058.勇者パーティーと5人目の助っ人
「さて、セッティングというやつはこれで良さそうですね」
魔動カメラを空中に放り投げた私は、確認するように、そのレンズへと目を向ける。
あとは放送局とやらが、操作して、動画を撮影してくれるらしいので、こちらが意識を割く必要もない。
しかし、時代は変わったものだと思う。
ほんの10年も経たないうちに、魔動機器というのは、飛躍的に進歩した。
この魔動カメラもそうだし、映像水晶や音響水晶といった、今や誰もが簡単に手に入れられるようになった魔道具もそうだ。
私達が、聖塔の攻略を経て、持ち帰った"アレ"がこんな形で、世界を変えてしまうなんて思っても見なかった。
まあ、アレそのものよりも、それを応用して様々な物を開発した彼女の存在の方が大きいのだろうが。
時代の移り変わりに、わずかばかりの寂しさを感じていると、唐突に、入り江に面する海が波打った。
そして、次の瞬間……。
「だっしゃーーーー!!!!」
海を割くようにして、鮮やかなブロンドの髪をした女が私の前へと降り立った。
拳には小手をつけ、大きくくびれた腰が惜しげも無く露出されている。
そして、特徴的なピコピコと左右に動く狼の耳。
「ギリギリで間に合いましたね。クーリエ」
「おおー!! 本当に、グゥだぁ!! 久々ぁ!!」
いきなりのハイタッチに、無表情のまま返す。
「相変わらず、陰気だなぁ!!」
「あなたも相変わらず、何も考えていなさそうで安心しました」
「お互い、変わりなしってことだなぁ!!」
馬鹿みたいに笑顔を向けるこの女性は、元、漆黒の十字軍のクーリエ。
今回の対決にあたり、唯一、招聘した本物の"仲間"である。
まだ10代にしか見えないが、私とそれほど歳の変わらない白狼族の女性であり、パーティーでは、最前衛を任されていた。
故郷で暮らしていた彼女が、間に合うか不安だったが、どうやらギリギリのところでなんとかなったようだ。
「しかし、泳いでくるとは……本当に相変わらずですね」
「だって、引退してから、グゥが誘ってくれるなんて、初めてだったからさぁ!! ちょっと遠かったけど、泳げば間に合うかなぁ、と思ってぇ!!」
「バカみたいな体力に衰えもないようで、安心しましたよ。頼りにしてます」
「おっけおっけぇ!! よーし、久々に暴れちゃうぞぉ!!」
グッと伸びをする彼女の姿には、頼もしさしか感じない。
少し不安があるとすれば、それは、助っ人たちの方だ。
「こちらも、器として、上手く働いてくれると良いですが……さて」
私は、横に並び立ち、黙ったまま俯いている暁の翼の面々に手をかざす。
今回、彼らと交わした契約は、"暁の翼"の名義と、パーティーメンバーの肉体を借り入れること。
そして、彼らへの報酬は、極光の歌姫を敗北させることそのものと、暁の翼の名誉回復だ。
もっとも、契約を交わしたのは、ヴェスパという盗賊の男であり、他の2人の同意は取っていない。
言質を取った瞬間、私が、彼らの意識を奪い取ったからだ。
必要なのは、彼らの肉体であり、彼らの冒険者としての実力等は、それほど重要ではない。
「さあ、降りてきて下さい。皆さん!」
私は、3人の肉体に向けて、自身の職業としての能力を行使する。
暗黒色の靄が彼らの肉体を包んだその瞬間、今まで傀儡のようだった彼らが、ゆっくりと頭を上げた。
「この人達に、みんなの魂を降ろしたのぉ?」
「魂そのものではなく、コピーですがね。本人達ほどとはいきませんが、それに準ずる能力を持った冒険者に仕上がっているはずです。もっとも、器にされたこの面々の肉体には、それなりに負担をかけてしまいますが」
「何度見ても、悪役みたいな能力だねぇ。さすが"呪術師"」
「有用な能力と言って欲しいところです」
その時、ちょうど5分が経過し、タイマーから音声が響き渡った。
「スタートの合図?」
「ええ、準備は、よろしいですか?」
「もちのろんだよぉ!!」
「では、漆黒の十字軍改め、暁の翼。行くとしましょうか」
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