊術士と次の計画

 世紀の対決となった極光の歌姫ディヴァインディーヴァ暁の翼(ウィングオブドーン)の攻略勝負。

 あまりに激しすぎる戦いの余波や、移動スピードの速さなどから、魔動カメラが追い切れていない部分も多く、後日、使える場面だけを編集した完全版として、放送されたのだが、これが、また、大反響を呼んだ。

 世間の見方でいえば、かつて栄光を誇った暁の翼と、新進気鋭の極光の歌姫という構図だ。

 その上、エリゼやセシリアは元暁の翼とあっては、視聴者としても、その因縁に興味津々といったところであった。

 もっとも、攻略中、暁の翼のメンバーは、漆黒の十字軍ブラッククルセイダーズの魂を入れられていたため、その因縁めいた部分というのは、まったくといっていいほど見られなかったわけなのだけど。

 それでも、雪原やマグマというロケーションの面白さや、バトルの激しさ、最後のチェルの一撃の見事さなど、様々なところで、視聴者の期待には十分すぎるほど添える内容になったといっていいだろう。

 カルデラの風景をバックにしたボス撃破ライブも、なかなかに見ごたえのあるものにできたと思うし。

 結果としては、勝利した僕達はもちろんのこと、スマートな攻略を見せた暁の翼も評価を上げたと言って良かった。

 同業者に与えた影響も大きく、僕らの攻略動画に触発されて、最近は、攻略配信の数が増えてきており、界隈全体の賑わいにもつながることになった。  

 しかし、その結果、一つ困ったことも生じていた。


「もう今回を超える話題性のあるダンジョン攻略なんて……ないわ!!」


 机をバンっと叩いて立ち上がりながら、チェルが言った。


「た、確かに……」


 そう、今回の攻略。端的に言えば、"盛り上がりすぎた"のだ。

 そもそも、ダンジョン攻略は一つのパーティーで挑戦するのが基本であり、今回は非常に特殊なケースだった。

 対決という構図の魅力は大きく、単純に"攻略"という部分をメインに楽しんでもらおうと思えば、さらなる盛り上がりを見せるのはかなり難しいと言えた。

 それこそ、神域の聖塔に挑戦するくらいしなければ……というところだが、もちろん、まだ、僕達は聖塔には挑戦できない。

 僕達が聖塔に挑戦するには、まだ、条件がいくらが足りていないのだ。

 つまるところ、極光の歌姫単独での上級ダンジョン攻略で、今回以上の面白さを視聴者に提供するのは、不可能に近いと言えた。


「いや、でも、多少は仕方ないんじゃ……」

「ダメよ! 人気なんてものは、一過性のものよ。胡坐をかいたら、あとは下っていくしかないんだから」


 むぅ……。

 さすがに、トップアイドルまで上り詰めた人間の言葉。どことなく重みを感じる。


「だから、次の攻略は変わり種で行くわ!」

「変わり種?」

「ええ。思えば、カングゥとの対決では、少し殺伐としすぎていたわ」


 ふむ、確かに、今回の攻略では、僕らの売りの一つであるところの"かわいい"の成分が足りていなかったかもしれない。

 戦った中ボスや大ボスも、一般的な視点で見れば、恐ろしい見た目や能力を持つものばかりだったしなぁ。

 雪原や溶岩地帯なんていう、エリアそのものの過酷さも、それに拍車をかける結果になっていた。

 そのため、同業者にはすこぶる評判が良かったものの、アイドルとして、僕らを好きと言ってくれている人達や、ぬいエルのファンの女児達などからには、そこまで高い評価にはならなかったようだ。

 唯一、そういった人にも評価が高かった部分と言えば、雪山でもきわどくひらめくチェルのスカートからのぞく絶対領域と僕とぬいエルのもふもふ双子コーデくらいだったかもしれない。


「今回は、私達の"かわいい"方の魅力を、たっぷり見てもらいましょう」

『"かわいい"方の魅力?』


 ハモった4人の声をBGMに、チェルは、今日も見慣れたビジネススマイルを浮かべていた。

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