表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/123

007.精霊術士とレベルアップ

「はぁっ!!」


 チェルの剣が閃き、ミニオークのこん棒が半ばから折れて宙を飛んだ。


「ぶ、ぶひぃ……!!」


 武器を失ったミニオークが悪あがきのように体当たりをしてくる。

 あ、ちょっと危ないかな。


「サー・エイフェチ」


 ボソリとつぶやくと、アリエルが、ミニオークを風でわずかに押し戻した。

 死に体になったミニオークの胴を、チェルが横薙ぎにする。


「ふぅ……これで3体目だね!」


 ミニオークを始末したチェルが、額の汗を拭う。

 そんな何気ない仕草一つとっても、彼女のそれは美しい。

 やっぱりさすが人気ナンバー1アイドルだなぁ。


「おい、お前さん。何、うちのお嬢を見つめてやがる」

「あ、いや……」


 いつの間に背後にいたのか、サングラス越しに、マネージャーさんが凄みを利かせてきた。

 いや、やっぱり顔怖いです。


「もう、マネージャー。ノルを怖がらせないで」

「別に怖がらせちゃいねぇ。だけどよ」


 ザンバラの金髪をボリボリと掻くマネージャーさん。


「やっぱり俺には、こいつが何をしてるんだか、さっぱりわからねぇ」

「だから、ノルは、精霊を使役して──」


 と、その時だった。

 チェルの身体を包み込むように、光が弾けた。


「もしかして……これ……?」

「うん」


 そうレベルアップだ。

 冒険者は、素の自分の身体能力に加え、レベルアップを重ねることで、様々なステータスの恩恵を受けることができる。

 しかし、ちょっと早すぎないだろうか。

 確かに、レベルの低いうちは、必要な経験値というものも少なく、比較的早いスピードでレベルが上がるものだが、チェルが、倒した魔物は、まだ、たった3体。

 どれもレベル的にはそう高くなく、至って、普通の魔物だ。

 僕の【才覚発現】による取得経験値上昇は、それほど効果のあるものではないはずなんだが……。

 まあ、それは置いておいて。


「おめでとう」


 まずは、素直に彼女の喜びを共有してあげよう。

 思い返してみれば、僕も、初めてのレベルアップは本当に嬉しかった。

 あの感動を初めて味わっているとするならば、それは格別なものだろう。


「うん!!」


 満面の笑みで微笑みかけてくるチェル……なんだかレベルアップした本人よりも、僕がご褒美をもらってしまった気分だ。

 あっ、マネージャーさん。さりげなく、肘で腰をつんつんしないでください。怖いです。


「よーし!! 頑張るわよ!!」


 さらに、やる気を出したチェルと共に、僕達はダンジョンを突き進む。

 とても、快調だ。

 僕の簡単なバフだけで、チェルは、次々と敵を撃破していく。

 途中、複数の魔物に襲われることもあったが、アリエルの力を使って、常にチェルと魔物が一対一で対峙できるようにサポートした。

 そうこうしているうちに、4層目へと突入した僕たち。

 コウモリ型の魔物を一刀両断した瞬間、チェルの身体が再び光を放った。


「やった! また、レベルアップ!! これで、レベル5ね!!」

「え、えぇ……」


 いや、いくらなんでも早すぎるだろ、これ。


「もしかして、チェルも獲得経験値が上昇するユニークスキルを持ってるの?」

「えっ? 持ってないよ」


 そうだよなぁ。効果は微妙とはいえ、僕のこれも、唯一無二のユニークスキルだし。

 そんな都合の良いスキル、そうそう持ってるわけが……。


「私のユニークスキルは、【スキル効果向上・極大】だよ」

「………………えっ?」


 何そのユニークスキル。聞いたことない。


「たぶん、名前からすると、同じパーティーの仲間のユニークスキルの効果を、上げることできるんだと思う」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って……!」


 えっ、それってつまり、彼女のスキルの力で、僕の【才覚発現】の効果がパワーアップしてるってこと?

 しかも、これだけ早くレベルアップしているってことは、相当の上昇量のはず……。

 自然と、ごくりと唾を飲み込んでいた。


「ん、どうしたの、ノル?」

「あ、いや、その……」


 マジマジと僕を見つめるチェル。

 いや、この娘、圧倒的に規格外かもしれない。

 この娘となら、本当に……。

  

「おい、階段があったぞ」


 マネージャーさんの声に、僕とチェルは振り返る。

 すると、ほんの少し先の地面に、下の階へと続く、階段があるのが見えた。

 どうやら、いよいよボスフロアらしい。


「行こう! ノル!」

「あ、ああ……」


 チェルの無限の可能性に驚嘆しつつも、僕は彼女に手を引かれて、最下層への階段を降り始めたのだった。

「面白かった」や「続きが気になる」等、少しでも感じて下さった方は、広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますととても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ