049.精霊術士、スキルの真の力に気づく
「おめでとう!! チェル、コロモ!!」
事務所でクラッカーを鳴らした僕達は、口々に新たな職業を得た2人を賞賛した。
祝われた本人たちも、これ以上ないくらいにこにこしている。
それはそうだろう。
チェルが得た職業は勇者。
コロモが得た職業は大魔導士。
どちらも、あらゆる職業の中でも、最高位のものであり、これ以上のものは望めないと断言できるほど素晴らしい職業だ。
「これで、極光の歌姫は、いっそう強くなる」
「はい、ここまでレアな職業が勢ぞろいしたパーティー、そうそういないですよ」
エリゼの言う通りだ。
これで、僕達のパーティーは、勇者、大魔導士、聖女、戦乙女、そして、精霊術士という構成になった。
精霊術士と言う評価の付けづらい職業は置いておくにしても、ものすごいメンツであるのは間違いないだろう。
その上、全員がアイドル。なんというか、もう……。
「あ、あの、師匠……」
「ん、どうした、コロモ?」
ぴょこぴょことこちらへとやってきたコロモは、なんだかとても嬉しそうな顔で、僕へと頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。新たな職業を得られたのも、師匠のおかげです」
「何言ってるんだよ。君の頑張りを女神様がきっと見てくれてたんだ」
「いえ、私、祈りを捧げている間、ずっと師匠の声が聞こえていたんです。私の祈りよりも、もっともっと強い想いで、師匠が、クラスチェンジの成功を祈ってくれているのを」
彼女は、いとおしそうに手を結ぶと、うるんだ瞳で僕を見つめている。
「師匠の想いを感じたから、私も諦めずに、祈り続けることができました」
「コロモ……」
「あー、私も聞こえたわ」
と言うのは、チェルだ。
「ノルの暑苦しいくらいの心の叫びが聞こえて、なんだか、当然のように勇者になっちゃったの」
「暑苦しいって……」
まあ、必死に祈りましたけどね。
でも、僕の祈りが聞こえたなんて、まさか、そんなこと……。
「お二人もなんですね」
「えっ、エリゼ?」
「実は、私も女神様から"聖女"の職業を授かった時に、ノルの声が聞こえたんです」
「そ、そうだったの……?」
「はい、幻聴かとも思っていたのですが」
僕と一緒にクラスチェンジした3人が3人とも、僕の祈る声を聞いたと……。いったいどういうことだろう?
「あの、私思うんですけど」
そう言ったのはエリゼ。
「もしかして、私達が高位のクラスを得ることができたのは、ノルのユニークスキルの効果なんじゃないでしょうか」
「えぇっ!?」
僕のユニークスキルと言うと、チェルのスキルとの連携がなければ、ほんのわずかな経験値アップ効果しかない【才覚発現】に他ならない。
いや、でも、それはさすがに……。
「あり得ないことではないな」
「セシリアさん」
「君の関わった人物は、皆、高位のクラスを得ている。以前のパーティーメンバーだったリオンも勇者の職業を得たのは、君とパーティーを組んでからだろう。同じパーティーの仲間として、2度も勇者のクラスチェンジに立ち会った人物など、おそらく君しかいまい」
「た、確かに……」
僕が今までクラスチェンジに関わった人物は、リオン、エリゼ、チェル、コロモ……あと、一応、ヴェスパもか。
考えてみれば、勇者が2人に、大魔導士、聖女、大盗賊。確かに、相当凄いラインナップになっている。
それに、クラスチェンジが行われる時には、必ず、僕の胸が灼けつくように熱くなるという症状が出ていた。
「真相はわかりませんが、少なくとも、私は師匠のおかげだと思っています。だから、改めて、ありがとうございます。師匠」
「そうね。私も、ノルのおかげだと思う。私を強くしてくれてありがとうね。ノル」
「とっても遅くなっちゃったけど、私からも、改めてお礼を言わせて。ありがとう、ノル」
「い、いやぁ……」
三人の美少女から同時に頭を下げられて、なんだか、顔が急激に熱くなってくる。
「師匠、あの、感謝の気持ちを伝えるためにも、是非、何かさせて下さい。肩をお揉みしたりとか、そんなことしかできませんが」
「あ、だったら、私は、たまにはお酌してあげるわ。トップアイドルにお酒注いでもらえる機会なんて、なかなかないわよ」
「え、え、わ、私は……昔みたいに、耳かきとか、しようか? ノル」
「いや、ちょっと、みんな、落ち着いて……」
三者三様に僕への感謝の気持ちを伝えようとするみんなに、僕はもうたじたじだ。
「ふむ、これが"モテモテ"というやつなのだな。初めて見た」
「おい、セシリア。俺らはこっちで、静かに飲もうや。実はスポンサーから良い地酒をもらっちまってよ」
「ほう、それは楽しみだ。付き合おう」
なんだかドタバタとしたお祝い会になってしまったけれど、悪くない気分の僕だった。
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